Horace Silver The art of small combo jazz playing, composing and arranging

p-6

 

Published by Hal Leonard

翻訳 横浜モダンジャズクラブ

 

6−4 作曲家と音楽出版

作曲の才能を持ち、多作の作曲家になりたいと望むなら自分の出版社を起ち上げることを考えるべきです。一流レコード会社はすべて、マイナーレコード会社のほとんどが自身の出版社をかかえていてあなたがレコード会社で録音するオリジナル作品を自社で売り出したいと考えるでしょう。これによりあなたは著作権料の半分を得て、出版社がもう半分を手にします。また、出版社がレコード会社ですから、彼等は法定著作権使用料レートも半額を支払えば良いということになります。さらに、レコード会社と出版の手はずを整えた曲を誰か他の者が録音する場合は、レコード会社とあなたとが著作権使用量を按分することになります。

もし自分が新参で名声の確立されていないアーティストであったら、自分の作品の内の何曲かは出版社と契約した方が良いかも知れません。どうかして入り口に立つのをあきらめてしまう人がいます。彼等に自分の作品の何曲かを与え、何曲かを自分の会社に残しておくことで話を進めることが出来るでしょう。人気が出てたくさんレコードが売れるようになると、あなたの作品すべてがあなたの会社を通じてライセンス契約されていることを強調できるようになります。

あなたのソングライターとしての出版、著作権料はセッションの無い期間を通してあなたを支える助けとなり、経済的に将来を確かなものにする助けにもなります。出版社の設立には資格を持った弁護士が力を貸してくれるでしょう。出版社を設立し、経営することはそれほどお金のかかることではありません。自宅あるいはマンションでやって行くことができます。作曲を自分の主な仕事にしようと考えているのであれば自分自身の出版社を始めることを強く勧めます。自分の会社にあった名前を選んで、それをあなたの弁護士に提出して会社を設立してもらって下さい。年が経ち振り返ったときには自分のしたことを喜ぶことが出来るようになるでしょう。自分の音楽を100パーセントコントロール出来ることになります。

 

7.事業編

 

7−1 事業としての音楽

 音楽事業について書かれた良い本がたくさんありますのでそれを入手して読んで下さい。仕事の処理方法、クラブのオーナー、コンサートのプロモーター、レコード会社、予約代理店、マネージャー、映画及びテレビの関係者等との契約の取り決め、自分の音楽に付随する権利、そしてその他仕事上の重要事項等々においていかに自分の権利を守るかということを学んで覚えてください。このような事柄を運任せにしたり、詳細を知らないためにだまされたりすることが無いように注意してください。すべての契約書は弁護士に提出する前にしっかり読んで、そのままサインするかどうか、変更する必要があればどう変更するかを決めておいて下さい。あなた、そしてあなたの音楽での人気が上向くようになると多分予約エージェントやマネージャーのサービスが必要になるでしょう。うまく仕事を処理するのを助けてくれるような誰か信頼できる人を探して下さい。音楽はビジネスです。最高のミュージシャンに、そして最高は無理としても良いビジネスマンを目指してください。

 

7−2 ジャズ業界で期待できる生活

人が真に幸せで平穏を感じるためには目的意識から達成感を得ることが必要です。人は生活のあらゆる面においてそうであるように、その仕事においても幸せであらねばなりません。幸福な生活の基準は金銭ではなくて、ときに才能を育成し活用することに繋がるその人の望みの成就です。お金のことをないがしろにするということではありません。家族と自分自身を支えて行くためにお金を稼ぐことは大切なことです。しかし、真に幸福な生活を送るためにあなたの主義、完全性、達成感、目的意識、目指すゴールはお金より優先されなければなりません。

ジャズは神と同様私にとって大変優しく寛大でした。それなしに済ませようとしたことは決してありませんでした。初期の時代の私の暮らしは今のそれと比べて幸福であるとは言えませんでしたが、神とジャズがいつも傍にありました。自分の好きな仕事をするのが幸せで、それをすることで満たされていました。長い目で見ればジャズで稼ぐお金も相当なものです。よりコマーシャルっぽい音楽は手っ取り早くより多く稼げますけれども一流ジャズミュージシャンを目指せばジャズを経済的に報いのあるものとすることが出来ます。

セッション、録音、作曲、編曲、テレビ、ラジオ、出版、そして教えることなどはすべて良い収入になります。いつでも必要とされる能力のあるジャズミュージシャンに成って下さい。先ずリードサイドメン、一流ソロプレーヤーを目指し、さらに成りたいと望めば一流の作曲家、アレンジャー、あるいはリーダーを目指して下さい。

音楽の世界で名を成したトップソロプレーヤー、作曲家、アレンジャーは望んでより多くの収入を手にすることが出来ました。バンドリーダーがサイドメンより収入が多いのは頷けます。長い期間を考えればジャズは経済的に報われるものですが、最初の数年は自分の愛する音楽のために犠牲を払わなければなりません。さあ、これでどのぐらいジャズを好きになれるでしょうか?

 

7−3 ミュージシャンの所得控除

ミュージシャンが申告できる所得控除があります。以下はその内の一部です。AFMのようなミュージシャンユニオンのメンバーであれば時たま新聞、インターナショナル・ミュージシャン誌が届くでしょう。毎年申告時期にはいつも申告できる控除のリストが掲載されます。ミュージシャンとして働いていて毎年IRSへ所得の申告をしなければならない人のために申告できる控除例です。

 

1.         楽器の修理代

2.         新規楽器の購入代

3.         音楽ピース、楽曲集、音楽学習書、五線紙、スコア用紙

4.         レコード、CD、カセットテープ類

5.         仕事で家を離れたときの食費、クリーニング代

6.         仕事で家を離れたときのホテルからのタクシーやバス運賃

7.         仕事で旅行中の自分が払う交通費

8.         仕事で旅行中の自分が払うホテル代

9.         自分が払うバンドのユニフォーム代

 

以上は仕事に関係するすべて正当な控除です。監査に備え領収書を保存するのを忘れないで下さい。仕事で家を離れている間は毎日すべての費用を記録しておくことです。

 

8.コーダ

 

8−1 新世代の一流ジャズミュージシャンへの願い

一流のジャズソロイストになるため、若いミュージシャンにとっての責任と献身には何があるだろうか?並みのミュージシャンでいることよりはより困難な道のりでありミュージシャン誰もが一流のジャズソロイストになれる資質があるということではないけれど、一流のジャズソロイストになった暁には本人とそのファンには言葉に尽くせない喜びがもたらされます。

アドリブをする曲のハーモニーを学ばないとなりませんし、アドリブの訓練を毎日しないとなりません。天性の才能を持っている人も居るでしょうしそうではない人も居るでしょうが、一流を追求する誰もが勉強と練習に膨大な時間を費やさなければなりません。ジャズの世界は、ジャズが存続しかつ未来に向かうために新しい一流ソロイストの出現を求めています。

将来に望みを持ち、天性の才能があると感じられるのであればその責務を果たすべきであり、多分自分自身を通して前進させられるであろうこの芸術を最上の高みへと押し上げるために自分を捧げるべきです。

過去から現在にわたる一流のジャズソロイストのことを勉強してください。それを成し遂げた結果、あなたが得るものはあなたの努力を補って余りあるものであり、ジャズとその最も重要な要素であるアドリブを活き活きとしたものにしてゆくための手段となります。あなたがこの偉大な芸術への責務を誠実に果たし献身するであろうことに神のご加護と救いがあらんことを。それを成し遂げる者とその社会に祝福と救いがあらんことを。

 

8−2 ジャズのためにどれだけ犠牲を払えますか?

 ジャズを演奏するために十分な犠牲を払うほどにジャズを愛していますか?愛する音楽を演奏する我々は、ある日そうならんことを祈りますが音楽に関わらないこともたくさん出てきます。というのも、愛する音楽を演奏する者は最高のミュージシャンたちと一緒に演奏する栄誉を得るために払うほかの犠牲と同じぐらいに金銭的なことも考えているからです。

 そういった犠牲を払えるほど十分にジャズを愛していますか?一流のジャズマスターは誰もが大きな犠牲を払っています。ジャズの歴史に名を残した彼等の貢献は我々の音楽の世界の記憶にいつまでもとどめられることでしょう。彼等の貢献無しに今日ある音楽は無かったでしょうし、今のジャズプレーヤーも今ある姿にはとどまらないでしょう。彼等が愛するジャズを演奏するために犠牲を払ったようにあなたも喜んで払えますか?彼らのように大胆な勇気があなたにありますか?一流のジャズミュージシャンになりたいと思いますか?勇気と冒険心を持つことと自由に演奏することとは両立しません。チャンスには飛びつかなければなりません。どんなガッツを持っていますか?本当にジャズを愛しているなら、必要なものはどんな犠牲でも喜んで払いなさい。ジャズの変革者の一人になることで一歩先んずること。その見返りはすぐに来るものではありませんが、我々みんなが愛好する音楽のために喜んでこれらの犠牲を払うのであればそれは必ずやってきます。その見返りは霊、精神、物質と三つの形で現れます。

 

9.ホレス・シルヴァ・クインテット参加ミュージシャン

 

  長年にわたるホレス・シルヴァ・クインテットに在籍し、ツアーに参加してくれた以下のプレーヤーたちに多いなる賞賛とお礼を申し上げます。このミュージシャンたちの多くが彼等自身の生得で真の一流ジャズアーティストになりました。

 

トランペット

テナーサックス

ベース

ドラムス

Randy Brecker

Bob Berg

Brian Bromberg

Roy Brooks

Cecil Bridgewater

Ralph Bowen

Stanley Clark

Carl Burnett

Donald Byrd

Michal Brecker

Todd Coolman

Billy Drummond

Art Farmer

Ronnie Bridgewater

James Genus

Billy Cobham

Tom Harrell

Junior Cook

Luther Hughes

Louis Hays

Carmell Jones

Joe Henderson

Dennis Irwin

Roger Humphries

Bryan Lynch

Clifford Jordan

Chip Jackson

Yuron Isriel

John McNeil

Bennie Maupin

Teddy Kotick

Alvin Queen

Blue Mitchell

Hank Mobley

Will Lee

Harold White

Michael Mossman

Ralph Moore

Bob Maize

 

Barry Ries

Larry Schneider

Mike Richmond

 

Woody Shaw

Tyrone Washington

Larry Ridley

 

Charles Tolivar

 

Teddy Smith

 

 

 

Gene Taylor

 

 

 

Doug Watkins

 

 

 

John B. Williams

 

 

本書巻末に7曲のコンボ向けアレンジ譜が掲載されていますが割愛させていただきます。

 

以上で本項は終了です。ご愛読ありがとうございました。

 

 

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