TOPへ/「ざ・しあたー」インデックスへ/進む
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 

「もっとよく、というあがきが、往々にしてすでによいことをだいなしにしてしまう」
 シェークスピア「リア王」
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

The Theater
 
In case of Europe
 
第2部第9幕「決戦」(前編)

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

USS、「アラバマ」

 パンテレリーア島北西、250マイル

1942年12月13日、1330
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 「船団の方は大丈夫?」

既に各所に軽い傷を負っている「アラバマ」のことはさておき船団の心配をするアスカ。

「まあ、燃料油を積みこんだヤツとか、弾薬を積みこんだヤツなんかは船団の中央に配置されていますから、なんとか。「オハイオ」は例外ですがね」

「例外にするにはあの船が飲み込んでいる油は貴重過ぎるわ」

「確かに」

「アラバマ」のブリッジ、そこに立つアスカは消耗しきっていた。

この危険海域に飛び込んでからブリッジから離れないのだから無理もない・・・のだが。

その美しさにはまったく影響していない。

いや、それどころか少しだけやつれた頬が陰を出し、同時に妖艶な雰囲気になっている。

「艦長、少しお休みになってください」

ブリッジの中には艦長休憩室という小部屋がある。

ただ横になるだけの部屋だ。

今まで女性ということもあって、そこを使ったことは無かったけど・・・、大抵の艦長が戦闘行動中自室へ戻らず艦長休憩室で寝起きする、というのは本当なんだな。

アスカはねむい目をこすりながら苦笑する。

まるで他人事のように考えている自分に気がついたから。

「艦長・・・」カヲルが聞いていないと判断したのか、もう一度続ける。

「わかったわ、ナンバーワン・・・少し休憩室で休ませてもらうわ」

「そうしてください」

「ただし、何か起こったらすぐに起こすこと。余計な気遣いをしたらあなたの首が飛ぶわよ?」

「肝に銘じます」

「よろしい・・・それと、休んでいる間は休憩室に入らないように。起こす時は艦内電話を使いなさい」

「アイ・サー」

「じゃ、お願いね」

アスカはそう言うとチャートテーブルの脇にあるドアを開けて中に入る。

それを確認したカヲルは艦内電話を取る。

「こちら副長だ・・・艦長が休まれる。あ、いや艦長室じゃなくてブリッジの休憩室だ。海兵を二人ばかり寄越してくれ」

5分ほどで彼らはやってきた。

戦闘配置中なので、ドレス・ユニフォームこそ着ていないが、M1ライフルを構えて艦長休憩室の前に立ちはだかる。

「わかっていると思うが、この先には誰も通さないように。たとえ私であったとしても、だ」

「アイ・サー」
 
 
 
 
 
 

鋼鉄よりも厚い壁に守られるアスカは、休憩室に入るとカーキ色の制服、その上着のボタンを外し、脱ぎかけるが。

「着たまま寝るか」

そう呟いてその格好のままベッドに転がる。

靴すら脱いでいない。

実際の話として、これはアスカが40時間ぶりにとる休息だった。
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

大日本帝国軍艦「敷島」

イタリア半島南部、タラント

1942年12月10日、1200
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「さて、戦争だ」

「敷島」級戦艦1番艦、ドイツ人の見方で言うところの「フリードリヒ・デア・グロッセ」級1番艦の防空指揮所に佇むシンジ。

これから彼と「敷島」は戦場に向かうのだ。

既に、全乗員に作戦目的は伝えられている。

ちなみに着任して日が浅いにもかかわらず、彼は乗員に人気があった。

士官らしからぬ気さくな人柄と戦場での勇猛さ。

佐官級の士官としては1.2を争うほどの実戦経験と武功。

そして兵からの受けが良い理由は他にもある。

彼は着任日に訓辞を行ない、日本海軍全体に横行している私的制裁   気合を入れる、と称して行うものも含めて   を一切禁じた。

彼には「敷島」を日本に回航するという大きな任務がある。

そして、ただ回航するだけではない。

地中海で戦闘も行なわなければならない。

本来就役したての艦船を即実戦に投入することはまずない。

あるていどの訓練期間がなければフネは有機体として機能しないからだ。

だからこそ時間がないのだ、とシンジは語った。

訓練に次ぐ訓練を重ねて全乗員の練度を高めなければならない。

それこそ出来る訓練はブローム・ウント・フォスの秘密ドックにいたころから行なっていた。

進水と同時に就役してからはありとあらゆる訓練をおこなった。

主砲の射撃訓練も時間を惜しみつつ撃ちまくった。

ただし、防空訓練だけは高角砲弾の補給にアテがないので慎重にならざるをえなかったが。

そうでもしなければこれほどの短期間に戦闘行動が可能になるはずがない。

そして、兵達は古兵(たちの悪い古兵)による私的制裁にまったく意義を見出せなかったから、新艦長の方針を歓迎した。

それにもう一つ。

なによりシンジは”運が良い”。

英仏海峡で敵に向けて最初の砲門を開いてから、これまでまともな損害を受けたことは1度もない。

これぐらい良い条件が揃えば多少若くても   多少どころではないのだが   兵達は艦長についてくる。

ただ、シンジは慢心を戒めるためにさきほど訓示を行なった。

今回の作戦は今までのようにはいかない、と。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「艦長、「ローマ」が出航します」

見張り員が告げる。

見れば黒煙をたなびかせて「ローマ」が舫を解いている。

改「リットリオ」級とでも言うべきその戦艦は「敷島」とともに戦場に向かうのだ。

この2隻で臨時の、しかも多国籍の戦隊を組んで輸送船団とその護衛部隊に殴りこむのだ。

旗艦は「敷島」。

シンジは「ローマ」に、ひいてはマランツァーノに指揮してもらおうと思っていたが、

「イタリア海軍は大型艦艇の運用について慣れているとはお世辞にも言い難い。ここは君に譲ってトーゴーの直弟子の戦い振りを見せてもらうよ」

と言ってシンジが指揮を取るように薦めた。

何度か断ったのだが   年齢から見ても、先任順からみてもマランツァーノの方が同階級とは言え上になる   是非にと頼まれてしまった。

もちろん、シンジに戦隊運用についての不安があったわけではない。

正式な戦隊司令官に補されたことはない   それは将官の仕事だ!   が、臨時なら駆逐隊を指揮したことはいくらでもある。
 
 
 
 
 

「よし、じゃあ僕らも行こうか・・・・1番から4番まで、舫離せ」

「1番から4番まで、舫離せ!」

シンジの命令は復唱され、幾層か下にある航海艦橋に伝えられ、拡声器が同じ命令をがなりたてる。

《1番から4番までの舫離せ!》

岸壁にいる人間がそれぞれの舫をビットから離す。

人間の手によってそれが徐々に艦の方へ取り込まれていく。

2〜3分ののち。

「1番から4番までの舫、収容しました!」

と、報告があがる。

「了解・・・右前進微速、左後進微速」

今、艦は左舷を岸壁につけている。

艦尾を開いて後進で離れるつもりらしい。

「敷島」は少しぐずったが、やがてゆっくりと艦尾を振り始める。

それのせいで艦首は岸壁と接触せんばかりまで近づいているが・・・むろんのこと、シンジの操艦は適切で、ぎりぎりのところで岸壁をかわす。

「後方の安全は?」

「確認しました!後方に障害物はありません!」

打てば返るような返答。

訓練が行き届いていないとこうはいかない。

「よし、両舷後進半速」

機関室に伝えられたその命令は、逆方向に回っているスクリューの回転数を段階的に上げることで答えられた。

シンジは安全な距離まで離れたことを確認する。

「航海、操艦任す。外海に出るまでは気を抜かないように」

フネを動かすのを航海長にまかせ、自分は昼戦艦橋に降りる。

彼には「敷島」の運行の他に、迎撃作戦の立案という大仕事があるからだった。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 



 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

第100爆撃航空団、第3飛行隊
 
コミソ、シシリー島

1942年12月12日、2100
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「ったく・・・なんで俺達がこんなトコまでこなきゃならんのだ?」

シシリー島南部の町、コミソ。

そこにある航空基地には、ケッセルリンク大将のごり押しで迎撃作戦への参加が決まった部隊が配されていた。

第100爆撃航空団。

とはいっても、基地の規模が小さすぎ、しかもそこへイタリア空軍の機体も混じっているから航空団全力が展開するのは不可能だった。

そこで第100爆撃航空団のなかでも精鋭ぞろいの第3飛行隊が送りこまれた。

数は9機。
              ルフト・フロッテ
「仕方ありませんよ。第5航空艦隊司令部のたっての希望らしいですからね」

「ま、アレもそろそろ実戦で試してみても良い頃だからな、いい機会ともいえるな」

隊長のベルンハルト少佐が不敵に呟く。

「技術者も連れてきてますからね。不具合が出てもそれなりに修正は可能だと思います」

「ま、いいさ・・・行って帰って来るだけだ・・・問題は戦闘機の援護だが・・・」

「それは司令部が確約してくれましたよ」

「なんて言ってた?」

「”少なくとも3倍の戦闘機は飛ばす”と」

「3倍?・・・なんの3倍だよ?」

「ウチの保有機数の、ですよ」

「9×3=・・・27機もだすつもりかよ、オイ!?」

「完璧に護衛してみせると豪語してましたよ」

「まあ・・・ホントにそれだけ来てくれりゃあ安心だがなぁ」

「上もウチの戦果の具合を推し量ってるところがありますね」

「派手にやってやるさ」

「了解」

「あ、それと」

「は?」

「俺達の攻撃前に、なんとかイタ公に攻撃させるよう要請してみてくれ」

「露払いですか?」

「人聞きが悪いな・・・獲物を譲ってると言ってくれ」

そう言いながらも少佐はニヤニヤ笑っている。

「わかりました・・・・戦史に刻まれる戦いかもしれませんからね。努力します」

「頼む」
 
 
 
 
 
 

彼らはたった9機の爆撃隊だが、数字以上の力を秘めていることを知る人間はまだ少なかった。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

HMS、「ライオン」
 
パンテレリーア島の北西、200マイル

1942年12月13日、1900

 
 
 
 
 
 
 
 
 

「その後情報は?」

司令部艦橋の椅子に座り、イライラしながらロンドンからの電報を待つシーフリット中将。

彼はボン岬から東へ   正確に言えば現時点で既に境界を踏み越えている   進ませる為に意見具申を行なっていた。

前回の”ハープーン”船団に見るように、イタリア海軍はこの海域に戦艦を繰り出している可能性が高い。

その場合、防空巡や駆逐艦では太刀打ちできない   まあ、イタリア海軍なら大丈夫だという声もあるが。

だからこそ、船団には戦艦が3隻もついている。

しかし、ロンドンでは戦艦を洋上防空砲台としか考えていないようだ。

たしかに、価値が急速に下落しつつある戦艦の使い道の一つではある。

ハリネズミのように備えられた高射火器で船団を守る。

シーフリット中将もその点に疑問はない。

問題はその先である。

もし、予測通りイタリア人が戦艦を出してきていたら船団はひどいことになる。

「ライオン」以下3隻の戦艦を航空攻撃で傷つけることになっても、このまま船団に追従すべきだと考えていた。

この場合、船団が運んでいる積荷は戦艦3隻よりもはるかに価値が高い。

最悪の場合、戦艦を囮にしてでも船団を守ると考えていた。
 
 
 

だが、それに必要な許可がいつまでたっても下りない。
 
 
 

命令に従い既に空母「ヴィクトリアス」は後方への避退をはじめている。

「ヴィクトリアス」が抜ける分の防空カヴァーはマルタの空軍が引き受けることになっているが・・・

果たして補給が途絶えている空軍機にどれほどのことが出来るか、あまりシーフリット自身は過剰な期待は寄せていなかった。

そして本来ならば戦艦も下がらなければならないのだが・・・・

「ロンドンからは何も・・・・地中海艦隊司令部も我々の意見具申に賛成しているのですが・・・」

「・・・・いっそのこと、敵戦艦が出てきてくれれば話は早いんだが」

「司令、敵のイニシアティブを期待して戦闘を行なうのは無茶ですよ」

「わかっている、わかっているんだが・・・私には他にどうしようもない」

「・・・・・・・」

シーフリット中将はそこまで言うと椅子から立ちあがり隊内電話(TBS)に近づく。

電話員から受話器を受け取る。

「・・・「アラバマ」に繋いでくれ」

「アイ・サー」

電話員が操作すると、雑音の嵐が止んでクリアになる。

「こちら護衛部隊司令だ・・・「アラバマ」か?」

《はい、こちら「アラバマ」です》

向こうも電話員なのだろう、若そうな声が聞こえる。

「艦長を頼む」

《お待ちください》

いくばくかの沈黙の後。

《もしもし》

眠そうな声。

おそらく夢も見ずに眠りこけていたところを叩き起こされたのだろう。

「ラングレー大佐か?」

シーフリット中将は

ああ・・・艦長休憩室で休んでいたのだな、と的確な推測を立てた。

艦長室で休息していたのであれば、こんなに早く電話には出られない。

《はい、そうです》

「休息中のところすまない・・・君に相談したいことがあったのでね」

《なんでしょう?》

「我々は戦艦の危険海域突入についてアレクサンドリア(地中海艦隊)を通じて何度も要請してきた」

《はい》

アスカも、彼がこの船団に賭ける並々ならぬ意気込みを感じていた。

「だがロンドンはここに至っても電文の一つすらよこす気配はない・・・つまりは認めないということだな」

《また船団を見殺しにするつもりですか・・・・》

”ハープーン”船団の崩壊過程を見ているアスカはどうしてもキツイ言い方になってしまう。

だが、返ってきたシーフリットの言葉は意外なものだった。

「私はこれ以上手をこまねいているつもりはない・・・軍規違反は承知の上で、「ライオン」と「テレメーア」をこのまま船団につける」

《さすがです》

素直に敬意を表すアスカ。

「そこで問題になるのが君の「アラバマ」だ」

《は?》

「我が戦隊に関しては私がすべての責任を負う。部下に害を及ぼすことはないと思うのだが・・・・合衆国海軍所属の「アラバマ」まで命令違反に付き合えとはいえん」

《・・・・・》

「護衛部隊司令として命令する。反転し、ジブラルタルへ帰投せよ」

《・・・・お断りいたします》

なかば予想通りとも言えるその言葉。

「そういうだろうと思っていたが・・・・私は君と君の部下にまで責任を負うことは出来ない。反転してくれ」

《・・・・では、「アラバマ」はたった今から貴官の指揮から離れます・・・・よろしいですか?》

「貴官の今までの助力に感謝する」

《早とちりしていただいては困ります》

「?」

《本艦は独行艦です。上をたどれば海軍作戦部長に行きつきます・・・・そして本土を離れる際に受け取った命令は『地中海の英海軍と協力し制海権を奪取すること』です》

「・・・・なにも望んで地獄へ飛びこむことはあるまいに」

《それが性分なので》

「ふむ、この船団を送り終えたらジブラルタルで1杯奢らせてくれ」

《楽しみにしておきます》

「それでは話を戻すが・・・・敵の戦力についてだ」

《はい》

「貴官からの報告書、ジブラルタルを発つ前に読ませてもらった・・・・その中に記載してあったことなんだが」

《「ビスマルク」クラス、ですか?》

「その通りだ。我が軍令部は存在そのものさえ認めようとはしておらんがね・・・・だが実際の話として、それがいるといないとではまったく違ってくる」

《当然ですね》

「軍令部としては重巡洋艦、もしくは装甲艦ならばいてもおかしくはないといっているらしいが・・・・私はそれでも背筋が震えるがね!」

《大西洋、バルト海、彼らは隻数こそ少ないですが武功に不足はないようですからね》

「まったくだよ」

《ですが・・・・》

「わかっている。貴官はあの電文を重要視しているのだろう?」

《はい・・・イタズラで済ませるには不気味過ぎます》

アスカはあの電文を思い返す度に頭に血が上る。

「なんという名前だったか・・・」

《「シキシマ」》

「そう、そいつだ・・・IJNに同名のフネはいないのか?」

《私も気になったので上層部に問い合わせました》

「結果は?」

《”現在は”「シキシマ」なる艦名は見当たらない、ということです》

「”現在は”?」

《ツシマの海戦・・・・アドミラル・トーゴーの指揮下に「シキシマ」という艦名があります。あの「ミカサ」も「シキシマ」クラスの4番艦だそうです》

受話器を握ったまま考え込むシーフリット。

「ドイツ人、もしくはイタリア人の欺瞞にしては手が込みすぎている、か・・・」

《はい、その通りです》

「何か他に根拠は?」

《問題の戦艦を目撃した商船乗組員に事情聴取を行ないました》

「ふむ」

《その乗組員は戦前にドイツへ旅行したことがあり、「ビスマルク」を間近に見たことがあるそうです》

「で?」

《細かいところまで覚えているわけではないが、「ビスマルク」にうりふたつだそうです》

「・・・・・・」

《司令、我々は虎口に飛びこもうとしているのかもしれません》

「・・・・確かにその通りだな。だが、私には前に進むことしか考えられないが」

《私も同じです》

「・・・なんだな、お互い厄介事を望んで招き寄せているのかもしれないな」

《それが私達の仕事ですから》

「違いない!・・・・では、ラングレー大佐、貴官の武運を祈る」

《中将も》

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

大日本帝国軍艦「敷島」

パンテレリーア島至近海域

1942年12月13日、1900
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「艦長、ドイツ空軍からの敵状報告でっせ」

トウジが電文を持って艦橋に上がってきた。

「副長、読んでくれる?」

「はいな・・・・えーと”敵艦隊ニ関スル情報次ノ通リ。高速型輸送船○○隻、駆逐艦12、巡洋艦7、戦艦3。空母ハ見当タラズ。コノウチ巡洋艦、駆逐艦数隻ヲ撃破、護衛カラ脱落セシメル。貴艦ノ勇戦ヲ期待スル・・・・ホンマにこんな戦果あげたんでっかいな??」

「どうかな・・・まあ2〜3隻は潰してくれたんじゃないかな?」

「それにしてもエライ数でんな」

「駆逐艦や巡洋艦はパンテレリーアからの魚雷艇に任せる。なんせ向こうには戦艦が3隻いるんだからね」

「ま、こっちも今回は2隻でっからええ勝負になるでしょうな」

「と思うよ・・・・さて、日没と同時に行動開始。「ローマ」にも伝えておいて」

「宜候」

そう命令するとシンジは海図台に潜り込み、これからの作戦計画が書きこまれている海図を眺める。
 
 
 
 

 
 
 

うまくいけば、魚雷艇隊が敵船団に突っ込んで混乱させた後にシンジ達が殴りこむことになる。
 

・・・まあ、すべてが上手くいけば苦労しないんだけど。
 

シンジは上手く行かなかった場合のことも作戦計画に盛り込んである。

立案した作戦がすべてうまくいくのは演習の場合だけ。

実戦になればうまくいかないことのほうが多い。

そして、意外なようだがそのことを知る士官は少ない。

彼らは何が何でも当初の計画通りにことを進めようとする。

そして、すべてを崩壊させる。


そんなこともあり、シンジは自分達   日伊合同戦隊の行動予定については書き込んでいない。

そんなことを考えていたシンジの耳に艦内放送が聞こえてくる。
フタヒトマルマル
《2100より作戦を発動する!各自任務に精励せよ!・・・繰り返す!・・・》
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

シンジと「敷島」にとって地中海での最後の戦いが始まった。
 
 
 
 










 
 
 
 

 



あ・と・が・き

みなさんこんにちは。

P−31です。

第8幕をお届けします。

さて・・・しばらく更新できませんでしたが・・・・再開です。

が、最終回のハズがなぜか前後編に分かれてしまいました(笑)


へたすりゃ前中後編になるかも(笑)

次回、「The Theater」

 

「決戦」(後編)

 

お楽しみに。

 

 

TOPへ/「ざ・しあたー」インデックスへ/戻る