Fuji Rock Festival '99

GIG REPORT

yas-bさんの想い出フジロック


やすべえさんではなく、本来ならやすばあさん、と読むべきだろう広島yas-bさんのフジロックレポート!


転がらない石になる 奥田民生&フィッシュ


友人が、「何目当てで苗場まで来た?」 う〜ん難しい質問である。「シャムシェイドの中で誰が好き?」くらい返答に困った。いやはや、誰が一番見たいんだ??ボア?いや日本人だからいつかは見れそうだし。ブラー?いやそんなに聴いたことないし。電撃?まあある意味そうかもしれないけど。あえて言うなら奥田の民っちゃんなのである。そうなのである。日本人ド真ん中である。しかも何度も見ている。今年のライブも行っている。しかし見たい。何が見たいって、「やる気」の民っちゃんを。そのために15時間かけて広島からわざわざやって来たと言っても過言ではなかった。いやそれはちょっと過言だよ、あんた。

近年の彼のライブは「タミオ」らしくなりすぎていた。ダラダラが彼の形容詞となっているが、ライブはその典型である。なんだ、全力でやるのが恥ずかしいのか?照れか??いやしかし、今回はフジロックである。その溢れんばかりの、溢れそうで溢れないセンスを爆発させるしかないでしょう。そういう意味で、民っちゃんにとってもファンにとっても、これはかなりの正念場なのであることは間違いなかった。

午前11時前会場入り。ロケクリを見ようとする友人を、ケンジハガばりの誠意を見せた説得でWステージ電撃へと強引に誘う。相変わらずのネタばかりだった気がしたが、生の迫力も手伝って、いきなりテンションを最高潮まで持っていかれる。しかし彼ら、こんな大舞台にもかかわらず、キャリアが相当長いにもかかわらず、ホントにこれしか芸がないにもかかわらず、花火不発だったり、客のテンションがどんどん下がっていくのが痛いくらいわかるほど導火線がしぶとかったり、野外なのに点火するのが風にめっぽう弱い100円ライターだったり、狙いだかどうだかよくわからん細かいボケまで見せてくれた。しかし終演後には友人とがっちり握手。アンナパパありがとう。これでもう満足。早くも苗場来て良かったぁ〜になってしまう。

そして早速3日間のクライマックスがやってきた。Gステージに戻り、身軽になってからステージ前に陣取る。民っちゃん登場。何日も前から1人で予想をたてていた期待の1曲目は「人間2」。予想ハズレ。「こりゃあ狙ってますねぇ〜」の選曲である。初っ端からこのグルーヴ、これなんですね、これなんですよ。もうファンとしてはこの重ったいグルーヴを外国産に聴かしてやりたくてやりたくて。闇カルテ。もうオールおっけぇいな出だしなのである。そんでもって最後の「悩んで学んで」まで、明らかに外国産を意識したセットだったが、小1時間、完全にタミオワールド全開だった。音楽性よりもキャラを愛するヘタレファンだけしか満足しないようなこれまでのステージとは気合いに入れ方が全然違っていた。今までの金返せよって感じである。とにもかくにも大満足。というか一抹の不安が吹っ飛んで、もう僕のフジロックは8割方終わっていた気がしていた。

真っ黒な鼻くそをコロコロ丸めながら寝っ転がっていると、ハイスタ登場。全く興味がなかったが、気がつけば釘付けになっている。感動する。虹の下で輪になってモッシュ。ただ傍観しただけであったが3日間のベストパフォーマンス。なんせ感動しましたからね。こういう機会でないと拝見しないであろうアーティストが見れるというのもフェスの良いところで、自分の嫌いな音楽好きな音楽もハッキリしてくる。いやいや親戚の子供をポケモンの映画に連れていって、「あ、ドードリオってかわいいんだな」と気づくのと似ている。病院の待ち時間に、置いてあった週刊誌で、昔ちょっと好きだったりした大西”スケ番長女”ゆかが難しく色っぽくなったりしたのを見つけるのと同じである。いやそれは違う。ともかく、そういう意味でのこの3日間での大収穫は電撃である。(全然大した収穫じゃないじゃない。)

あ、ひとつ言いたいことが。テントサイト。おかしいでしょ?あの場所とあの斜面。天国から歩いて帰ったら1時間以上かかるんですよ。しかも山の上。ガンダーラですよ。遠すぎ。それとあの斜面。シュラフに入ったら、足踏ん張ってないとずるずる落ちて行くんですよ。ヘタしたらテントの外出てホテルのプールまで転がり落ちていきそうなくらい。また友人とその「転がりボケ合戦」が始まって寝れない寝れない。押してもさわってもないのに「アブね!押すなよ!」とか言いながら自分でテントの外まで転がっていったり。あれだけは来年改善しましょう。あれではみんなキャンプに泊まらず車で寝てしまいます。キャンプの方が楽しいし、フェス!って感じですからね。

話を戻して、フジロック99での最大の収穫はなんと言ってもPHISH。3日間出ているので、一応少しは見ておこうかなと思っていた程度の期待だったが、これが凄すぎ。まさか自分の音楽観を変えられるようなことになるとは。・・・最終日に、暇そうで暇そうじゃないsuzuki君を「最後はPHISHでしょう」と誘ってみる。まさに、近所の夏祭りに姉の子供を連れて行く若すぎるやさしいおじさんのような感じ(内心迷惑なのか?)で快諾してくれた。まずWステージで、リィペリィとかいう存在自体がファンキーすぎるわけのわからんおっちゃんを見て、怪しい雲行きの下まったりと天国へ向かう。人が少なく踊りやすそうで、暑くも寒くもなくて、ステージも間近という理想の環境。場所取りとかそういうのを全然気にしなくていいのは楽チンこの上なかった。雨が降らないのだけを祈って、のんびりと登場を待つ。少ない声援が聞こえてくると、あまりにも普通のおっさんがぞろぞろと登場。大丈夫かよ、と不安になったが、1曲目でやられてしまう。4人なのにこの音の分厚さ、見たことも聴いたこともない演奏力、変幻自在のリズム。あまりの圧倒的なグルーヴに「ローゼスが絶好調のまま3枚目のアルバム出したらこんなのかな」とか思いつつ、広ーいスペースでありったけ踊る。suzuki君と何度も「すげぇ〜」と声を合わせながら踊り尽くすこと一瞬の4時間。なんと言っていいかよくわからないが、天国。そうとしか伝えようがなかった。友人にもどうだったかと聞かれたが、「奇跡」とだけ答えた。なんか伝えようとすればするほど伝わらない気がした。ただひとつ、「これを見てない人たちはちょっと損したかもよ」ということは言えた。屋内でやるようなバンドじゃないらしいし、日本で単独野外が可能とも思えないし。日本のこの恵まれすぎた環境で、彼らを体験できたということは、とても貴重であったことは間違いない。ただ、その後音楽の聴き方がおかしくなったという弊害がついてきたが。

帰り道も15時間。遠い。まじでガンダーラ。よく来たなと改めて思う。

芝生に寝っ転がって人差し指を伸ばすとトンボがとまる。BGMは生UA。鼻くそは真っ黒。大西ゆか。こりゃ行った奴しかわからんね。


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Last updated: 9/ 2/ 99