3.メンバーへの関わり方と役割は

 

 つぎはですね。アドバイザーのメンバーへの関わり方と役割。これはですね「新グループワーク・トレーニング」の186ページに書きました。先ず、何でアドバイザーというかという説明から書きました。GWTでは、かつてはGWTを指導する人をトレーナーと呼んでいたんです。エンカウンター・グループではファシリテーター(促進者)という呼び方をしていました。ファシリテーターという言い方に変えたのは、指導者という地位による権威(あの人は偉い先生だという権威)から、介入が非常に操作的・指示的になることを恐れて、名前を変えると、役割も当然変わってくるわけですから、そう変えたといういきさつがあります。つまり、メンバーの自主性を重んじ、メンバーと共にいて、昨日から問題になっているWith−nessですね。岡崎さんが作ってくれたプリントの中に「With−ness(援助スキル)」と書いてあります。非常に良い言い方だと思いますが、メンバーと共にいて意図的に関わるという意図を明確にしようということで、ファシリテーターということに変えたんですね。

 で、なぜGWTではファシリテーターとはいわないのか。ひとつはですね、確かにトレーナーといういいかたは上から教えてやるという感じがしますから、指示的な感じがしますから、これはちょっとよくない、援助者でいたい。しかし、GWTのプログラムは指導者・アドバイザーの考えできちんと構造化されていて、メンバーからのニーズに応じてその場で変えますというのはまずない。主催者と指導者の意図・ねらいで決ってくる。この中で企業で研修をやってらっしゃる方は何人もいらっしゃるとおもいますが、ねらいを提示してですね、「お、そういうねらいの研修なら、課長ぜひ私をやってくださいよ」というのはまずいないですね。ほとんど上から業務命令で「おまえ行ってこい」といわれてきてすわっているわけです。ニーズを聞いたら、「さっさと帰してくれ」というに決っている。そういう人達にGWTをやる時一番大事なことは、「あ、これは自分の問題なんだな」ということに気づいてもらって、姿勢を変えてもらう、そのプロセスがいるんです。いやいやきているのが、2泊3日ずっと続いては困るんです。できるだけ、早い機会に「そうか、これは会社のために研修に出ているんではないんだ。私の人生にとってやっぱり重要な問題なんだ」というふうに気づいてもらって、「じゃ、多少まじめにやってみるか」となってもらわなければ困るわけです。いやいや来ている人が圧倒的に多い集団の中で、GWTをやる、そうすると、どうしても構造的になって、ある面で、操作的・指示的にならざるを得ない。で、実習そのものとか、それから、ふりかえりも、だいたいその指導者のペースで進められて行くわけです。その意味では、少なくとも、With−nessではない。それであそこに(図1)書いてあるのです。同じボードに乗っていない絵が書いてあるんですが、外から色々介入をするわけです。じゃなぜWith−nessが問題になるかというと、With−nessというその発想を捨ててしまうと、どうしても権威的あるいは指示的になってしまうから、自分の倫理規定としてWith−nessを持っているというふうに私は思っています。自分自身にブレーキをかける意味で、操作的になりすぎないように、権威的になりすぎないように、できるだけ共にいよう、そのことが大事なんだというふうに、自分の中で自分にブレーキをかけている、倫理規定です、罰則はありません。そういう意味で「アドバイザー」という名前をつけました。そのへんがメンバーと関わる、関わり方ですね。インストラクターというと、いかにも技術・技能を教える、指導するみたいですから、インストラクターとはいわないということで、アドバイザーという言葉を選びました。その辺に、アドバイザーのメンバーへの関わり方が、表されていると私はおもっています。

 で、「アドバイザーの役割」は何かというと、構造化しているわけですから、研修全体、それと個々のGWT財ひとつひとつのねらいを明確にする。今日の三信先生のGWTを見ていて僕はそういっちゃ悪いけども、企業でのGWTと生涯学習とか社会教育の領域でのGWTの、きめの細かさの違いを感じました。社会教育は甘い、たとえば、三信さんのいったように、一番最後にきちんと横にならんでおじぎをするところまでがGWTの中に入っている。ところがそこが甘くなっているね、生涯学習の領域でGWTをやると。ところが企業でのGWTでは「ま、いいか」にならない、それをきちんとすることが大事なことで、しかもチームリーダーの役割が徹底されていかなければならないんだという、そのきめの細かさみたいなものでね、ねらいを細かく、きちんとねらいを定めて、そこに焦点を合わせていくという、そのために、かえって迷うような落し穴をつくっていく、構造化をして、そのひとつひとつがふりかえりの対象にきちんとなっている。そういうデザイン、それが大事なんですね。ねらいを明確にして、デザインをして、進行管理をする。それから、研修全体の雰囲気を作る、あるいは整備を行なう。あとは、メンバーとグループの観察をおこなうことと、必要に応じて介入をすること。そしてふりかえりをしたり、小講義を行なうこと。それがアドバイザーの役割です。

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