シリコンバレーを住む:晶子・エング・中村

1


 Akiko Ng Nakamuraさんから早速メールが届いた。あきこさんは日本でコンピューター関係のアメリカの会社に勤務していたのだが、カリフォルニアの本社に移った。転勤ではなく、アメリカの会社に改めて採用されたのだ。夫君のデニスは中国系ニュージーランド人の写真家。もちろん一緒にアメリカに行った。そこで、アメリカでの住宅のあり方についてレポートを依頼したら、すぐに送ってくれた。
At 02:20 午後 00/08/26

みたみた。まだ全部じゃないけど。今家からアクセスしているので、レスポンスタイムが遅くてなかなか会社にいるときのようにPCを操作できないの。

 とても素敵なホーム頁だね。何か色んなことを考えたり、表現したりしたくなるね。アメリカへ来て1年、色々なものを見るにつけ、感想と言ってしまうには少しばかりもったいない感情をそれこそ毎日持ちながら、それら一つ一つについてじっくり考えるような贅沢な時間を持てずにいました。

 私が住んでいるサニーベールは、サンフランシスコから車で50分、サンノゼからは車で15分の典型的なアメリカの郊外です。ここが本当に世界のハイテク産業を動かす要なのだろうか、と信じられないほど静かな街なのですが、正直言って、アメリカで暮らすということは、思っていたほど簡単なことではありませんでした。

 ここへ来て最初の40日間は会社が借りてくれたアパートに入っていました。1ベッドルームだったけど、日本に比べたら、間取りもゆったりしていて、プールもついていて、とても贅沢な空間でした。
でも、私はこのアパートが大嫌いだった。短期滞在者用のアパートだから、人の愛情を全く受けていないのです。家に帰ると具合が悪くなるくらい、違和感のある場所でした。この頃は、日本に残してきた「私とデニスの家」(玉井さん作)が恋しくて、私は良く泣いてばかりいました。

 アパート探しは着いたその翌日から始めた。このあたりでは、常に98%のリース率なので、適当な価格でしかも気に入ったアパート見つけるのは、とても困難なことだと聞いていたからです。こちらでは、日本のような個人の家主というのは殆ど見ることがなく、(サンフランシスコは別)大手のDevelopperが経営するApartmentComplexが主流です。大体一つのComplexに100ユニットくらい入っているかなぁ。もちろん共同のエリアには、緑とプールがつきものです。
 まず最初の壁は、Credit History*でした。外国人である私たちは、この国でのCreditHistory、つまりローンの返済記録がありません。そのために、月々の家賃を定期的に支払っていくだけの安定した生活を営んでいるかどうかを証明する手段がなく、ことごとく断られるはめになったのです。ローンの記録というのは、車の購入でも、ボートの購入でも(笑いごとじゃない。こちらの人は、workingclassでもボートをもっています)、学費の返済でも、過去の家賃の支払でもいいのです。
クレジットカードの支払も分割払いをしている場合だけ、Credit Historyになるそうです。日本で言うリボルビング払いですね。毎月の支払を一括にしていたら、記録には残らないんですよ。
 でもそんなのってありぃ?より多くの借金を抱えている人の方が、借金ゼロの人より信頼されるっていう理屈ですよね。とても腹が立ちました。病んでるなぁと思った。

 私の会社のオフィスから道を隔ててすぐのところに、5つのApartment complexがあり、この辺りの会社は社員の過半数が外国人だという事実が幸いし、Credit historyについては、no history is better than bad historyだと言うことで、受け入れてくれるところがありました。
 そりゃそうですよね。シリコンバレーの企業は外国人労働者に頼って成り立ってるんだから、どこかで私たちを受け入れてくれるところがなくては、路頭に迷ってしまいます。ところが、どのアパートも空室はなく、キャンセル待ち。それにもう一つの問題は、ビジターの宿泊は2週間まで、しかも1泊につき70ドルを支払うことって、なんだか家賃払った上に、ホテル代も払わされるんです。私たちは、少なくともデニスのお母さんが3ヶ月は滞在する予定だったので、そんな条件じゃとても契約はできませんでした。どうしてこんな条件があるかと言うと、外国人の居住率が多いために、中には母国からぞろぞろと家族を連れて来て、そのまま不法滞在するケースもあるようなのです。アメリカのビザの発給は、今とても厳しいですからね。アメリカ人と結婚した友達でさえ、3年間もグリーンカードがとれずにいます。
 最終的には、周りのアパートよりも100ドル家賃が高かったけど、ビジターの滞在にも制限がなく、宿泊代もマネージャーの裁量で、見逃してもらえるというアパートに決めました。たまたまリーシングオフィスを訪ねた日に、来月引き払うと申し出たテナントがいたので、その場で契約しました。
「もっと色々と見て。。。」なんて余裕、ゼロでした。

出だしから、こんな訳で家にまつわる苦労は絶えませんでした。まだまだ続いています。
続きはまた次回。

*このCredit historyは車を購入するときのローンの利子にも大きく影響して、12.5%の利子をふっかけられました。馬鹿らしいのでキャッシュで買ったけど、そのお陰でまたCredit historyが持てなくなるというアキレスと亀の追いかけっこのようになっています。

こんなレポートで、いいのぉ?

シリコンバレーを住む2へ

PlaceRunner目次にもどる