シリコンバレーを住む2:晶子・エング・中村


晶子・デニス夫妻から、しばらくメールが来ないので、ちょっと催促するようにメールを送ったら、すぐ翌日にメールが届いた。


玉井さん&たかちゃん、

メールありがとう。元気ですか?デニスは超元気です。私は、少し疲れ気味です。(仕事が忙しいのと、体調が悪い。悪性の風邪。)話す人みんなが東京の暑さに言及するので、いかに暑いかが伝わってきます。とろこが、人間の五感なんて、過去の状況にそれほど忠実なものではなく、カリフォルニアで、毎日これでもかというほど、爽やかなまさにコカコーラの宣伝そのもののような気候の中にいると、「暑さ」というものがどんなものだったかすっかり忘れてしまうのです。36度だの、37度だのと聞いて、「ひぇー。」だの「あついねー!」だのって相づちは打つのだけど、身体はその暑さを全く覚えていない。
気持ちというか、脳の一部が、「暑い=不愉快」という反応を示すだけなのです。これは冬の寒さも同じで、私たちは完全にカリフォルニアにスポイルされています。(アラスカにでも行って修行が必要。特にデニスは。)

前置きが長くなりました。

日本の建物は醜いと、思いますよね。私もデニスも力強く同意します。でも、アメリカの建物、特に最近のものは、もっと戴けないですよ。私は西海岸の、しかもサンフランシスコ/ロス近辺の住宅事情しかわかりませんが、「愛せる家」は未だにみつかりません。(以前に話したと思うけど、Eichler Homesが唯一の例外。今度Web site送ります。)でもこれは、玉井さんのメールにあったような、短い視野でしか物事の価値を計れない日本の住宅/土地開発(開発するような土地はもう残ってないか)問題とは違い、純粋にセンスの問題です。つまり早い話が、アメリカ人はセンスが悪すぎる。ファッションにしても、アートにしても、アーキテクチュアにしても、車にしても、何もかも"yak!"です。(これはアメリカ贔屓の人には反発買うだろうなぁ。)

但し、街としての体裁というか、統一性は保たれているのが、アメリカのよいところで、個々のUglyな建物も、並んで建っていれば、全体としてはなんとなく絵になったりするのが不思議です。サンフランシスコの家並みはまさにその典型的な例ですよね。一件一件はどうにもならないくらいセンスがありませんが。土地があるからですよね。「お揃い」が可能なのは。

妹さん夫婦はいつ頃西海岸へ来る予定ですか?会いたいです。こちらで就業とのことですが、どこへ行ってもPoliticsはつきまといますよ。レベルの高低こそあれ。私の周りにもあります。私もそのど真ん中にいて、トランプのカードのように使われています。

このメール、一度クラッシュしたので、続けるのは辞めます。また続きは新しいメールで送りますね。(私のPCは日本語の対応がサポートされていないので、よくおちるです。)続きはNashvilleの出張の話とLAの話。

あきこ

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続きです。

5月にテネシー州のNashvilleへ出張しました。アメリカへ2年住んでいても、行ったことのある場は、LA (3ヵ月に1度くらい買物に行く。車で6時間くらい)Vegas (過去に2度行って、また来月行くけど、私はこの街が多分世界一好きです)、NY (なんと、新婚旅行で行った。ここであのJonnyを買ったんだよ。Jonnyは今もあの暗室にいます)、Santa Fe(3年前、デニスがxxx万円かけて、PhotographのWork Shopへ参加した際迎えに行った。このWorkshopでデニスが学んだことは、自分は余りにも才能が豊かすぎて、普通の人たちには理解されないということでした。私も同感です)くらいで、いわゆMid-Westと呼ばれる地域や南部には全く縁がありませんでした。

Nashvilleは、乾燥した大地が延々と続く西部と異なり、緑が深く豊かで、穏やかな丘陵地帯が続き、湿気が多く日本と気候が似ていました。アメリカにはこれだけ広大な国土があり、しかもその殆どが、Resoucebleだなんて、なんて恵まれた国なんだろう。神に祝福された大陸だ、とデニスが言っていました。国土が広いだけなら、中国でもインドでもロシアでも同じですが、どこへ行っても、人が住めて、作物が実るという環境であるということは別格のことだものね。

その美しい丘陵地帯のフリーウェイを少し走ると、突然Oply Landという観光地に出ます。かのCounty Musicの殿堂、Grand Ole Oplyがあるところで一大観光地になっています。Oply Land HotelというLas Vegas級の大規模なホテルがあり、それがLand Markになっていて、巨大なショッピングモールが隣接しています。モールの中には、アメリカのどこの地方でも見ることのできる、モールショップが(モール内に必ず出展している個性のないショップ、GAPとかBanana Republicとか)同じような品揃えで並んでいます。この国では「違うもの」を探すのがとても難しいんですよ。

このOply Land Hotelに私たちは10日間滞在したのだけど、ホテル全体が温室のようなになってるアトリウムスタイルで、差し詰め屋内植物園という感じ。もちろん植物は全部本物で、ガードナーが毎日水をやって、手入れをしています。ニューオルリンズのフレンチクォーターを模したような内装で、一瞬「わぁ、すてきぃ」なんて間違えて思ってしまうかも知れないところです。(うちのママはきっと大好き)一応テーマパークなんです。でもラスベガスに比べて下品さに劣る。私は通俗や下品さというのはとことん追求すべきで、究極の通俗や下品さは美だと信じているので、この中途半端におセンチな感覚にどうもなじめませんでした。英語で言うと、”CONY”という言葉になるかな。

Oply Land内はそんなわけで、「Yak! Yak!」と連発していたけど、一歩そこを出れば、まさに風と共に去りぬの世界で、プランテーション時代の典型的な南部の豪奢なマンションが、リバーサイドに連なります。絵としてはそれは見事なのだけど、「生」というか「動」が感じられない。つまりは博物館なんですよね。

自称スカーレットオハラの大ファンで、(高校のときの渾名は「オハラ」だった。文集に「スカーレットと私の類似点」という作文を書いて、「作品の中のレットバトラーは惨めなほど弱い男で、スカーレットの足元にも及ばないが、私はわたしのたった一人のレットを探すことができたら、世界中を敵にしても生きていける」って書いて、学校中のひんしゅくをかった。でもその通りになった)、マンションに入ってみたかったのだけど、デニスは西部開拓時代崇拝主義の自称ワイアットアープ−虚弱偏なので、南部のおセンチにはつきあってもらえなかった。

長くなったので、LAはまた次の機会にね。


ぼくの送ったメールはつぎのようなものだった。

どうしてますか。東京は、毎日毎日、とてつもない暑さです。そちらはきっと快適なのでしょうね。暑くなるとなおさらエアコンを酷使して、ますます外の気温を上昇させている。
 
東京でちょっとでもまとまった土地があれば、相続が発生すると売らなければならなくなって、小さく切り刻んで醜い建売がつくられる。日本ではあらゆる制度がまちを悪くするようにはたらいている。それでもぼくは、なんとか日本のまちをいいまちにしたいと思うのだが、そちらはどんな具合ですか。

 ぼくの妹たちは、スティーブが7月で会社を辞めることになっていて、家も買い手が決まっている。ガレージセールをやって売れ残った荷物は倉庫に預けておいて、1年をかけ車を2台連ねて家なし状態でアメリカ横断するそうです。こどもたちも学校を休ませるんだって。
きみたちの出発にプレゼントした「路上」はサンフランシスコからシカゴまでの横断だったけれど、オルソン一家(妹たち)はシカゴにいるスティーブのおじさんの家に寄ってから出発するそうだから、ちょうど逆の方向だね。
 西海岸で仕事をさがすんだそうです。スティーブは、野村証券と興銀が協同出資してつくった投資コンサルタントみたいなことをする会社に勤務していたのだけれど、日本の本社の連中の社内ポリティクスにうんざりしたようです。大きな会社ではないけれど、社長が日本人で、スティーブはそのつぎの位置にあったのだから、日本人だったらよほどのことがなければ辞めないだろうね。
 
 また、そちらのまちや住まいの様子を知らせて下さい。写真もあるとうれしい。


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