→行くのか・・
夏民
「またのごひいきを!!」
年上の女王様
華舞伎町のネオンがやたらチカチカと目につく。
「部長・・僕はもう・・もう・・我慢の限界です!!」
「ち・・ちょっとまだダメ!」
熱い。体が燃えるようだ。
ネオンを避けるように入った路地裏はひんやりとしていた。
二人きり・・部長の目は酔ってるのだろう。潤んでいる。
「う・・もうだめです!!出ます!!!」
「やだっ!」
僕の熱いもんじゃ焼きは地面にぶち撒かれた。
「う
``・・グオエエエエ!!!」「あーあ。ったくしょうがないわねえ」
腹がよじれるように痛い。
部長は呆れ顔をしつつも背中をさすってくれた。
「うう・・すいません。うっ!!ゴオエエエエエ!!!」
「おいっ!!新人!情けない、そんな酒の弱い部員に育てた覚えはない!」
いつのまにか体育会系の剛田先輩と花園先輩が後ろに立っていた。
「うむ!そのとーり!だいたいお前は背筋がなさすぎる!そんなことでは酒に飲まれるのも当然だ見よ!!この鍛えあがった肉体美いいい!!」
「むっ何を!負けるかあああ!!」
「ふんっ」「はああああ」「ぬおおおおううう」「おふうう」
「あのね、よっぱらいは一人でたくさんだから服を着なさい」
「なぜです!部長。こんなに美しいのにいい!!ふんっふんっ!!」
「いいから着ろ!」
ゴスッ!!
部長の左ストレートが炸裂した。
「はぐっ」
のは僕の頬だった。
最大の頭痛と甘酸っぱい口の中を感じながら。
僕は情けない声をあげてスローモーションのように倒れていった。
気づくと僕は夏民の店の前で剛田・花園先輩に担がれていた。
すでにほとんどの映研部員達は帰っていて、いるのは僕を含めた四人に倒れてる二村だった。
「今日は俺の家に泊めますよ」
どうやら一人暮らしの剛田先輩の家に泊められることになったらしい。
嗚呼・・また朝まで上腕二等筋やアブクレイマーについて語られるのか。
「・・決めた!私が車で家まで送っていくよ。トドメを刺したのは私だから」
『飲ましたのも大半部長なんじゃ・・』
そうつっこんだがしゃべる気力もなかった。
「すぐそこのコインパーキングに車止めてあるから運んでくれる?」
「しょんなー!なんでこいつがぶちょーとで僕は剛だしぇんぱいとなんですかああ?ぶちょおー俺も送ってくらはい」
起き上がった二村が異を唱えたが
バシッ!
部長の手刀の前に沈黙した。
「花園コレ(二村)お願い」
「ういっす」
「とにかく!今アル中とかで不祥事を起こして映研を潰すわけには行かないでしょ」
剛田先輩は不服そうな顔をしていたが決めた決断は変えない人だということを重々知っているので渋々納得したようだ。
「わかりました・・うらやましいやつめ。・・・何かしたらスクワット300回×15レップだ。わかってるだろうな?」
冷や汗が出てきたが寝たふりをしてやり過ごした。
バタンッ!
リクライニングにされた助手席に僕は寝かされた。
「部長何かあったら花園じゃなくこの俺を!部長の為ならたとえ火の中泡盛の中ああ!駆けて行きますからあああ!!!」
なぜか脱ぐ先輩。
「わかったから後はよろしくね」
そういうと部長は車のウインドーをかっちり閉めた。
グオルルルルル
赤い外車は低い唸りをあげて動き出した。
「?」
冷たい感触がしたので目を開けて見る。
濡れたハンカチだ。
「大丈夫?これ駐車場に来る前の自販で買ったから」
そういってドリンクホルダーにささっているDOLVICを指す。
「品山駅の近くでいいんでしょ?」
「はい、すいませんいろいろ迷惑かけて」
「私のせいでもあるからいいわよ」
・・・・・・・・・
静かな車内。時折聞こえてくるのは対向車の行き交う音だけ。
気持ち悪くて寝つきにくかった僕は重くなったような口を開いた。
「部長は監督やってて行き詰まりとか感じたりしますか?」
僕は心にあったわだかまりを喋ってみた。
「何?突然、そりゃああるわよ。何?行き詰まってんの?」
「ええ、まあ。今度のコンテストのためにカメラ回して見たんですけど納得が行かなくて」
「それで最近暗い顔してたのね」
「なんか何撮っててもありきたりの構図に感じてしまって・・酒飲んだら解消されるかと思ったけど気持ち悪くなるばかりで全然変わんなくて・・」
「ちょっとしっかりしなさい」
「もうダメ人間なのかも・・・」
「あーあもう!しっかりしなさい!男でしょ!・・・いい?長い話になるけどあのね、私が思うに・・ん?」
「Zzzzzzz」
「寝るなよっ!」
部長は握り拳をつくったが・・
「ま、今日は勘弁してやるか」
優しい目で拳を引っ込めた。
・・・・・・
しばらくの沈黙のあとアクセルを強く踏みこんだ。
→続く