大声で言うことではないのだが、
小梅が好きだ。
もちろん、あのキャンディの小梅である。
特に理由はないのだが、強いて言えば程のよい酸っぱさ。甘味料の入っ
た梅干しなどは死ぬほど嫌いなのに、小梅は好きだ。
というほど好きでもないのだが、久しく食べたことがなく懐かしく、
このたびふと思い出して買ってみた。今では中に梅肉ペーストなんぞが
入っているらしい。飴もまた進化するのである。進化というのが適切か
どうか知らないが。
そんなことはどうでもいいのだが、一粒ずつの包みに「小梅ちゃん一
口メモ」というのが書いてある。以下はそれを書き留めたものである。
一袋に入っていたものだけまとめたので、まだほかにもあるかも知れな
い。
なお言うまでもないのだが、下記の「小梅ちゃんのプロフィール」は、
株式会社ロッテに著作権がある(たぶん)。袋の裏側には「新・小梅恋物
語」というのが掲載されており、作者として吉元由実氏の名があるから、
吉元氏にも著作権があるのかも知れない。問題ある場合はご指摘くださ
い。本ページをすみやかに削除します。
- 小梅ちゃんは蟹座のB型、明治生まれのちょっと内気な15歳らしい。
- 東京・小石川の生まれらしい。
- 三人姉妹の末っ子らしい。長女はお松、次女は竹子らしい。
- おかあさんの代わりに家事手伝いをしているらしい。
- 料理が得意でおとうさんのお弁当も作るらしい。
- かんざし集めが趣味らしい。
- 初恋の人・真は蠍座のA型で17歳、真面目なロマンティストらしい。
綾小路家の一人息子で、乗馬が得意な旧制一高生らしい。
- 小夏、小雪、小春という三人の従姉妹がいるらしい。
取るに足りないことだが、このプロフィールだけからでも物語の背景
がつかみ取れる。
- 時代は明治27年から大正15年と思われる。
- 第一高等学校は明治27年9月創立(東京大学ウェブサイトの沿革
図から)。真が入学したのは早くても同年。
従って、明治27年、真17歳、小梅15歳が最も早い。
- 一方、小梅は「明治生まれ」とされているので、遅くとも明治
45年には生まれた。当年15歳だから大正15年(明治45年=大正
元年だが、数え年なら大正2年に2歳(の筈))。
- 真が「旧制一高生」とあるので、学制改革がなされた昭和23年
以降とも思えるが、小雪が明治生まれであることからそれは無
理(38歳くらいになってしまう)。
- 小梅の家はさほど豊かではない。はっきり言えば貧しい。
- おとうさんは大工・左官の類の職人、または勤め人であり、おかあ
さんは長い病気を患っている。ふたりの姉は働きに出ているか、
すでに嫁いでいる。
- まず父親だが、弁当を用意するくらいだから、昼間自宅にはい
ない職業である。従って商人説は却下(屋台商売や香具師の類
を除く)。職人でも自宅に作業場を持つ桶屋などではなく、大
工や左官など、よそに出かけていって仕事をする職人だ。
もちろん、この時代「社員食堂」というようなものはないこと
から、勤め人説もあり得る。
- 次に母親だが、小梅が代わりに家事をしているという事実から、
忙しいのか働けないのかどちらかである。
この時代、既婚の職業婦人というのは考えにくい。商家説はす
でに見たように否定されているし、根本的に無理がある。小規
模の商家なら主人の妻が自分で家事をもこなすだろうし、大規
模なら賄いにも雇い人がいる。従って、母親が多忙だから小梅
が代わって家事をしているのでなく、健康を害して働けないと
考えてよい。
- ではふたりの姉は何をしているのだろうか。年長の子の方が先
に働くのが普通だから、15歳の小梅をおいて学業をしていると
は考えにくい。とすれば、小梅同様家事手伝いをしているか、
家計を助けるために働いているか、すでに結婚しているかであ
ろう。
- 三人の従姉妹は小梅よりも年下であると思われる。
- まず小夏たちの名だが、生まれた季節にちなんでいるとも考え
られるが、それでは夏に二人以上の子が生めないので、季節シ
リーズで生まれ順に名づけられたと解釈するべきであろう。
- この従姉妹たちが姉妹であるかどうかは定かではないが、小夏、
小雪、小春という並びは、生まれた順につけたとしたら不自然。
早春の花である「梅」を字に持つ小梅がが先に生まれ、それに
ちなんで、小梅のおじ・おばたちが自分の子に小夏と名づけた
と考えるのが妥当。
もっと取るに足りないことだが、この「小*シリーズ」とか「千*」
シリーズ(千春、千夏、千秋)とかで、「冬」だけ《仲間外れ》になる
のはなぜだろう。「小冬」とか「千冬」という名は確かに見かけないも
んな。な。(でも「小秋」という名もなさそうだけどな)
他人事といわれたらそれまでなのだが、「真面目なロマンティスト」
に恋するのは止めた方がいいぞ、小梅ちゃん。
(2003.02.07)
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