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【摂津名所図会】 |
【現在(2018)の本堂】 |
目次
1.参道概要
2.表参道
3.丁石全般
4.丁石一覧
5.丁石詳細
6.梵字の種子
7.地図
1.【参道概要】
『石の文化財』豊能町教育委員会発行、平成28年改訂には、「吉川の平井川に架かる山浦橋の西詰に一町…高代寺
入口の鐘楼下に十二町石…」としている。
国立国会図書館デジタルアーカイブの『攝津名所圖會』. [12]のコマ番号45に絵が載り、説明(コマ番号46)には
「吉川村の山峯にあり、真言宗、僧舎三坊」とあるだけで、参詣道については触れられていない。
ただ、『石の文化財』や現地の説明板等には「表参道」とあるので、裏参道もあったのではないか。明治の地図で見
ると、北の黒川と西の横路から登って来る道が北から寺まで描かれており、これではないかと思うが、未調査である。
絵図にも、当参道から続くと思われる道があり、「大墓(おおはか)」と書かれている。寺の下を東から北へ進む道
が「表参道」で、寺の東門前で「裏参道」と出会っていたものと思われる。
絵図の寺の下部の参道と、現在の車道に出る参道は当然一致しないが、鐘楼を手掛かりに見ると、東脇の階段が描
かれておらず東から廻り込む様に描かれており、現十二町丁石がある地点から本堂までは直下の階段を含め、まだ
200m程の距離を残す。
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2.【表参道】
先ず、当参道の起点であるが、『石の文化財』によれば「一町丁石」を始まりとしており、慶安三年には、現花折
街道が開通してはいないが、村中を通っていたと思われる今の道があり、そこから寺へ向けての参道入口としても違
和感はない。
ただ、この丁石から次の「二町丁石」までは150m程有り、丁石の厳密性から見て、現在地が元の位置ではないとし
たい。
明治42年測図の地図でも、今の位置に辻がある様書かれているが、建立時(慶安三年)は、吉川公民館前の石垣の
角辺り(現在石垣下に道は無いが、上部には道の痕跡が残る)
N34.912655 E135.445415
から西に分岐していたとすると、二町までピタリと1丁となり、ここを参道の起点としたい。(旧山下道の起点でも
あるか。)
次に、「二町」丁石から「六町」丁石の間が436m(4丁)必要であるが、400mしかなく、「三町」と「四町」間
が80mと短く、「四町」と「六町」も200mと、やや距離が足りない。
この間、参道の付け替えが有ったとして仮定してその候補を検討すると、三町丁石の南10mの辻より北へ折れた後、
西に進み尾根筋を通り、神の池下池の上(440m)、又は「旧山下道道標」のある辻へ出る(430m)ルートを想定す
ると、距離問題は解決する。
これにより、三町、四町丁石は移設されたとし、四町丁石の上部折損は移設由来のものとも考えられ、真実味も増
し、五町丁石の紛失にも繋がったのではないかとしたい。
九町以降の上部参道は、現行、西及南西へ廻り込み、車道へ出ているが、明治の地図では、北西方向に直進してお
り、今の閼伽井の神泉がある辺り出ていたと思われる。これは昭和40年発行の地図まで同様に描かれており、崖崩れ
等で、参道と共に丁石も紛失したものと思う。
ただ、明治の地図に有る様に直線的に登ったのでは距離が不足してしまい、つづら折れに道が付けられていたものと
考えるか、現在の十二町丁石が、下方に移設されたものかの、何れかであろう。『名所図会』を見る限り、移設の可
能性が高いと思う。
つづら折れ無で、明治の地図をトレースすると、元位置は
N34.917397 E135.437643
絵図の本堂下に有る、庫裏の東方の山門らしき地点となる。現在では吉川城址へのハイキングコース上となるか。
【追記、一町丁石移設に関して】
参考資料として『大阪ミュージアム』のサイトの「まちの魅力づくり」「平成25(2013)年度」「花折街道沿道の
魅力向上事業」の中にある「BEFORE」の写真を見ると、当辻にこの丁石はなく、「AFTER」には載り、説明文に
「分岐点には案内がないので行先がわからない」→「行き先がわかりやすいよう道標を設置」とあるので、事業実施
期間の、平成25(2013)年6月1日から平成26年3月24日の間に、移設、或いは再建されたものと思われる。
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3.【丁石全般】
形状について、「舟底型」としたが、詳しく述べると
1.全体的に、下から上部に徐々に細くなる。
2.碑面(前面)は上部がやや前に出た凹面となっているものが多く、文字部分を保護する目的かと思う。
3.「一町」「十二町」の底部は平板と思われ台石上に置き設置する形式と思われるが、その他は土中に埋設されて
いる。
設置場所について、
石標を建てる時の常識であろう、一町丁石を除き、全て山側に、参道に向かって建てられている。
全体的に各丁石の間隔は一定で、ほぼ1丁と思われるが、私見では、1町、三町、四町、十二町が移設されていると
思う。
その他、
「一町」丁石だけは、特別のものとして作成されたであろうと思われる点として、大きさと、正面の上部に廂状の出
っ張りが付けられている事である。碑面の丁数以外の文字が、先頭と最後の「十二町」にあるが、一町の方が文字数
も多く、配置も凝っている。
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4.【丁石一覧】
豊能町高代寺丁石一覧
丁数 | 位置 | 正面方向 | 道の左右 | 碑面丁数 | 大きさ | マップ距離/間隔m |
1 | N34.912134 E135.445379 | 南 | 右 | 七宝山高代寺 一町従是十二町法印秀栄川秀□ 慶安三年卯月八日 立之 | 舟底型 102x36x32p(頂高14p) | 0/ 0 |
2 | N34.913335 E135.445015 | 南 | 右 | 二町 | 舟底型 82x37x31p | 150/150 |
3 | N34.913721 E135.444027 | 南東 | 右 | 三町 | 舟底型 94x33x26p(頂高12p) | 270/120 |
4 | N34.913651 E135.44329 | 南 | 右 | 四町 | 舟底型 78x25x24p(頂高14p) | 351/ 81 |
6 | N34.914221 E135.441305 | 南西 | 右 | 六町 | 舟底型 88x29x24p(頂高12p) | 550/199 |
7 | N34.914518 E135.440157 | 南西 | 右 | 七町 | 舟底型 108x28x30p(頂高15p) | 663/113 |
8 | N34.914935 E135.43913 | 北東 | 左 | 八町 | 舟底型 76x27x26p(頂高9p) | 773/110 |
9 | N34.873783 E135.632537 | 東 | 左 | 九町 | 舟底型 82x28x23p(頂高12p) | 891/118 |
12 | N34.916957 E135.437107 | 南 | 左 | 十二町 願主大僧都法印秀栄立之 慶安三年卯月八日 | 三角柱(錐) 83x28x16p(頂高12p) | 1310/419 |
注)「正面」とは丁数の刻まれている面、「道の左右」は高代寺へ向かって、「大きさ」は基礎部を含まない地表高、
「頂高」は山型前部の高さ。
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【12.】 |
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5.【丁石詳細】

南面
┌――――――――――――――――――――┐
│ 七宝山 慶安三年 立@ │
│(梵字)一町従是十二町法印秀栄川秀A │
│ 高代寺 卯月八日 之B │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字「べイ」は、薬師如来の種子か)
(@は「乎」、Aは「栄」、Bは「二」に見える)

南面
┌――――――――――――――――――――┐
│(梵字)二町 │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字「べイ」は、薬師如来の種子か)

南東面
┌――――――――――――――――――――┐
│(梵字)三町 │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字「べイ」は、薬師如来の種子か)

南面
┌――――――――――――――――――――┐
│(梵字)四町 │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字「べイ」は、薬師如来の種子か)

西面
┌――――――――――――――――――――┐
│(梵字)六町 │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字「べイ」は、薬師如来の種子か)

東面
┌――――――――――――――――――――┐
│(梵字)七町 │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字はベイ「薬師如来」の種子)

南東面
┌――――――――――――――――――――┐
│(梵字)八町 │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字「べイ」は、薬師如来の種子か)

東面
┌――――――――――――――――――――┐
│(梵字)九町 │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字「べイ」は、薬師如来の種子か)

南面
┌――――――――――――――――――――┐
│ (慶)安三年 │
│(梵字)十二町 願主大僧都法印秀栄立之 │
│ 卯月八日 │
└――――――――――――――――――――┘
(梵字「べイ」は、薬師如来の種子か)
(( )部は『石の文化財』より)
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6.【梵字の種子】
1.薬師如来 ベイ
全ての丁石ともこれのみである。
(『石の文化財』では「バイ」薬師如来としている。)
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7.【地図】
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【6.高代寺丁石地図】 |
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【7.豊能町の道標】 |
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