27.大阪狭山市報恩寺の扁額(道標ではない)

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大阪狭山市狭山4−2284−1 府道198半田交番北側、報恩寺、本堂外陣の西長押の上部
額 (60x143x3p)(狭山町史より)
N34.505053 E135.555536


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額面

仰地蔵菩薩を尋奉に、過多遙劫に己に正覚を成し給ひ、釈尊
の教勤を遂り、内には菩薩行を秘し外には聲聞の密を現し、
福智の二厳を以て荘厳し恒沙の萬徳を以て眷属とし給ひ、現
世には福徳を與へ未来には悪趣の衆生を救ひ給ふ事余尊に超
過し給へり、然に予幼少に淵魚釣を好、数多みゝすを殺し又
犬を責悩し杖打ちて邪淫を犯し多罪のかるへき所を知らす、
故に別して後世を願て以前其罪の深き事□□んや、ことし、
或夜犬みゝすの地獄に堕、其命絶なんとせしに、奇成哉当山
之地蔵菩薩忽然と現し給ひて曰、汝今躰地獄を救ひ得さすへ
し、猶此後とても善行を施すへしとのたまひけり、漸くつみ
をのかれ午睡の夢覚歎@いし侍るを追悔のため絵馬にあらハ
すと爾云、
 天保十一子年  神南邊
       七月   大道心

@は「候」のくずし字と思われる。□□は「なさ」等か。


(天保十一(庚子)年七月1日とすると、西暦1840年7月29日水曜日となる。)
(『大阪の街道と道標』武藤善一郎、平成11年発行には、未記載)
(訪問時ご住職不在に付き拝見出来ず。後日再訪し撮影したが、保護用ガラスに映り込みが激しく、読下し
 出来ません。
 『狭山町史』2巻、昭和42年11月5日、狭山町史編纂委員会編の「227報恩寺扁額」を参照し載せた。)
(注目点は、紀年と名前の書き方、仏道入門時期が知りたいのですが、作成年月のみ分かる様で、「辺」は
 多分くずし字で「邊」としている様で、「大道心」も書かれていると思われる。字の上手下手等は読取り
 難く分かりませんが、上手いように感じます。)
(取敢えず、前掲を文を読下してみたがこれも怪しいと思います。ご注意ください。

【読下し】
 地蔵菩薩の仰(おおせ)を尋(たづ)ね奉(たてまつ)るに、遙(はるか)な劫(ごう、
 年と同義か)を多く過ぎに、己(おのれ)に正覚(しょうがく、悟りの意か)を成し
 給(たま)い、釈尊(しゃくそん)の教勤(きょうきん、おしえを学ぶの意か)を遂
 (とげ)り、内には菩薩行(ぼさつぎょう、自己啓発か)、外には聲聞(しょうもん、
 仏の弟子)の密(みつ、修行か)を現(あらわ)し、福智(ふくち)の二厳(にごん)を
 以て荘厳(しょうごん、身に着けるの意か)し恒沙(ごうしゃ、数が多いの意か)の
 萬徳(まんとく)を以て眷属(けんぞく、従う者の意か)とし給い、現世(げんぜ)に
 は福徳(ふくとく)を與(あた)へ未来には悪趣(あくしゅ、死後の世界か)の衆生
 (しゅじょう)を救(すく)い給う事(こと)余尊(よそん、他の尊仏か)に超過(ちょ
 うか)し給えり

【ここまでは前置きのような感じか。】

 然(しかる)に予(よ、自身の事)幼少(ようしょう)に淵魚釣(ふちうおつり、
 川釣りか)を好(このみ)、数多(かずおおく)みゝす(ミミズ、釣り餌か)を殺し
 又(また)犬を責悩(せめなやま)し杖(つえ)打ちて邪淫(じゃいん、度を越す害)
 を犯(おか)し多罪(たざい)のかるへき(軽べき)所(ところ)を知らす、故(ゆえ)
 に別して(べっして、とりわけ)後世(ごーせ、来世と同じ)を願(ねがい)て以前
 其罪の深き事□□んや、ことし(今年)、或夜(あるよ)犬みゝす(犬とミミズ)の
 地獄(畜生道か)に堕(おち)、其命(そのいのち)絶(たえ)なんとせし(状況)に、
 奇成哉(きなるかな、不思議なことに)当山(とうざん、当寺)之(の)地蔵菩薩
 忽然(こつぜん、突然)と現(あらわ)し給いて曰(いわく、言う)、汝(なんじ)
 今(いま)躰(からだ)地獄を救い得(え)さすべし、猶(なお)此後(こののち)とて
 も善行(ぜんこう)を施(ほどこ)すべしとのたま(宣)いけり、漸(ようや)くつみ
 (罪)をのかれ(逃れ)午睡(ごすい、夏のひるね)の夢覚(夢さめ)歎(なげき)候い
 し侍(はべ)るを追悔(ついかい、後悔)のため絵馬にあらハす(表す)と爾云
 (しかり言い)し、
 天保十一子年七月 神南邊大道心

【大意】
 地蔵菩薩の信仰のおかげで、過去の罪大きを悟り、今後の為に絵馬を奉納する。

【感想】
 「犬を杖で打ちすえる」ことは、悪いとは感じるが、ミミズを餌に魚をつる事が
 悪行とは余り思えないが、仏道にあっては戒める行いとなるのであろうか、はた
 また、午睡の夢で具体的に情景が見えた為に書いたものかは分からないが、この
 人に係る他の悪行が書かれている訳ではない絵馬であろう。

【参考】
 「内には菩薩行を秘し外には聲聞の密を現し」によく似た文がwebにあり、
 「内には菩薩の儀を密し,外には聲聞の形を現す(1)行基を賛美する景戒の言葉」
 とされていた。「密、行」は修行の形式か行動か良く分らない。「秘、現」は
 見えるか、見えないかを示すものであろう。

(寺南の四辻北東部に、神南邊の建てた「大阪狭山市池尻の道標」がある。額との関係は不明。
 同時に奉納したなら、額にそのことを一言いれるのではないか。尚、当寺のご住職にお聞きしたところ、
 「こいさか子安地蔵は当時、ここより東の大阪狭山市駅近くに有ったらしく、報恩寺を示すものではない
 とし、扁額についても、道標に関しても記録は残っていないとの事でした。
  同寺の小冊子に「天保七年嵯峨御所から…神南邊大道心を賜り…」とあります。)

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【1.池尻の道標から 【2.報恩寺を北東に望む 【3.梵鐘を北東に望む
 北、報恩寺を望む  本堂内に額がある  昭和の鐘が
 左、南北に府道198号】  後日、再訪した】  本堂南東部にある】

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【4.扁額を北西に望む 【5.文章の最後を脱色した
 額にガラスが嵌められ  年号部分は読めないが
 堂内の景色が写り込む】  上左端「七月」にも見える】

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【6.扁額文字部の最後か 【7.同左、「南邊」とその下 【8.「邊」の左下、額最下部
 「神南邊」と思われる  「大道心」は有るか。  中央「道」ならくずれ少く
 くずし字で書かれる】  この3枚共に加修正】  「心」は白くみえるか】

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