QSLカード考・印刷されたファイブ・ナイン

この原稿は、大宮アマチュア無線連盟の会報1993年(平成5年)5月号にJN1WTQが投稿掲載されたものを一部修正したものです。いま読むと本稿の中身は「かなり問題あり」なので、ホームページにアップするのは止めようかとも思いましたが・・・・・。


今回は、一群のQSLカード中もっとも数が多い自作のログ形式カードについて、気がついたことを書いてみましょう。と、いうよりも、データ欄が自作のカードについてということになりましょうか。「コールサイン」や「イラスト」に分類したものについても、かなり多くのカードがデータ欄も自作されております。

お手元にCQ誌の93年2月号はありますか? 「FMトランシーバーで楽しむハムライフ」という特集がありますが、その中に「コンテストを楽しもう」というページがあります。そのページの筆者のQSLカードが掲載されておりますのでよく見てください。もう一つ、「国内コンテストのページ」という連載記事がありますから見てみましょう。そこにも記事のライターのQSLカードが載っていますね。2枚あるうちの左側、コンテスト用という方のカードです。偶然にも別々の人のコンテスト用QSLカードが同時にCQ誌に載っています。

おわかりになりますか? シグナルレポートの欄にすでに「59」 「599」と印刷済みとなっていることに。これはどういうことなのでしょうか。コンテスト専用のQSLカードを作っている局のかなり多くがシグナルレポートを「印刷」してしまっているのです。

使用リグや移動先等ならともかく、QSLカードのレポート欄は印刷してしまってよいものなのでしょうか? どうも違和感を覚えます。コンテストQSOの結果を整理してみたら、シグナルレポートはすべて59だった、ということは当然起こりうることでしょう(私にだってあります)。しかしこれは結果論で、シグナルレポートは一交信毎に記録されるべきデータであり、当然QSLカードにも一交信毎に記入すべきであると考えているからです。

ところで、シグナルレポートっていったい何でしょうか? 現状では了解度はほとんど「5」を送ることが慣例化しています。51の下はせいぜい41までです(一度だけ31というレポートを送っている人がいたのを受信したことがある)。特にコンテストではシグナルレポートは「59」「599」としておくのが一般的です。なかには54とか57とか行ってくる局もおりますが、皆さんはどうされていますか? 私の場合、通常は59ですが、何度もコールサインやコンテストナンバーを聞かなければならなかった場合、59というのは抵抗があるので、普通のQSOと同じように聞こえたとおりのシグナルレポートを送るようにしています。(注1)

シグナルレポートの建前と実状の落差については、ある程度やむを得ない面もあるでしょう。特にコンテストの場合は、コールサインとコンテストナンバーが容易に了解できた場合は59として構わないという考えが成り立つでしょう。シグナルレポートは定量的でなければならないとは定められておりませんから、ある程度受信者の判断にまかされているわけです。

CQ誌の93年1月号のCQサロンには、コンテストQSOとQSLカードというテーマで、「よく聞こえなくても59や599一辺倒のQSLにどれほどの価値があるのか」という投書が載っております。この意見はQSLカードのレポート欄に59と印刷する人達の正反対に位置するものです。私も「通常は59」と送ってQSLカードにもそう記入しているのですから、この投書者から見れば事実上59と印刷する人達と同じ立場ということになります。いずれにしても、この話を掘り下げていくとコンテストでQSLを発行することの可否や、シグナルレポートの意味の問題にまで発展していきそうです。(注2)

雑誌等のメディアでは、おおむねコンテストでQSLカードの交換をすることは肯定されているようです。しかし前述したような考えを持っている人がいるのもまた当然なことです。私はコンテストQSOに対してQSLを積極的に発行しておりますが(注3)、交換を強要するつもりはありません。QSOに対する礼状と位置づけております。このような考え方があってもいいと思います。恐らく、コンテストQSOでQSLカードを積極的に発行する人達は、同じ考えであると推察されます。

もちろん、礼状だからといっていい加減なデータが許されるはずはありません。シグナルレポートを印刷してしまうことがいい加減とは言い切れませんし、それを咎めるつもろもありません。しかしシグナルレポートを印刷してしまうという行為は、結果ではなく最初から「何でも59」という態度を公言しているようなものであり、そのような姿勢に釈然としない人もきっといるはずです。

QSOでもっとも重要なシグナルレポートであり、QSLカードでもっとも重要なデータ欄なのですから、私はせめて自分に対しては厳しくありたい、と考えております。(注4)

(1993年5月号会報)
(注1)私も最近は、ほぼ全面的にシグナルレポートは59、599のみであり、お恥ずかしい限りです。デフォルトで59とレポートが入ってしまうコンピュータログソフトを使っていると、他のレポート送るのがおっくうになってしまいます。
(注2)話が大きすぎて、こんなところで扱えるテーマではありませんね。しかしDXコンテストでも59、599が普通のようです。
(注3)へたなイラストのカードを無差別に送り付けてご迷惑をおかけしております。
(注4)ますますもってお恥ずかしい限りです。

(1998年5月31日UP)



QSLPageへ戻る。


TOPへ戻る。