QSLカード考・それは適法な引用でしょうか?

この原稿は、大宮アマチュア無線連盟の会報1993年(平成5年)8月号にJN1WTQが投稿掲載されたものを一部修正したものです。


先日6mをワッチしていたら、リニアアンプを自作したか改造したのか「やっと160W出るようになった」とかいう会話を平気でして、しかもその場で実際に使っているのがいました(注1)。オーバーパワーの氾濫はいただけません。そしてQSLカードでも議論の余地がある現象があります。写真とイラストのカードに他人の著作物を流用しているものが非常に多いということです(注2)。皆さんもタレントの写真やアニメのカードをいくつか受け取られているのではないでしょうか? 著作権だけでなく肖像権の問題もありますね。


もちろん、他人の著作物を正当に使用することは可能です。その場合次の2つのいずれかに該当することが必要です。
(1)著作権者の許可を得て使用する。これを「転載」という。
(2)著作権者の許可を必要としない範囲で使用する。これを「引用」という。
QSLカードで著作権者の許可を得た上で使用しているものはほとんどないと思います。大部分は、はたして「引用」の範囲内なのかどうか? ということになります。

著作権等を述べるにあたって、「引用元」となる文献を、当然明記しておく必要がありますね。この文章は、(株)日立製作所知的所有権本部発行「ソフトウェア著作権ニュースNo2」を参考にしております。

さて、引用を認められるには、
(1)引用する著作物はすでに公表されたものであること。
(2)引用が公正な慣行に合致するもの。
(3)引用が「引用の目的上」正当な範囲内であること。
(4)出所の明示をすること。
以上4つの条件を満たしていることが必要です。このうち特に3項と4項が問題になりそうです。はたしてQSLカードにどのような目的があってタレントの写真やアニメキャラクタを使うのか? そしてその出典を明示しているか、ということです。

JARLがこの問題について過去に見解を述べたことがあったかどうかはわかりませんが、今のところ特に注意や規制に動くという話はないようです。交信証および受信証の取り扱い規定第4条の3には、「我が国の法律で禁止されているものであってはならない」というそっけない表記がありますが・・・。はたしてこれらは合法な行為といえるのでしょうか?

公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内であることを判断する基準とは、
(1)自己の著作物と引用している著作物とを明確に区別して認識できる。
(2)自己の著作物が主、引用している著作物が従の関係である。
(3)引用している著作物の引用は必要最低限である。

QSLカードのメインは、あくまでも交信を証明するデータ欄です。写真はイラストは一種の装飾であります(カードボックスの中でも目立ちたい! 私もそうですが)。と、いうことは自己の著作物?であるデータが主であるQSLカードには、著作の主従関係が認められると考えられますが・・・。

ですから、これらの著作物の引用という行為自体はとりあえず問題ないということにいたしましょうか。ただし、引用を認められる条件のうち、「出所の明示をする」ということがなされているカードは、ほんの僅かです。これが満たされなければ合法とはいえないのではないのでしょうか。しかも肖像権の問題についてはいかにQSLカードであっても容認できかねると思います。あくまでも現状は黙認という状態です。この辺はJARLや無線雑誌やカード印刷会社がもっとPRすべきです。
他人が完成させた著作物をあたかも自分のものであるがごとく用いてはなりません。難しい法律論を持ち出すまでもなく、常識の範囲内で作成者が判断する必要があります。アマチュアコードにも「アマチュアはよき社会人であること」と、書いてありますからね。

(1993年8月号会報)


(注1)当時は言うまでもなく、6mで免許される最大出力は原則として50Wまででした。
(注2)実は、最近はタレントやアニメ関係のQSLカードは大幅に減少しているように感じます。著作権等の意識が浸透してきたのか、それともその種のカードを好んで作る若年層HAMが減っているからなのか?

(1998年6月28日UP)



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