鉢ケ森  1999年10月31日

鉢ケ森は楽しい山である。山腹で出会うゴトゴト岩の河原も、途中の苔むした山肌も、樹幹から望む展望も、山頂の北に広がるササ原も、南のアセビの森も、縦走路の趣も。剣山系や石鎚山系の名だたる山々には到底かなわなくても、高知県のマイナーな山らしく?標高も山頂もありきたりだが、アプローチは結構楽しい山である。
この山は、県内屈指の無線中継施設が林立する「梶ケ森」から間近に確認できる。
そのせいか、この山の近辺は比較的電波の通りが良く、事実、登山口近くに有った松尾無線中継所は、現在の梶ケ森に移設されるまでこの地で重要な役割を果たしていた。
この山へはいくつかのルートがあるが、南の香北町から、大豊町に通じる谷相(たにあい)林道を経由し、林道松尾峠を越えてすぐの登山口から登りはじめるのが名所ゴトゴト岩を辿るにはもっとも一般的で、高知自動車道大豊ICからなら、梶ケ森の入り口で有名な豊永(とよなが)から南大王川を遡上しても良い。林道はそれほど荒れてはいない。


林道脇の登山口。駐車は林道脇へ通行の邪魔にならないように。

林道上の松尾峠から北に少し下がったカーブに登山口はある。
写真のような小さな看板を見落とさなければ登り口は容易に見つかるだろう。
ただ、駐車場は無く、付近に駐車をためらうようなときは、迷わず林道松尾峠の広場まで引き返した方が良い。登山口と林道松尾峠とは距離にして200mほどである。

登山口からは、林道の山手を駆け上り、すぐになだらかな水平道を辿ることになる。時期によっては山手のササが幾重にも登山道に被さり、肩や頬をさらさらと撫でてくれる。雨期や朝露が残る早朝ならうんざりするのだが、秋はそれも気持ち良いくらいである。
5分も歩けばササは低くなり、道は尾根の右手を巻きながら緩やかに下り、再び水平になって、ミツバツツジやヒメシャラ、ドウダンツツジなどが目立ちだし、さらに再び緩やかな尾根を巻き下るとコルである。
ここは登山道上の松尾峠で、松尾越しと呼ばれ、国土地理院の地図にも「松尾越」とある。
付近には形の良いブナがあり、「ゴトゴト山」との木製の指標もある。


看板通りに右手の登山道を行く。ササが茂り、足元には注意したい。

看板から5分ほどササを漕げば、標高約1080mほどにある十字路に飛び出す。
ここで進行方向左手に登ってゆけば、帰途に紹介する縦走路を辿っての歩きだが、ここは、この山の名所「ゴトゴト岩」を見ないわけにはゆかないだろう。正面にまっすぐ下る道を目指そう。


十字路ではブナの木が登山者を見守ってくれる。

ゴトゴト岩に向かって3分ほどのところの小さな分岐は左の水平道を辿り、十字路から5分でゴトゴト岩の河原に着く。
幾種類もの広葉樹に脇を固められたゴトゴト岩の河原は壮観である。
涸れ谷の、大小の白い岩はほとんどが浮き石のように重なりあい、岩を踏むたびに「ゴトゴト」と音をたてるのが名前の由来のようである。
ここからだと、上を仰いでも、下を眺めても、落ち着いた素晴らしい景色が広がっていて、鉢ケ森の山名さえ「ゴトゴト山」と呼びたくなる気持ちが良く分かる。
なお、付近はツツジが多く、春のゴールデンウィークにはたくさんの人が訪れる。


名所「ゴトゴト岩」の河原。四季それぞれの趣がある。