ゴトゴト岩の景観を思う存分楽しんだ後は、苔むす無数の岩を踏みながら、再び山頂を目指す。
うねを巻くと、右手(北側)樹幹越しには大豊町川又(こうまた)の源流の山肌が迫り、白い巨岩や、稜線のササ原が美しい。流麗な山容が「どん」と見えるわけではないけれど、ちらほら見える景色だからこそ、かえって心を奪われるのかもしれない。そんな景色を眺めながら、やがて、標高が1150mを過ぎる辺りから登山道は急な登りになる。
山肌には苔におおわれた丸い石が散在して、明るいながらも深山幽谷の趣がある。


一面が苔むした登山道、こういう場所ではスリップに気をつけたい。


道がやや分かりづらいかもしれない山肌の急登を、右手に大岩が見えるまで、標高差50mほどを一気に登り切ってしまえば、モミやツツジの中を抜けて町界尾根に出る。
ここまで、ゴトゴト岩から約30分の道程である。


山頂北面のササ原から梶ケ森(右奥)方面を望む。

北西から延びてきた道と合流する地点は、秋ならカヤ混じりのササ原で、美しい景色にほとんどの人が佇むだろう。梶ケ森から茂ノ森までのわずかな展望でも、山を染める秋色と折り重なる山なみは魅力的である。
なお、ここから町境を1時間半ほど下ってゆけば、香北町河野地区に下りることも出来る。


左方に茂ノ森。大豊町と香北町の町界尾根がなだらかに延びている。

さて、ササ原の眺望にしばし憩ったあとは、急登を一気に駆け上がると「鉢ケ森」山頂である。
かつて、ここには安徳天皇が悪霊を鎮めるために鉢(かぶとの頂部をおおう鉄製の部分)を埋めたといわれ、それが山名の由来ともなっている。どおりで山頂は厳かな雰囲気があり、秋の大祭の後だろうか?祠の前には注連縄(しめなわ)がわたされていた。
付近の低木は刈り払われて展望はまずまずだが、いかんせん標高のない山なので、山頂からの眺めは今ひとつである。
それでも、北の景色はまずまずだし、山頂から北面に下れば、アセビの森から南西の眺めも素晴らしい。
この時期、遠くにかすみながら、高知平野まで見渡すことが出来た。


鉢ケ森山頂。右手奥に標柱と三等三角点の石標がある。