さて、「川窪登山口への分岐」を過ぎて更に西へと向かうと、ところどころ頭上で咲くアセビをくぐり、階段を登ると四国電力の送電鉄塔に辿り着く。ここまで、「川窪登山口への分岐」からほんの8分ほど(300m)の道のりである。
送電鉄塔の付近にはベンチや案内板があり、ここからも南に展望が開けている。ベンチに腰掛け、お茶で喉を潤すには最適である。
なお、ここに有るアンテナの立つ建物は「レピータ」と呼ばれるアマチュア無線の施設で、電波の弱い地域などでの通信を確保するために設置されている非常に重要性の高い施設である。ちなみにその呼出符号は「JR5VF」である。
四国電力の送電鉄塔そばにあるベンチ。休憩にはうってつけの場所にある。
ところで、送電鉄塔脇からは西方向はるかに「島ケ峰」の頂が見えている。今回は、その手前にあるという「てんぐ岩」と「池」へ時間のある限り迫ってみようということで昼食はもう少し後にして再びザックを背負った。
送電鉄塔から下り坂を辿るとここにも見事なアセビの大群落が続く。ここでは幾つもの幹が束になって生えており、その様はまるで箒を逆さにしたようである。少し離れて木々の隙間から見上げると、いっぱいの花が空を覆うほどに咲き誇っている。
アセビの大木があちらこちらで箒のように幹を伸ばしている。
登山道は送電鉄塔巡視路としてよく整備されており2〜3人が並んで歩けるほど広々としている。
鉄塔から5分ほどで左手に形の良いアカマツの木が認められると、道の左手はヒノキの植林になり、登山道は次第に標高を下げてゆく。このまま広い登山道を辿ってしまうと尾根を外れて下山してしまうので、この辺りで右手を良く注意して行くと、スズタケの中にそれらしい道を見いだすことができる。この分岐まで鉄塔から10分ほど。この日、この分岐にはゴミ箱が置かれていたが、その場所はいつ変更になるかもしれないのであてにはしない方がよいだろう。また、一般のハイカーが不用意に入り込んで困らないように赤いテープなどの目印も無いのだが、山慣れた人ならそれほどの苦労もなく入り口を見つけることができるだろう。なお、強いて目印とするなら、足元に(31← →32)と記された四国電力の小さな鉄柱がある。
広い登山道を離れ「島ケ峰」への道にスズタケを掻き分けて数歩踏み込むと、一時ササが切れて、そこには確かな登山道が認められる。2人にとっても初めての道だが確信を得てスズタケのヤブをこいで行く。かつては整備されていただろう広い登山道も今は獣たちの往来を許すのみなのだろうか。
鉄塔巡視路から尾根道に分け入る。たびたびスズタケのヤブこぎを強いられる。
広い登山道から離れるまでがあまりにも快適過ぎたせいで少し物足りなかったが、ようやくいつもの山行きらしくなったなどと冗談を言ってはいたものの、登山口からはもうすでに休憩も入れると2時間あまり、尾根歩きだと帰りも同じだけの所要時間を見込めばそれほど深入りするわけにもゆかない。昼食もまだなのでなおさらである。そう考えていると丁度十字路にさしかかった。ここまで鉄塔巡視路との分岐から10分ほど。正面には島ケ峰の手前のピークが迫っており、道はスズタケの中をまだまだ延びているが、どうもこの先に昼食に適した場所も無さそうに思え、ここを本日の終点としてザックを下ろした。
なお、この十字路を北(右)に下ると川窪の集落まで約30分、また、南(左)に下ると古江の集落まで約50分で至ることができるようだ。共に道はそれほど荒れていなくて、島ケ峰へと向かう道に比べればいたって快適そうである。
峠の十字路。右に川窪、左に古江への道がある。正面のスズタケを行くと島ケ峰。手前の標注には「工石山陣ケ森県立公園」と記されている。
峠にもアセビの木があり、花に誘われていろんな虫たちが訪れていた。
中でも「コツバメ」は比較的珍しい蝶だけに、2人してしばらくその被写体を追いかけたが、残念ながらその小さな身体を鮮明にカメラに収めることはかなわなかった。
右に見えるシルエットは、アセビの花に誘われて飛んできた「コツバメ」。