国見山  1999年5月5日

四国で国見山といえば、徳島県祖谷渓の国見山が有名だが、高知県本山町と土佐山田町をへだてるなだらかな山容のこの山も、四季折々の姿があり、高知県では有名なハイキングコースの山である。
なお、高知県には他にも鏡村に国見山(雪光山)という山がある。

県道267号線(上穴内本山線)の町境にある赤荒峠(あかあれとうげ)に国見山への登山口がある。
付近には国立高知大学農学部の嶺北演習林があり、教官や学生の実験実習などが行われている。
峠の切り通しから登山口にとりつき、山道を歩き始めると快適な登山道が続く。
アセビやツツジやシキミ、ツバキ、カヤノキ、ネズなどが登山道脇にぎっしりと混生しており、カラタチやキイチゴも多い。

赤荒峠
 赤荒峠の様子。左手の山肌を登ると登山口がある。

ウグイスのさえずりを聞きながら進むと、15分程度で登山道脇にある4等三角点の岩場に着く。ここの標高は984m。 右手(南側)には太平洋が、左手(北側)正面には田井山が、その向こうにきびす山などが、さらに向こうには大森山など嶺北北部の山々が、そして遥かには銅山山系の尾根も望める。
この岩場からは山肌の眺めも良く、春の花時や秋の紅葉には彩りが楽しめる。


 4等三角点のある岩場に登り眼下を見おろすと、咲遅れたツツジがちらほら見えた。

岩場から10分ほど、足元のスミレを眺めながら歩いていると水平道でヤマネに出会った。
そっとカメラを近づけたが気配を察して倒木の裏に逃げ込まれてしまった。
さらに10分後にはヤマドリにも出会ったのだが、こちらも大きな羽音を轟かせ飛び去ってしまった。慌ててシャッターを切ったが見事に白い尾っぽさえ写っていなかった。

さて、シキミの人工林を抜け、岩場から25分ほどで国見越えの広場(赤荒分岐)に出た。
ここは、土佐藩の参勤交代「北山越え」のルートのうち、高知県土佐山田町穴内(穴内川の上流部で穴内ダムがあり、この流れは四国三郎吉野川の代表的な支流にあたる)から本山町へ国見山を越えるルートを「国見越え」と呼んでいた。
*「北山越え」の古代官道については、さらに「笹ヶ峰(1016m)」の項を参考にしてください。


 赤荒分岐の一角は広場になっている。

ここから山頂までは少しの間だけ、穴内からあがってきた林道を歩くことになる。
最近車の通った形跡のない林道は空が開け、南には太平洋も見えている。
気持ち良い初夏を満喫していると不意に足元に2頭の犬が現れた。穴内からの車道を使い、犬の散歩に来たという中年の男性と出会い、しばし歓談した。
山は様々な人にいろんな形で親しまれていることが嬉しかった。


 林道上から眺める山肌。春には淡いパステルカラーで彩られる。