黒滝山  2001年8月22日

キレンゲショウマという花がある。
1888年に四国で発見された日本初の新属新種の植物で、他に紀伊半島、九州、広島県などのごく一部にのみ生息する稀な植物である。
その花が私たちはこのうえなく好きである。

8月19日は私たちにとって特別な日だった。
だから、その翌日から休暇をとって私たちの大好きなキレンゲショウマに逢いに行く計画だった。当初の行き先は筒上山。私がこの花と最初に出会った場所でもある。
しかし、迷走する夏の台風が土佐沖を通過して、翌日から高知県の山と海は荒れ模様だった。
思惑が外れた私たちは、それならばと台風から遠ざかるように西を目指し、檮原町に宿泊し2日後の朝、西の黒滝山
(*)に向かった。
ここにもキレンゲショウマの群落があることは文献などで知ってはいたのだが、訪れるのはこの日が初めてだった。
(*)高知県大豊町と徳島県山城町の県境にも「黒滝山(1209.9m)」と呼ばれる山があるので、ここでは西の黒滝山とした。


静かな湖面の天狗池。左手の遊歩道を進むと、奥には休憩所がある。今回の黒滝山はこの天狗池から登る。

これから向かう黒滝山は四国カルスト天狗高原で有名な「天狗森(てんぐのもり/1484.9m)」の西に位置する静かな山である。
山頂は展望もなく地味だが、この山の抱える豊かな植生はつとに知られており、一帯は黒滝山風景林として親しまれている。

この日は天狗池から黒滝山を目指した。
天狗池には高知市方面からだと、国道197号線で東津野村に入り新田(しんでん)から国道439号線を北に向かい、王在家(おおざいけ)で四国カルスト公園線(県道48号線)に乗り入れる。枝ケ谷川を遡り、標高850m付近の左カーブから右手の森林公園(横谷森林公園)に向かう。この分岐には「天狗森林公園」への道路標識や「県立天狗森林公園(生活環境保全林)」の案内板、国指定天然記念物「大引割・小引割」への道標などがある。森林公園の案内板には天狗池やこれから辿る「ヒメユリコース」の簡単な位置関係が描かれている。
標識通り大引割方面に向かい、途中で最初の分岐を左に向かうと
、オオハンゴンソウ(帰化植物)らしき群生を車窓に見ながら、やがて小さな沢を堰き止めた人工の天狗池で車道は終わる。車道は終点の天狗池まで全線舗装されている。

さて、登山口は車道終点の山手側にあり、「横道へ0.4m」の道標がある(横道とは上方を横切る遊歩道「四国のみち(天狗高原へのみち)」のことを指している)。傍らには水源かん養保安林の看板も立っている。


登山口からは緩やかな上り坂が続く。

登山口から、丸太で設えられた土止めの階段を上ると、道の脇にはあちらこちらにヤマジノホトトギスの花が咲いている。
足元には、秋になると真っ赤な実をつけるツルリンドウも一輪だけ咲いていた。


カヤに巻きついたツルリンドウの花。

登山口から5分も歩くと林の中で「横道ヒメユリ平」の道標が立つ最初の分岐になる。
ここは左に折り返して道標通りにヒメユリコースを進んでゆく。


木漏れ日の林をゆく。

ササがきれいに刈り払われて快適な雑木林を登って行くと、やがてササが低くなり、辺りにミルク色の石灰岩が目立ち始める。
最初の分岐から13分後、四国のみち(横道)の遊歩道に出る。十字路の道標には4方向へのおよその道のりが記されている。
四国のみち(天狗高原へのみち)は、吾川村秋葉口から岩屋川渓谷を遡り、大引割峠を越えて天狗高原に至る15Kmあまりの道である。
そのよく整備されて広い遊歩道をまっすぐに横切りヒメユリ平に向かう。


「四国のみち」の遊歩道に出る。道標には左方向に「天狗荘2.2K」、右方向に「大引割3.5K」、正面上方向に「姫百合平0.4K」、そして今歩いてきた方向には「天狗ノ池0.5K」と記されている。

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