さて、三ツ森峠からは東西に明瞭な稜線の道が延びており、西に向かえば平家平、東に向かえば三ツ森山である。
ここで同行の伊藤君は平家平に向かい、私たち4名は目的通り三ツ森山へと向かう。
峠の地蔵の右手を駆け上がり尾根沿いに行くとすぐに送電鉄塔の真下を通り、いきなりの急登が続く。のんびりと林道を歩いてきた身体には少々きつい登りである。
峠から5分あまりで尾根のハナ(端)にでて一旦下り、再び急坂を這い上がる(まさしく這いながら登る急坂である)。
急登を喘ぎながら這い上がる。
辺りにブナが目立ち始めると、樹間からの景色は一歩一歩が確実に標高を稼いでいることを実感させてくれる。
峠から20分あまり登ると正面には大岩が立ちはだかっている。
大岩の左手をまいて岩上に出ると、先ほどまでくつろいでいた三ツ森峠は遙か下方になり、樹間からは平家平のなだらかな山頂が望まれる。ここから見ると、峠から平家平への稜線も案外きつそうに思える。今頃伊藤君はその稜線の中をはぁはぁと息を切らせて駆け上っていることだろう。
稜線には岩場も多く、特に下りは注意を要する。
さて、相変わらずの急坂を再び登って行く。
しんどい上りだが、登山道では幾度か展望も開ける。西の平家平方面は樹間からとはいえますます雄大なパノラマを呈し、南には志遊美谷下流に向かって辿ってきた林道を見下ろしながら、更にその奥には稲叢山から西門山、東門山などの稜線が空と接している。
今は秋なのでなぐさめてくるシャクナゲやアケボノツツジとは無縁でも、しんどくなればそんな景色を胸一杯に吸い込んではまた一歩一歩と登って行く。
登山道から南の展望。中央で志遊美谷の渓谷が吉野川にそそぎ、彼方には東門山から稲叢山への稜線が続く。
しかし、容赦ない急坂に上を見る余裕はなくなり、目線は一点を追い続けながら、右手に持ったステッキに力を入れ傍らの立木を引き寄せては身体を持ち上げてゆく。
急登こそ山歩きの醍醐味?、その割には苦しそうだが、、、。
三ツ森峠から急坂を登ること約30分(休憩を含むと40分あまり)、ようやく三ツ森山の山頂に辿り着いた。
辿り着いた山頂は灌木に遮られ展望はのぞめない。足元には三角点の標石や山名板が立っており、それらを中心に思ったほど広くはないが腰を下ろしてくつろぐ程度のスペースはある。
そのわずかな空間に腰を下ろし、私たちは念願の昼食にとりかかる。
三ツ森山山頂にて。
ところで、三ツ森山は西三森山とも呼ばれる。これは大座礼山を中心にして右に位置する東光森山(東三森山)に対しての呼称であろう。