Tシャツが汗ばんできた頃、寒風山との分岐に出たが、そこからは帽子が飛ばされるほどの強風になった。
休憩無しで約40分後に辿り着いた広い山頂には真新しい案内板(山頂からの展望図)が1基建てられていたが、そのほかは昨年と変わらない。この大らかな笹原にはいつ来てもほっとさせられる。
笹ヶ峰山頂には一等三角点の石標や「笹ヶ峰自然環境保全地域」の看板などがあり、石積みの祠の脇では大日大聖不動明王と金剛笹ヶ峰石鉄蔵王大権現(宗派は真言宗)が、今日も強風に耐えながら祠を守護し鎮座している。
笹ヶ峰山頂。左隅にわずかに見えるのは沓掛山のピーク。三角点脇に黒と白の毛並みで伏しているのは丸山荘の愛犬「クロ」。登山者のお供をしてよく山頂に登ってくれる。
笹ヶ峰山頂からの眺めは雄大で、北には瀬戸内海国立公園の見事な景色が、眼下には水の都愛媛県西条市の街並みが一望である。
沓掛山、黒森山と目を移していけば赤石山系が、そして眼前にちち山が聳えている。
ちち山(父山とも乳山とも、このちち山に対して笹ヶ峰は母山とも呼ばれる)との間にあった例の反射板はやはり撤去されており、辺りにはところどころ赤く色づき始めたコメツツジが愛らしく点在し、赤石方向を遮るものはなくなっていた。
山頂から東を望むと、ちち山が迫っている。この写真にある反射板は最近撤去された。反射板の奥には赤石山系が延びている。
このちち山から東には平家平、三ツ森山へと雄大な笹の縦走路が延びており、転じて、西には石鎚山系の名峰が連なり、南には土佐(高知県)の山並みが幾重にも重なり空に溶け込んでいる。
ひとしきり見事な眺望を楽しんだ後、祠に一礼をして設営にとりかかる。
しかし、強風でアンテナの方向は定まらず、マストも限界近くまでしなり、運用状態は良くなかったので、設営はしたものの運用はそこそこにほとんどが登山客との世間話という有様だった。
山頂から東へは笹の尾根が続き、冠山や平家平へと縦走路が延びている。
更に、運用を始めて間もなく、山伏の一行4名が山頂に登ってこられた。
夏の例祭は1週間前だったのだが先の台風で延びたのだとのこと。
厳粛な祭事を妨げてはと運用を一旦中断し見守ることにした。
白装束に身をかためた屈強な男達が祠の前に座し、護摩を焚きながら吹く法螺貝(ほらがい)やしゃんしゃんと鳴らす三鈷杵(さんこしょ)が四方の山々に響き渡りはじめると、私はその荘厳な儀式に自然、頭(こうべ)を垂れ瞼を閉じていた。
その間およそ1時間。笹ヶ峰が霊山であり神の山であることをあらためて強く感じたひとときだった。
山頂から西の眺望。左手間の寒風山から、伊予富士、東黒森、瓶ヶ森など石鎚山系の名だたる山々が続く。中央奥で雲を冠しているのは、筒上山、手箱山。