鷹羽ケ森 2001年11月27日
秋は高い山からやってくる。
当たり前のことだが11月も下旬になると北の峰々はとっくに紅葉が終わり、それならと手近な山に紅葉を求めてこの鷹羽ケ森にやってきた。
同じ思いの登山者はいるもので、登山口を探していたら2人の女性グループと出会った。この方たちも里の秋を楽しみに鷹羽ケ森にやって来たのだという。
鷹羽ケ森の登山口は伊野町北谷地区と弘瀬地区の2箇所にあり、また、北側の吾北村からも林道を経由して登ることも出来るが、今回私は北谷地区から登り弘瀬地区に下りてくる計画を立てた。
北谷登山口には高知市からだと国道33号線で伊野町に入り、仁淀川橋の手前で吾北村に向かって国道194号線を仁淀川沿いに遡上する。
途中、鹿敷地区で正面に見えている山が鷹羽ケ森である(トップページの写真はここで撮影した)。
勝賀瀬川口地区に入り勝賀瀬橋を渡ってから中追渓谷の看板に従い右折すると、国道から約100mあまりで小さな橋を渡る。登山口はこの橋の上手にあり「登山口」の指標が立っている。また、橋の手前左には数台駐車可能な広場があり、これより奥に駐車可能なところは無いのでこの広場に駐車する。
登山口から赤い矢印のように山の中へと向かう。
鷹羽ケ森の標高は918.9mと、1000mにも満たないとはいえ登山口の標高は約30mしかなく、山頂までの標高差は実に900m近くもあるのでそうそう侮ることはできない。
容易くはないだろう今日の山行きに気持ちを引き締めるように靴紐をぎゅっと結んでザックを背に登山口から道標に従い山手の民家をめざした。
先ほどの女性グループの姿はもうすでに見えなくなっていた。
登山口から左手に側溝を見ながら広い舗装道路を北西に行くと、程なく舗装道路は終わり小さな側溝に鉄の橋が渡されている。
ここで道標通りに右手の民家に向けて直角に曲がる。
更に間もなく正面の建物の壁にも道標があり、ここは左折して左手の民家の裏手を林の中に向かって登って行く。
いよいよ山の中へ。ここまで随所で親切な道標に導かれる。
照葉樹林の中をなだらかに登って行くと、登山口から約5分で右手に立派な若宮様の神社があり、更に5分後に道はユズ畑に出会う。
人の臭いのするのもここまででこの後は静かな山中の歩行になる。
ユズ畑の入り口に設けられた柵のすぐ上方で道は二手に分かれるが、ここは右手に登って行く。登山道を示す赤いテープが立木に付けられている。
ヒノキや背の高いスギの植林の中を登山道はほぼ同じ勾配で上に向かっている。
分岐から10分あまりで登山道は小さな谷を渡り、ここからは谷の右岸(上流に向かって左側)の急な登りである。
道はやや不明瞭だが踏み跡を頼りに這い上がれば、3分あまりで緩やかになって再びはっきりとした登山道になる。
やがて支尾根に出ると右手に大きなヤマモモの木があり、山と渓谷社のガイドブック「高知県の山」によれば南眼下の展望が開けるとあるが、残念ながら現在は樹木が大きくなって展望は望めない。
それでもその少し上の樹間からは木々に遮られながらも仁淀川を見下ろすことができる。
さて、落ち葉を踏みながら尾根道を登って行くと対岸には紅葉した尾根筋がちらほら見えてきて、道はジグザグに標高を稼いでゆく。
登山道にはゴツゴツした岩が目立ち始める。
やがて尾根の張り出しで南に少しばかりの展望が開け、登山道は野趣あふれる岩場を縫うように登って行く。
次第に植生が変わってきて辺りにマツの木が目立ち始める頃、道は水平道になり緩やかに山腹をトラバースする。
そうして登山口から間もなく1時間が経とうとして、ようやく尾根に出て「北谷登山道と弘瀬登山道との合流点」に辿り着く。
ここにも親切な道標が立てられており、その道しるべのそばでは最前の女性たちが一足先に小休止をとっていた。
標高で見るならここでほぼ半分を登ってきたことになる。
北谷登山道と弘瀬登山道との合流点。展望は無いが気持ちの良い尾根は休憩に最適である。道標には上から順番に「鷹羽ケ森山頂へ」「北谷登山口へ」「弘瀬地区」と示されている。
合流点から弘瀬側にもしっかりとした登山道が延びているのを確認して、小休止を摂った後、再び先を行く女性たちを追いかけるように広く快適な尾根道を山頂に向かって歩き出す。この辺りでは静かに歩いているとニホンリスと出会えるかもしれない。
尾根を右に左に縫いながら進んでゆくと、尾根の右手のヒノキ植林の中で大きな岩が散在する場所にさしかかると、左手に「産屋谷経て鷹羽ケ森へ」と書かれた道標に出会う。そばにはコンクリート製の標柱もある。ここまで尾根の合流点から約10分。
ここは産屋谷経由の登山道と尾根伝いの登山道との分岐でもあり、道標の元から上方に見える大岩めざして尾根に取り付くとはっきりした尾根道がある。
しかし、今では産屋谷経由の登山道がポピュラーなのか道標は産屋谷経由の登山道を向いて立てられている。
なお、尾根伝いの道については帰途に尾根を伝って下山したので、後半に詳しく述べたいと思う。
ヒノキの植林の中に道標が立っている。ここから尾根を離れて産屋谷に向かう。
産屋谷に向かい植林を進む。
右上方の樹間からはめざす鷹羽ケ森の山頂が見えている。
頭上に尾根を渡る風の音を、眼下には谷の音を聞きながら、山腹をほぼ水平にトラバースして行く。
炭焼き窯跡を左手に見ると大きな岩の元を通り、植林を抜けて雑木林になる。
なだらかに延びる登山道。
ところで、先ほどから尾根を吹く風に乗って男性の声が聞こえてきているのは、どうやら尾根を行く先発のパーティがあるようだ。
それほど著名な山でもなくしかも平日でもあり、多分一人静かな山歩きかと思って来たのだが、どうして案外賑やかなのは心強いものである。