尾根の分岐から10分あまりで、左手に踏み跡を見つける。
傍の立木には「鷹羽ケ森へ(分岐)」と書かれたプレートが下げられており、この踏み跡を上に向かうと尾根に出るが、尾根への道はほとんど踏まれていない。ここは真っ直ぐに産屋谷へと向かう。
大きな岩やモミなどの配置が気持ちよい林を行くと、やがて大きな岩のそばを過ぎて谷と出会う。
ここが産屋谷との出会いで、先ほどの分岐からはおよそ3分ほどの所にある。貴重な水場では、親切に樋(とい)で水が導かれている。
産屋谷との出会い。清らかな水が流れている。
産屋谷を対岸に渡ると、モミの根元を駆け上がり、竹林の登りになる。
すぐにスギの植林の中に入り、ガレた(石ころなどがガラガラとした場所)道を行く。
この辺りは登山道が少しわかりづらいのだが、立木にピンクなどのテープを注意して追って行けば再び明瞭な道になる。
先を歩いていた女性たちはここで少し戸惑ったようで、ここからは私が先を行くことになった。
さて、左手に石垣を過ぎ、植林に孟宗竹が生えている中を進んで行くと、産屋谷との出会いから10分ほどで小さな谷に渡された丸木橋を渡る。
産屋谷を過ぎて薄暗い植林の中の坂を登る。
登山道は相変わらずスギの植林地帯を延びている。
3度目の谷音を聞くあたりから谷に沿って左側を直登する。ここは少々きつい登りで道も判然としないが、踏み跡とテープを頼りに登って行く。
少々薄暗い林に小さなムラサキシキブを見つけて近づこうとしたら、突然足元の林で大きな羽音がした。キジだった。
小さな谷の丸木橋からおよそ20分も登ると左手に炭窯跡を見てから前方の尾根に回り込むと、山頂から東に派生した尾根まではもう一踏ん張りである。
樹間から仁淀川を見下ろす。奥には太平洋が広がっている。
登山道は植林から落葉小低木類の林になり、ここからは左手に少し登り返して上に向かう。
楽しみにしてきた紅葉だったが、ここももうすっかり終わりだった。
木々はほとんどの葉をふるい、足元には褐色の絨毯が広がっている。
落ち葉の絨毯を踏みながら登山道を行く。
登山道はなだらかに北東をめざして延びている。
めざす鷹羽ケ森の山頂はもうずいぶん後になり、不自然なコースに少々不安になる頃、林をぐるりと巻いてようやく尾根に立つ道標と出会う。
「鷹羽ケ森山頂へ」と書かれた道標がずいぶん心強く感じられる。
この道標からは折り返して、尾根を引き返すように山頂へと向かうのだが、ずいぶん遠回りした分、山頂までは今しばらくの時間がかかる。
とはいえ地図でも見る限りここからはなだらかな尾根道なのでこういう道なら案外楽しい。
あたりを散策している間にすぐ後をついてきていた女性たちはいつの間にか先に行ってしまっていたが、私は特に慌てるでもなくマイペースを保って歩いて行く。と、前方の落ち葉の上をかさかさと何かが動いている。コジュケイの群れだった。
先ほどのキジといい、野鳥たちにとっても秋は忙しい季節なのである。
尾根に建つ道標。落ち葉が登山道を覆っている。