天狗森  2000年5月5日

「運が良ければカモシカが見られるかも?」、この山へ向かった動機はそんな一言からだった。
天狗森のある高知県馬路村魚梁瀬(うまじむらやなせ)はニホンカモシカの生息地として有名である。
ちなみに、馬路村と言えば「ごっくん馬路村」というユズ飲料や「ポン酢しょうゆゆずの村」などで全国的に名高い。
また、千本山(1084.4m)で有名な魚梁瀬杉は、吉野杉、秋田杉とならんで日本3大美林といわれ、その見事な天然杉は高知県の県木でもある。かつて(昭和30年代後半まで)その魚梁瀬杉を運んでいた森林鉄道は復元されて、今では村の観光の目玉となっている。また、坂が多く国内有数の難コースとして知られる「おらが村心臓やぶりフルマラソン」など、馬路村は、人口は少ないが高知県で数少ない「元気のある村」でもある。

さて、今回めざす天狗森はそんな馬路村魚梁瀬にある。
ロックフィルの魚梁瀬ダムを過ぎ、ダム湖をくねくね走り、魚梁瀬大橋のたもとで左折して、谷山林道を行くと鎖止めがある。このゲートの鍵番号は営林署にあらかじめ尋ねておけば教えてくれる。(なお、鍵は時々取り替えられるようなので、鍵番号には注意してほしい!)
チェーンを外して、分岐を右に、前方にかかる天狗橋を渡り、折り返して対岸を登って行く。
ところどころ伐採跡もあるが、さすが村の86パーセントが森林だけあって緑が深い。
未舗装の北平林道をしばらくマイカーで進んで行くと、右にカーブしたところで左手にそれらしき登山口が見つかる、右手には作業小屋がある。聞いた情報では、この登山口は山と野原の会が「山と野原を歩く」というガイドブックで紹介している下の登山口で、現在はあまり使われていないらしい。そのせいか看板が取り除かれたような形跡がある。
現在ポピュラーな登山口はここより更に300mほど上手、左カーブの先にある上の登山口である。上の登山口には天狗森への看板がある。
今回私たちは、この上の登山口から登った。
ちなみに、上の登山口まで、天狗橋から約3Kほどである。


登山口からゆっくりと歩き出す。写真は浜田さん。このHPでは、もうすっかりお馴染みの顔である。

自家用車を登山道手前の広場に駐車(マイカー4~5台程度なら可能)して、ザックを背負った。
登山口の標高は約815m。山頂まで、標高差約480mの山歩きである。


林道の山手を折り返すように、丸太で架けられた階段を登ると、延々と登り坂が続く。
それでも、歩く私たちの周りには、ちいさくてかわいい雲仙ツツジが見事なまでに咲き誇っていて、坂道の苦労などまるで感じない。コメツツジと並んで小さなツツジの代表である雲仙ツツジは、登山道のいたるところで花を咲かせ、虫たちを誘っている。この奥深い山にも豊かな春を見つけた。


白と薄い桃色の2色の雲仙ツツジ、この美しさはデジカメでは伝えにくい。

登山口から5分ほど坂道を登ってから後方を振り返ると魚梁瀬の集落が見えてきた。
登山道の脇には高知営林署が平成3年に設定した「次代検定林」の看板がある。
ここから少し行くと、道の周りは杉の若木林になり、背丈ほどのカヤがはびこっている。
登山道の坂道は昨年越しの枯れたカヤにおおわれて、歩きにくいことこの上ない。
このあたり、特に下山では足元をすくわれるので要注意。

やがて、崩壊跡の枯れ谷越しにモミやヒノキ、スギの古木を右手に、伐採跡を直登することになる。
この急登では陽射しをさえぎるものがなく、夏場は難儀するかも知れない。そんな時は、右手の林に向かう踏み跡をたどれば、少し上でこの道と合流するのだが、やや分かりづらいかも知れないので、直登する道をお勧めする。

登山口から約15分、林をまいてきた登山道と合流し、さらに5分ほど行くとようやくトラバース気味に林を歩くことになる。小さな尾根まで出たところで小休止にした。
5月とはいえ日差しがきつく、木陰での休憩は心地良い。ちなみに、風邪が完治していない浜田さんを心配していたが、思った以上に元気なので安心した。


キツツキに見守られながら林の中を登る。