トップに戻る][9月と10月のCD][11月のCD

★今月聴いてるCD★


ビョーク

◎ビョーク/VESPERTINE LIVE at ROYAL OPERA HOUSE[DVD:Wellhart/One Little Indian Ltd./BBC,2002]アイスランド
 アンコールの「イッツ・イン・アワ・ハンズ」、イヌイット・クワイアーの女性たちによる手拍子付きの民謡で始まる新曲には、マジで涙出ました。音楽もパフォーマンスも映像も、あまりに素晴らしい。ほぼハープのみをバックに歌う6曲目「ジェネラス・パームストローク」あたりからグッと引き込まれて、あとは瞬きも唾を呑むのも忘れるほど見入ってしまった。WOWOWの放送で見て、行かなかったことを死ぬほど後悔した1年前の東京公演とほぼ同じ内容のロンドンでのステージ。これ、生で見たら鳥肌立ちっぱなしのすさまじい体験になってたろうなあ。ビョークのシンガーとしての凄さは映画『ダンンサー・イン・ザ・ダーク』で広く知られたろうけど(あの映画、ぼくは嫌悪を感じるばかりで、最悪でした)、歌と声だけでなく、パフォーマーとしてもサウンド・クリエイターとしても、彼女は剥き出しの野性と澄み切った知性とを完璧に兼ね備えていて、しかもそれを音楽として表現できるトータルなアーティストだ。こんな人、カエターノ・ヴェローゾくらいしか他に思いつかない。あらゆる身振り手振り、からだの動きのひとつひとつまでもが100%音楽。目や顔がときおり見せる“笑み”は、まるで3歳児のように無垢だけど、音楽の根源的な喜びに満ちていて、何度もゾクゾクさせられた。
 フル・オーケストラに、グリーンランドの女性コーラス、ハープ・キーボード・アコーディオン、それにデジタル機材を操って無機的なノイズでサウンドを構築する二人組−−そんな編成でこんなサウンドを作り出し、しかもステージでこれだけの密度と完成度をもって演じてしまうとは。ビョーク、ほんとに恐ろしい人です。圧倒的にお薦め。