復活の世界 Faile(17)「旧作復活ひとめぐり」

この数年間にわたってつづいてきた、旧作の復刻ブームが、ここへきてようやく終息する時がきたように思います。そこで今回は、かつて旧HPで書いた原稿を、もう一度紹介したいと思います。

つまり70年代、80年代作品の復刻が、何年も前から勢いづいていて、まるでその時代の作品への回帰を思わせるような流れが、加速してきていたからです。実はその時代こそが、わたしが放送作家として、一番精力的に仕事をしていた時代だったわけで、その分かかわった作品も、かなり復刻されてきていました。

実は一昨年末に発売になった、「ウルトラの揺り籠」では、「ウルトラマン」の初代ヒロインであった桜井浩子さんと巡り合い、「怪奇大作戦戦」(第4巻)(拙作の「オヤスミナサイ」「ゆきおんな」収録)の時には、そのライナーノーツの制作のために、いろいろと協力することになりました。これまで雑誌の取材などはあったものの、今回のようにフィルムへの収録といった取材は、ほとんどなかったといってもよいのではないでしょうか・・・。

その時に、わたしの作品・・・「オヤスミナサイ」の、主役を演じた、佐々木功さんと再会をしました。彼はその後、わたしがチーフライターを受け持っていた、「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」の主題歌を歌っていたりしたので、お互いに縁があるのですねといった話になりました。

さて話を本題へ戻しましょう。

ライナーノーツの取材の前に、さし当たって、先行している作品の見本盤を見せて頂きましたが、とにかくびっくりしました。初出の時のような鮮明さで復刻されていたのです。わたしにとっては、まさに感動ものでした。技術の進化した結果なのでしょう。とにかくそれをまずお知らせをしておこうという気持ちがありました。

もちろん数年前から起こっていた流れは、わたしにとって決して嫌なことではありません。むしろどちらかと言えば、嬉しいことに入ることでしょう。実写作品にしても、アニメ作品にしても、みな20年から30年前の作品がDVD化されていくのですが、それらの作品のほとんどは、すでにビデオ化、LD化されています。しかしビデオなどは時間がたつと、テープが劣化してしまったり、元のフィルムが劣化してしまったりしてしまうので、ビデオにした時かなり解像度が落ちてしまいます。ちょっと取り出して鑑賞する気が、削がれてしまいました。ところが現在の技術力の進化のお陰で、新作とそれほど見劣りしないほど、鮮度のある作品として甦らせることができるようになっているのです。前述の「オヤスミナサイ」「ゆきおんな」などにしても、中で使ったアイデアや小道具は、どうしても時代の古さを感じさせてしまうのですが、そのドラマとか画像は、実にびっくりするほど初出に近い状態で甦っていました。

その後「ウルトラマン」シリーズの中の「ウルトラセブン」でも「ウルトラヒーロー伝説」が制作されましたが、この時はヒロインであった女優の菱見百合子さんと久しぶりに出会っています。

お陰で人気作品だったものは、ほとんどDVD化されるようになってきているわけですが、しかしそれだからといって、当時のすべての作品が、復刻の恩恵に浴することができるとは限りません。昨今は営業的な意味合いがありますから、実現できるものは、当時の人気作品に限られていますし、復刻される形態がほとんどの場合ボックスという形になります。そうなると必然的に、かなり値がかさむことになってしまうので、どの作品でも出せるというわけにはいかなくなるのです。購買層の関心が高いことや、新たな層が掘り起こせるのではないかといった期待感や、計算が成り立たなくてはなりません。復刻を手がける制作会社も、徒にそれらを発売することはないのです。最低限、その作品を支持する熱気が、高まっているものでなくてはならないでしょう。

それにしても、もう20年も30年も前の作品に、どうしてこんなにも注目が集ってくるのでしょうか・・・。そんなことに興味が湧いてくるようになりました。もちろん面白いとか、美しいとか、感じるものがあるとか、技術的に見所があるとか、更に、丁寧に作られているかといった、チェックポイントがいろいろとあると思うのですが、その制作環境が、現代のそれと比べて、旧作時代が抜群によかったと言うわけではありませんでした。特にアニメーションはそうです。

そんな中で最近感じることは、何と言ってもそれに参加している、スタッフの思い入れに、かつてと現代ではかなりの温度差があるということです。かつての作業と現代との、どちらの時代の作業にもかかわった人間として断言できることは、圧倒的にかつてのスタッフのほうが熱かったと思います。それだけは間違いがありません。そしてその分だけ、その作品を支持し、支えてくれた視聴者・・・ファンの思い入れも深く、濃かったということが言えるのではないでしょうか。

それに比べて現代のそれは、あまりにもそういった雰囲気が感じられません。制作にかかわるスタッフも、その作品を支持するファンも、あくまでも一過性のもとして、割り切りすぎているのではないでしょうか・・・。どうもそのあたりが、勢いを分ける分岐点になっているとしか考えられないのですが・・・。

当時のテレビ、映画の中心的な視聴者であり、観客は、現在すでに40〜50代になってきています。激動する社会の最前線に立ちながら、ふと自分の青春時代に立ち返ったり、思い出に浸ったり、活力源にするために、かつて感動したり、わくわくしたり、興奮したりした作品を、宝物として手元に置いてきたくなってきています。そんなことから、青春真っ只中にいた証として、少年時代の思い出として、旧作の復刻を待ち望んでいるのでしょう。更に彼らは、高額のDVDを購入することができる、余裕を持った年齢に達してきたという有利な状況にもあります。たしかにそれらの作品群は、多感な時代の彼らを支えた、身近な存在であったものだったに違いありません。現在その時代の作品を支え、讃えようとする熱意が、次第に高まり、勢いづいていくのも、無理のないことです。ところが彼らは、好きということだけで満足できる年齢でもなくなってきてもいます。付加価値が必要になってきているのです。

一体彼は何を付加価値として求めているのでしょうか・・・。

それはかつて、ほとんど表舞台には出て来ることがなかったスタッフを、表舞台に引っ張り出すということでした。つまり作品を作ったスタッフを登場させることで、その制作にかかわった人のぬくもりまでも、感じたくなってきているのではないでしょうか。旧作のDVD化と同時に、その付加価値として、ライナーノーツを添付することを希望するようになってきたわけです。

そんなわけで、わたしもそれに、駆り出される機会が多くなったのですが・・・ついにこうした流れに、ひと区切りつける時が来たように思います。

最近になって、人気があった旧作を、まったく新しいスタッフで制作するということが多くなってきました。同じ原作のものを再び作るというのは、如何にいい原作が現れないということでもありますが、とにかくかつての人気作品の復刻ブームの流れが終わって、また新たな時代に入ったということにもなるのですが、果たしてこれから何年か先に、復刻を熱望するような動きが起こってくるほど、視聴者をのめり込ませるような作品にすることができるのか、大変興味深いものがあるのです☆



今回は旧HPの原稿に、加筆、訂正したものです。

佐々木功さんとの写真
桜井浩子さんとの写真
菱見百合子さんとの写真