広がる世界 Faile 9 「思わぬ出会い」

誰にも、思わぬところで、思わぬ人に出会うということがありますね。今回はそんなお話なんです。

昨年、秋のことでした。

神戸市主催の神戸ビエンナーレにおいて、「ロボット・アート部門」での審査員をした時のことなのですが、たまたま大会が終了した後で、丁度その時公演中であった、神戸舞踊芸術祭を観に行くことになりました。

ビエンナーレの主催者の一人が、その舞踊祭へ招待されて公演する韓国バレー団と親しいということで、その方に同行して観劇にいくことになったわけでした。

ほとんどは日本の舞踊の集団の公演だったのですが、その中で神戸市と関係のある、韓国の光州市から来たバレー団の若手が招かれて公演をしたわけです。

その公演後、我々の仲間である神戸ビエンナーレの主催者の一人が、バレー団のリーダーと若手バレリーナをお食事に誘ったのです。

どうやら光州市のビエンナーレに神戸氏が協力したことが縁であったということでしたが、関係者同士で、わたくしたち初対面の者について紹介をしあったのですが、わたくし等の紹介があってから、ちょっと様子が変わりました。

若手の男女バレリーナたちは、アニメーションの大ファンで、男性のほうは、「マジンガーZ」の熱烈ふぁんで、番組を見ないと学校へ行かなかったというほどだったということで、一気にヒートアップしてしまいました。もう一人の女性のほうは、何と「銀河鉄道999」の熱烈ファンだったのでした。

わたくしがその番組を書いていた脚本家であるということを知って、それからあとは、喫茶店へ移ってからも、その興奮は冷めやらず、サインを求められたり、写真を一緒に撮ったりといった状態だったのですが、その話の中で知ったことがありました。 つまり「マジンガーZ」の原作者は永井豪氏であり、「銀河鉄道999」の原作者は、松本零士氏であったということを説明しても、どうも反応がはっきりとしないのです。そこで番組の放送状態が、どんなものなのであるかを訊いてみたのですが、いささかびっくりしてしまいました。

どうやら韓国では、スタッフ名は切ってあり、すべて韓国で制作されているものだと思っていたらしいということなのです。従って、原作者が誰で、脚本家が誰なのかも判らないはずです。 わたくしが、あの二つの番組のいづれにも関係があり、脚本を書いていたのだという説明をしても、まったく異世界の人である彼らにはまったく理解できなかったようです。彼らはわたくしを、まるで原作者のような気持ちになってしまったのでしょう。何度か、原作者があって、脚本家があって、そのシナリオを書くのが脚本家なのだという説明をしても、どうやら理解することはできなかったようでした。いささか彼らの興奮ぶりには、びっくりすると同時に、照れくさくて仕方がありませんでしたが、番組関係者としては大変嬉しい反応であったことは、間違いありませんでした。

それにしても今回のめぐり合いは、まったく予想もしなかったことで、嬉しいことではあったものの、韓国での放送のされ方に、問題があるのではないかということに気づかされたりもいたしました。こういったことは恐らく中国でも、人気の日本製のアニメーションが、どういう風にして放送されているのか、いささか心配になってきます。

思わぬファンとの出会いには嬉しさがあったものの、一方ではいささか戸惑いとも出会ってしまったというお話でした。

それにしても、日本のアニメーションが、韓国、台湾、中国などで、大変な人気になっているという現状は、大いに喜ぶべきなのだと思っているのですが・・・。一度、後進の作家たちとも話してみようとも思っているところです。☆

韓国バレリーナとの写真