交わる世界 Faile 2 「座右の銘」
何事についても、平静を保って生活するということは、大変難しいことです。心が激しく揺れる時に、自制していくということが、如何に難しいことかと考えたりします。
学生時代はいいとしても、世の中へ出て社会人として生活をし始めると、時代の変化ということもあるし、仕事上の変化や、個人的な人間関係の変化もあるし、そんなこととはまったく関係のない、予想もしないことに出会ったりするものです。
そんな時に、まったく平静に処理できればいいのですが、ほとんどの人は、揺れ動くことでしょう。それでとんでもない事態を引き起こしてしまうということもあります。
そんな時に、揺れ動く自分を支えてくれるものが、あなたは身近に存在していますか。
もちろん相談や悩みを持ちかけることの出来る親族が身近にいればいいのですが、すでに独立していたり、家から離れて生活をしている人もいるでしょう。そんな時、自分ではどうにもならない揺れ動きに耐えていく時ほど辛いことはありませんね。
そんな時に、ちょっとした言葉でもかけてくれて、それが支えになるようなものが、身近に存在していたらというようなことを、しみじみ考えたりします。
特に、自分の言動に対して、厳しくたしなめてくれるようなものを持つことは、なかなか持ち難いものです。
そんな時のために、是非、お勧めしたいのが、「座右の銘」というものを持ちましょうということなのです。
自分が不運の時の支えになるものも大事ですが、今回は得意の絶頂の時に、ふと今の自分を見つめなおすきっかけとなるようなものがあったらと思います。
人間どうしても、勢いに乗っている時というものは、人の忠告などというものを、素直には聞けないものです。そのために、知らず知らず、さまざまな過ちを犯してしまうものです。そして、せっかくそれまで積み上げてきた実績さえも無為にしてしまうようなことがあります。わたしの身近なところでも、いくつかの大きな出来事がありました。
わたしはそんな時・・・つまり勢いに乗って猛進してしまいそうな自分を、自ら制することのできるようなものとして、密かに「座右の銘」というようなものを持っていたらと思うのです。そんな時、どんなに救われるかしれないと思うのです。
お陰さまでわたしは、映像時代にもヒット作が多かったし、小説でも本格的に転身した第一回作品が大ヒット作になって、ロングセラーともなりました。原稿書きに追われながら、サイン会も全国各地で行われて、新幹線、飛行機を使って、めまぐるしく移動しながらスケジュゥルをこなしていたことがあったのですが、ある方の大きなパーティへ呼ばれて行った時に出会った、京都の大きなお寺の大僧正が、さり気なくわたしにプレゼントしてくれたものがあったのです。
朱塗りの枠の扇でした。
そこにはこう書かれていました。
「花 開 蝶 自 来」
これを普通に読み下すとこうなります。
「花開けば、蝶自ずと来る」
つまり策を弄することはない。やることをちゃんとやっていれば、ファンは自然にやってくるものだということなのです。
ごく自然でいなさいという進言だったと思います。
この言葉を頂いてから、どんな時にもじたばたしなくなりました。
一生懸命、自分のやるべき仕事をやっていれさえすれば、ファンは自然に集まってくるということを、心の内に秘めているようになりました。いつも、どんな時にも、淡々と、与えられた作業をしつづけていようと、思うようになりました。これは物書きという仕事をする者としては、大変貴重な贈り物だったように思います。
あれからわたしは、どんな時にも、この言葉を大事にしていまです。まさに、座右の銘にふさわしい言葉なのです。
あなたも、どんな時にも、自分を支えてくれる、こんな言葉を持っているといいですね。是非、そんなものを、お持ちになることを、お勧めしたいと思います☆