交わる世界 Faile(51)「消える歴史」

墨東の新観光名所になったスカイツリーは、いよいよオープンの日取りも決まって、展望台へ登る料金も発表になりました。しかししばらくは、行ってみることも容易ではないだろうと思います。

実はあの辺りは、私のテリトリーだったのです。

高校もごく近くにある都立隅田川高校にあったので、友人たちもその周辺に沢山いましたので、ごく日常的に行き来していたところでした。

私の実家も、あのあたりから荒川に向かって行った東向島というところにあって、小学校、中学、高校と、ほぼあのスカイツリーの近くで過ごしてきたことになります。

下町の雰囲気を、精一杯身につけて育ったところです。

スカイツリーの建ったところは業平橋といって馴染んでいたのですが、これからは「スカイツリー駅」に変わるのだそうです。こうなってしまうと、まったく歴史の世界からはさよならということになってしまいます。

この近くには「言問橋」という橋もありますし、その土手には老舗「言問団子」があって、店名と同じ「言問だんご」を商い、近くの長命寺の桜餅と共に、昔から親しまれてきているんです。

いずれの場合も、実は平安時代の貴族で、古今集の三十六歌仙の一人といわれる、在原業平の「伊勢物語」での「東下り」に因んだ名称です。業平が隅田川に多く飛んでいた都鳥に、恋しい人の健在かどうかと問いかける歌が残されています。こんな話もさっさと押しのけていってしまうのでしょうか。確かに判り易くはなるのですが、土地に染み込んでいる歴史への親しみが拭われてしまうことには、どうしても抵抗を感じてしまいますね。

新しいものへの関心、新しいものの吸収ということでは大いにいいのですが、その土地に染み込んでいる歴史の色合いだけは、少しでも大事にしておきたいものです。

こういったところは、全国的にかなりあって、いささか考え込んでしまいます☆