観る世界 Faile 4 「日本アニメ放送禁止の周辺」

今年に入って見た新聞の報道記事の中に、思いがけないものがあって、ちょっと切り抜いておきましたので、そのことについてのお話をすることにいたしました。

アニメーションの人気は、今や全世界的な広がりを持ち始めていますが、近くの中国でも大変関心が高く、自国でも制作をしているのですが、どうも人気が今ひとつで、振るわないようなのです。そこで政府機関では、どこの国のアニメーションを見たいですかという調査をしたようです。するとその結果は、中国の関係者にとって、かなりショッキングなものだったのです。

日本のアニメと答えた人が68%、自国中国制作のアニメを見たいと答えた人は、わずかに16%にとどまってしまったというのです。その結果中国政府は、ついに9月1日から、日本のアニメを放送することを禁止してしまいました。さすが共産国のやることで、こういうことまで簡単に規制してしまうのだなと、改めて考えてしまいました。自国の産業を保護するためだとは言っても、文化の面でこんなことをしては、却って逆効果になると思うのですが・・・。文化の遅れという焦りもあるのでしょうか、最近中国のアニメ関係の会社は、日本のスタッフを確保しようとして、会社ごと雇ってしまうという暴挙に出てきています。それが微妙に日本のアニメーション制作会社に影響を与え始めているのです。現在日本では、アニメブームという影響もあって、80〜100本という数のアニメーションが制作されているのですが、スタッフ不足は言うまでもありません。その一つの原因に、中国による強引な人集めが上げられています。

今や日本を代表する文化の一つにまでなっているアニメは、産業としても注目されている存在になっているのですが、それだけ制作条件が改良されて、近代産業になっているのかというと、どうもそのようにはなっていないのが現状なのです。作業の厳しさはまったく変わらず、昔から言われつづけている職場の3K状態はそのままだといいます。しかも低賃金なために、夢を見て入社して来た新人たちは、間もなく辞めていくことになってしまうというのです。

それには昨今の若者の気質もあるようで、どんなことがあっても、好きなアニメーションをやりつづけたいという人は、ごく少ないといいます。会社もようやく制作のノウハウを教え込もうとする頃になると、ぱっと辞めていってしまうというのですから、スタッフ不足は慢性的なものになってしまうわけです。

しかも困ったことに、ちょっと有能なアーチスト、スタッフにでもなると、会社から離れて独立。スタッフを引き連れて自分の会社を作ってしまうのです。

中国はそんな有能なスタッフだけを引き抜けなくなってしまうので、会社ごと雇ってしまうということになってしまうわけなのです。

かつてわたしが関係した「宇宙戦艦ヤマト」などの場合、それぞれ得意な分野から有能なアーチストを呼んで、スタッフを編成することができました。今や、そんなことは夢にすぎません。前述のような事情があって、それでなくても足りないと言われるスタッフが、更に足りなくなってしまっているのです。日本のアニメの人気が世界的な広がりを持ってきていることに、ただ喜んでばかりはいられないという現実があるのです。そしてもう一つ、世代のバウムクーヘン化という問題もあると思います。

つまり昭和一桁世代前後の旧世代、団塊世代、フォーク世代、団塊ジュニア、自由奔放世代、自己中心世代、現在の20代を中心とした新世代というように、現在はまるで洋菓子のバウムクーヘンのように、世代が細かく分かれてしまって、それぞれまったく違った価値観を持ち、ライフスタイルを持っています。

それだけに制作者も、それを観る人も、それぞれの世代の者に限られるようになりました。所謂オタク番組といわれるのは、現在の中心的な制作者であり、視聴者が生み出したもので、他の世代の人々が、それにのっているかどうかは問題です。

営業面にもその影響が現れてきていて、自分の世代が生み出したもの以外のものには、ほとんど興味を持ちません。その結果、かなり苦しくなっている面もあるようなのです。かつてのように、少しでも多くの人々によって観てもらい、少しでも多くの人に買って頂くという考え方は、成立しなくなってしまったわけです。そうした問題の他に、こうした制作者と視聴者の関係が細分化されてきた結果、大きな問題にぶち当たってしまっているのではないでしょうか☆