観る世界 Faile 5 「未完成作品展覧会」

仕事の世界では、予期せぬ出来事が次々と起こるので、特別びっくりすることもありませんし、そうしょっちゅう驚いていては生活していくこともできません。しかしそれにしても、予定が変更になるということが、たびたび起ったものです。

その中には、制作する予定で執筆していた作品が、さまざまな事情で制作できなくなってしまったということもかなり含まれています。つまりボツになってしまった脚本もかなりあるということなのです。

それらの作品については、脚本家として、大変愛着があるものですが、それでもあまりそれにこだわっていたところで、大芸術作品でもない限り、突然息を吹き返して制作が行われるということもありませんから、時の経過と共に忘れてしまうことになるものです。

しかし・・・わたしは、それらの未発表作品・・・はっきりと言えば、ボツになった脚本というわけですが、それでも捨ててしまうことは出来ずに、保存してあったのですが、それが思いがけないことで復活することになりました。つまり日の目を見ることになったというわけです。とは言っても、それが作品化されることになったというわけではありません。

実は円谷プロダクションから連絡があったのですが、「ウルトラセブン」の四十周年の企画イベントとして、今年の夏休みに向けて、それらの未発表作品の展覧会を行いたいということなのです。

昔だったら、このようにボツになってしまった作品の脚本が、日の目を見るということなどはなかったはずですが、昨今は実に不思議な時代になったものです。

わたしの未発表作品として、「半人間」という作品を展示したいという申し入れでした。

これは水物といって、特撮にプールを使わなくてはならいことから、その予定からはずれてしまうと、折角ですが次の機会にということになってしまうのです。つまり時期をはずれてしまうので、結果的にボツと相成ってしまうということなのです。

この時は、わたしが円谷プロダクションへ原稿を出した時に、すでに水物と言われる作品の脚本が四本集まってしまったのでした。この頃は、ほとんどプールを使用する作品は、四本まとめるというやり方をしていましたから、わたしの「半人間」は一歩提出が遅れてしまったというわけです。

更にもう一本の未発表作品があります。「赤い群獣」というもので、これはスズメバチの巣から、一斉に襲撃してくるというもので、現代であったらCGで簡単に処理できるものであっても、当時の技術的なレベルでは、とても蜂の襲撃を映像化できないということで、ボツとなってしまったものでした。

そしてもう一本は、「ウルトラセブン」ではありませんが、「ウルトラマン」の16話に制作が予定されながら未発表作品となってしまった、「東京危機一髪」というものがあります。汚れた空気を吸って成長するガス怪獣が登場して来る作品で、人間がそれを利用して町々の空気の正常化に利用しながら、やがて怪獣は汚れた空気を吸いすぎて巨大化してしまい、人間たちの脅威になったということで始末してしまうという、現代文明の批評にもつながるいい作品であったと思っているんです。今でも残念に思っている作品なのですが、これは汚れた空気を吸い込むということで、それを映像として表現し難いという理由で作品化が出来ずに未発表ということになってしまったわけです。

こんなわけで未発表・・・ボツ原稿とはいっても、決して出来が悪くて制作されなかったというわけではなく、それ以外の理由でボツになるケースが、かなりあったのです。

このような未発表作品が、このような形で展覧会へ出品されるということは、大変名誉なことで、作品自体も名誉回復の機会に、なるのではないかと思っているのです。

是非、機会がありましたら、展覧会場を覗いてみて頂きたいと思っているのですが・・・。

時と場は7月27日〜9月2日まで、東京の池袋サンシャインです。

このような企画が実現するということ事態前代未聞なのではないでしょうか。とにかくわたしの家の書庫で、眠りつづけていた脚本が、よやく日の目を見ることが出来ますので、是非対面してやって下さい☆

ウルトラマンセブンの脚本「半人間」の写真
ウルトラマンセブンの脚本「赤い群獣」の写真
ウルトラマンセブンの脚本「東京危機一髪」の写真