観る世界 Faile(19)「古代守とスノークの死」

古代守とスナフキンの死と言っても、お判りにならない方がいるかもしれない。つまり声優広川太一郎がつい最近、亡くなったのである。私にとっては、思い出の人であることは間違いない。

古代守が登場する作品といえば、「宇宙戦艦ヤマト」の主人公である古代進の兄で、地球が謎の敵であるガミラスの攻撃を受けて、瀕死の状態になった時、男らしく最後まで戦うと言って戦いを挑み、乗っていった戦闘機と共に、爆死するという男っぽい役割を演じた声優です。劇中では最後の最後に、イスカンダルのスターシアによって助けられて、生き延びていたのだが・・・。やがて彼は弟である古代進と巡り合うが、地球へ帰ることに同意せず、そのままスターシアとイスカンダルに、残ってしまうという運命を辿ることになる。

男のロマンを演じつづけた人でした。

「宇宙戦艦ヤマト」といえば、今、宇宙ステーションで活躍している星出宇宙飛行士は、この作品と「銀河鉄道999」の影響を受けて、宇宙への憧れを抱くようになったということを語っていました。

そのどちらの作品も、メインライターとしてかかわっていた私としては、大変嬉しくなる報道でしたが、そんな彼の憧れの一部であった作品の、一人として活躍していたのが広川太一郎だったわけです。

今頃、宇宙ステーションへでも訪ねて行って、星出氏と談笑しているかもしれませんね。

彼が演じた作品で思い出に残る作品と言うと、やはり「ムーミン」を挙げなくてはならないでしょう。

「ムーミン」という作品は、親子で楽しめる、大変平和で心豊かになる、ハートウオームな作品でした。そんな中で、いささか特異なキャラクターを演じていたのが広川太一郎さんでした。

私にとって忘れられなかった作品の一つといえば、「ムーミン」というものになるでしょう。彼はスノ―クという役割を彼が演じていたのですが、もちろんこの作品の主人公はムーミンであり、その家族が中心だったのですが、妹のノンノのムーミンが接近するのに、いろいろと口出しをしてくる、いささか理屈っぽい兄貴の役割を演じていたのです。

登場人物の中では、得意な存在で、村の仲間の中では、いささか厭味なキャラクターであったかもしれません。そんな役割を、実に軽快にこなしていたように思います。

だんだんこうした役割をこなせる人が、少なくなっていくように思えて、残念でなりません。

「ムーミン」という作品と言えば、それだけでなく、わたくしにとっては、忘れることのできない理由があるのです。やがて「宇宙戦艦ヤマト」を書くことになる、きっかけになった作品ということになるからです。つまりドラマ畑にいた私が、その企画を書いたことで、その結果アニメーションを書くきっかけになったという作品だからです。

私のアニメーションの歴史の冒頭を飾る作品と、アニメーションの歴史を変える作品の、いずれにもかかわった声優さんということになるわけです。

このところ世代を共に生きた人々が、この世から去って行ってしまうということが、つづいています。思い出が、一つ、また一つと消えて行ってしまうことは、大変残念です。

一つの存在感が消滅して、また新たな存在感となる者が誕生してくるということは、世の習いだとは思いながらも、残念でなりません。ご冥福を祈るばかりです。☆