観る世界 Faile(21)「女嫌いなのかな?」

思いがけないことを、突然訊かれたりすると、一瞬返事に詰まってしまうものです。

実は今回お話するのは、そんなお話です。

つい先日のことですが、某出版社から取材に来られた編集者と雑談を始めた時のことでした。

「横山先生は女嫌いでしたか?」

あまり思いがけない質問だったので、一瞬返事ができませんでした。 その日の取材は、確かに横山さんと一緒にした作品のことについてのことだったのですが、肝心な取材が終わったあたりで、気楽な対話になった時に、記者から飛び出してきた質問が、それだったのです。

小説を書く者であろうと、映像作品を作る者であろうと、そしてマンガを書く者であろうと、描くのに得意なキャラクターと、どうも不得意なキャラクターがあるものです。

アニメーションを書いていたこともあって、いろいろな漫画家と出会いました。女性漫画家は別として、手塚治虫、横山光輝、松本零士、石森章太郎、永井豪氏などの男性漫画家との出会いと、仕事での付き合いがありました。それぞれ人気作家ですから、その作風には特色がありました。しかしその作家の日常生活まで知り尽くしているということはありません。そんなことは、とっくに知っているはずなのに、先日やって来た某出版者の雑誌編集者は、突然思いがけないことを訊いてきたのです。

「横山先生は女嫌いでしたか?」

わたしは一瞬言葉に詰まいました。そしてしばらく、かつてかかわったアニメ作品を、あれこれと思い出していたのです。

そうか。

はじめて気がつきました。

「鉄人28号」「六神合体ゴッドマーズ」を、どう思い出しても、女性らしい女性は出てこないし、もちろん主人公とかかわりをもって登場する、重要な役割を持った女性などというものは、まったく登場してきません。

話もまったく女性を必要とするような展開にはなっていません。

「横山先生は、女嫌いだったんですか?」

漫画に詳しい記者が、疑問に思うのも止むを得ないと思いました。

さきに挙げた男性漫画家は、それぞれその人らしい女性が登場して、読者を喜ばせるストーリー展開がありましたし、そのテレビ化に当たって、脚本を書く私たちも、書く楽しみを感じながら、作業をしていたものです。しかし改めて訊かれると、確かに横山さんの作品に関しては、女性は縁がありませんでした。

果たして彼が女性嫌いなのかどうかという、私生活に触れるようなことについての質問には、お答えできないで終わってしまったのでした。

これまでそんなことには、まったく気がつかないまま、仕事をしつづけてきてしまったことには、いささか恥ずかしいような気持ちになってしまいましたが、そのへんのことは、ファンの方が詳しいのではないでしょうか。むしろそういった人たちにお任せしておいたほうがいいのかもしれませんね。☆