観る世界 Faile(42)「ホームカミングについて」

「ウルトラマン」の推進者であり、「バルタン星人」の創造者であり、「金曜日の妻たち」のプロデゥサーであり、脚本家、演出家であった飯島敏宏氏が、久し振りに映画を撮りました。

かつて私もお世話になって、いろいろな作品を書きましたが、ウルトラマンの「ミロガンダの秘密」「無限へのパスポート」、ウルトラセブンの「セブン暗殺計画」怪奇大作戦の「ゆきおんな」「オヤスミナサイ」などという作品は、すべて飯島氏の監督作品です。

今回は五時から男といわれて人気を得た高田純次が、定年退職をした主人公の日常と、新たな生きる目標を見つけていく人物を演じて、心温まる作品になっています。

おおむね定年退職をした後の男性たちは、いきなり居場所を失ってしまいます。みな必死で働いて、家庭を支えてきた人たちなのですが、隣近所の人たちとの接触もほとんどありませんし、何をどうすればいいのかも判らずに腐って行ってしまうケースがかなりあるようです。この映画では、暫く自分の置かれた立場に戸惑いながら、やがて同じような思いで生活している人たちと交流するようになり、やがて熟年パワーを結集して、沈滞していきつつある年寄りの多くなった町に、活気を取り戻していく話です。

かつて「金曜日の妻たち」で新しい時代の生き方を歌いあげた町も、時代の推移で老人の町となってしまって、活気を失っていきつつあるところが、かなりあるのではないでしょうか。

今回はかつて飯島監督が制作した「ウルトラマン」「金曜日の妻たち」の出演者たちが、みなシニアとなって、活き活きと登場人物を演じています。あのヒーローが、あのヒロインが、みな健在で動いているのも興味でしょう。更に町のさまざまな同好会で楽しむ人々も取り上げられていて、実に楽しく楽しめ、ほっと心が潤うような映画になっています。良質のエンターテイメントというのはこういった作品のことをいうのでしょう。昨今の映画とは、ひと味違った作品作りを下飯島監督に、拍手を送りたいと思っているのです。

是非。かつて飯島監督が送り出した作品で楽しんだ方は、その出演者のその後の姿も確認するためにも、是非劇場へ足を運んでみて下さい。11月から公開のようです