思う世界 Faile(26)「お別れ考」

高齢に達した証でしょうか、このところ仕事で出会った人、親しくお付き合いした人、これからいろいろと出会いたいと思っていた人の親族、友人から訃報が届きます。

特にパーティなどで出会ってから、毎年決まった日に出合って、親しくして頂いた方からの訃報に関しては、とても残念でなりません。

仕事関係や、友人関係の方々については、何らかの連絡が絶えず入ってくるので、その方の近況はおぼろげにでも判っているのですが、パーティなどで出会う人に関しては、それほどその人の家庭環境にまで入り込んで話をするようなことがないので、その人などの親族などから、突然訃報が届いた時には、ちょっとびっくりするようなことがあります。

つい先日のことなのですが、毎年ある人の新年会でお会いする方の親族から電話があり、毎年で合っていた方が亡くなったという知らせでした。そしてその方は、故人が私の年賀状を大事にしていたので、連絡させて頂きましたと言ってこられたのです。

是非、お出で頂きたいということでしたので、快く承知いたしました。

連絡していらっしゃった方が誰なのかも判りません。

とにかく故人のために、出かけることにしたのでした。

日常的にはお付き合いもないかたでしたが、翌日、通夜の場へ出かけて行きました。そこではじめて、故人の特別な事情を知ったのでした。

はじめは戸惑いだったのですが、やがて衝撃に変わってしまいました。

故人はすでに離婚していたのです。

そこには奥さんの姿を見ることもありませんでした。

それらしい方が私に挨拶をされる方もなく、戸惑っていたのですが、無理もありません。親族席に座っていらっしゃった方々も、家族ではなかったのでしょう。ご挨拶もどこかに白々しいものがあって、わざわざ通夜においで頂きたいと、声をかけてこられたのは、誰だったのかと、複雑な思いで通夜の儀式を見つめていたのでした。

テレビドラマの関係とはいっても、その主役であったN氏が、たった一人見受けられただけという、如何にも寂しいものだったのでした。しかも数年前に、新年会へ連れて来た娘さんも、通夜の場にはいなかったようでした。

何があったのか、一切判りません。

故人と家族の官が、どのようなものであったのかも、まったく判りません。

その説明をして頂ける方もいらっしゃいませんでした。

どうも親族と言われる人たちは、故人の家族ではなく、親戚縁者だったのでした。

映像関係ということで、新年会では話をするようになっていたのですが、そうした家庭の状況には触れたこともありませんでしたし、娘さんを連れて来られた時も、ごく普通に紹介をしただけで終わってしまったのでした。

その日の通夜の帰り道では、いささか心につかえるものがあって、複雑な気持ちになっておりました。

みな当り前のような顔をして、心の内に起こっている様々な問題や、葛藤については口に出さないものですが、今回のようにパーティでの出会いだけのお付き合いであった人の家庭の事情にまで触れるようなことはないのが普通でしょう。

その説明をして貰えないまま、現実の状況を見せられてしまったような気がしました。

人はみな何事もない顔をして暮らしていますが、それぞれ人には言えない事情を抱えながら生きているのだということを、つくづく感じさせられた出来事でした。

故人は私と会っている時、どんな気持ちでいたのであろうかと思うと、胸が痛むばかりです。故人の冥福を祈るばかりです。

あなたは、あなたのすべてを打ち明けられる人を持っていらっしゃいますか。

いえ。その前に、お互いに庇いあえる家族を、持っていらっしゃいますか。

いずれにしても人とのコミュニケーションが、大変大事な時代になったものですね☆