思う世界 Faile(57)「きりがないから」

若い人は、普通、前へ、前へと向かっていくものです。ほとんどの場合、その活力で、未来に向かって進んで行くものです。 それに対して歳を重ねて行くと、後ろを振り向くことが多くなっていきます。

不思議にそうなっていきます。

前に向かって行こうとする若い人は、そういったことを訊かされることは、とても嫌なことです。

どうしてもぶつかることが多くなります。

明るい前方、可能性が、無限に広がっている未来へ向かって行こうとしているのですから、過去に囚われたくないと思っています。

むしろ少しでも流れ去った時間については、忘れたいし、捨て去りたいものです。それに対して年配者は、次第に歩いて来た自分の軌跡を振り返り始めます。

時には、それからもっと昔へ、昔へと辿って行ってしまいます。その中で経験したこと、体験したことの中に、多少でも楽しかったこと、忘れていた貴重なことを探して、大事にしようとし始めます。いつまでもいつまでも、見つけ出した大事なものを温めて行こうとします。

そんな姿を若い人は忌避するでしょう。未来には限りなく夢がいっぱいあるのに、どうして過去の残骸の中に埋もれてしまった宝物を探しているような生き方を、認めるわけがありません。 そうした両極の生き方を考えているうちに、前を見つめてもきりがないし、後ろへと辿って行ってもきりがないということにたどり着きました。

未来へ未来へと突き進もうとするのも、過去へ過去へと辿っていくのもきりがありません。時の流れのマジックなのでしょうか。その両極の中で、私たちは時に前を見たり、後ろを振り返ってみたりしながら、よちよちと歩いているのですね。

どちらも行き過ぎると失敗してしまいます。

そんなことを考える今日、この頃です☆