知る世界 「桂川日記」(20)「上も下も問題あり」

地方の小都市、町、村などでは、時代の進化に合わせて、生活の場を改革していきたいというところが多いと思いますが、それは結局、これまで遅れていたところを新しく作り上げていかなくてはならないわけで、それには建設という問題が不可欠です。しかし、小都市には、小都市としての悩みがあって、予算が思うようにならなくて、その希望が叶わないというところも多いように思われます。

しかし・・・です。

東京などは、高い建物が次々と登場すると思うと、逆に下へ下へと地下へ伸びていく建設が盛んで、次第に昔よく見ていたSF小説やコミックの描き出す未来都市の姿と変わりなくなってきています。

上に空地がないとなれば、下へ下へというわけで、何本もの地下鉄が走り回っています。エスカレーターを使っても、ホームへ届くには、かなりの時間がかかるくらいです。

それでは上ではどうかというわけで、東京タワーを凌ぐ高さのタワーが、墨田区に建設が発表されました。

とにかく大きな都会では、どこでもこうした問題とぶち当っています。町をよりよくしていくということでは、どこでも難しい問題に直面しているようなのですが、それでは地方の町は簡単に開発が可能かというと、どうも簡単にはいかない事情があるようです。その代表的な町として浮かび上がってくるのは、古都京都です。ここでは、上へ伸びることもできないし、下へ潜っていくこともできない問題があって、建設が不可能になっているんです。

京都の大学へ通うようになって知ったことなのですが、流石に千年の都であったところらしい問題にぶつかっているようです。仮に都市を整備するために開発をしようとしても、その前に立ちふさがるのは、歴史の上に歴史が積み重なるという特殊な条件なのです。

何といっても、千年にわたって、都でありつづけていたのですから、歴史の上に歴史を積み上げる形で町が出来上がっているのですから、簡単に建設計画を進めるわけにはいかないのです。そんなわけですから、この古都をどうやって維持していくかということは、為政者はもちろんのこと、市民もさまざまに苦心してきていています。

古都が時代の変化についていくためとは言っても、これまでの町の雰囲気をぶち壊してしまうようなことを、受け入れるわけにもいきません。そうかといって、少しでも時代の要求に応えなくてはなりません。そんな状況から、旧状を少しでも維持するために、何をしなければならないかということを検討した結果、さまざまな規制を設けて、不用意な建設を控え、町の雰囲気に合わない店を排除するようになってきています。

その結果、結局上へも下へも、自由には伸びられなくなっているのです。

古都であったが故の悩みというものでしょう。

どこを掘っても史跡が現われてきてしまうために、容易に開発などということが出来ないし、それでは上に伸びればいいかと言うと、それも景観を損ねるという問題があって許されないのです。

京都というところは、さまざまな困難と戦いながら、一歩一歩、古都としての風格を維持していこうとしています。その一つが、古都の風格に相応しくない、けばけばしい広告を排除しようという動きです。確かに繁華街などでは、とても京都のイメージとは合わない、今風のどぎつい広告や、けばけばしい色彩の建物が目立ちます。少しづつでもそうした点からも変えていかなくてはならないでしょう。最近は京都駅などの広告も、徒に会社名を大きく表記するようなことは避けて、少しでもアートに近いものにしようと、努力し始めています。暮らしの便利さと、歴史的な財産を守るということで、京都はこれからも苦闘していかなくてはならないでしょう☆