知る世界 「桂川日記」(24)「清浄歓喜団」

かつて「宇宙皇子」という小説を書いていた時のことです。とにかく気になることは、メモとして書き記しておきました。  あれからもう二十年近くたってしまいましたが、最近になって、必要があっていろいろと資料をひっくり返していたところ、メモの片隅に書かれてあった、ある走り書きが目に留まったのです。 (清浄歓喜団)というものです。

どこか抹香臭い感じはするのですが、決して宗教団体の名称などではありません。

メモに書いてあったことは、遣唐使が中国から持ち帰った菓子だということだったのです。それを京都の亀谷清永という店で売っているということでした。

そこで毎月京都へ出かけていることを利用して、店を探してみることにしたのですが、実に簡単に探し出してしまいました。しかし本当はそう簡単なことではなかったのです。実はお店がアクセス用に紹介している地図を頼りにして出かけたのですが、これでは迷うばかりで、祇園の中を大分グルグルと回ってしまいました。むしろ八坂神社前と書いてくれた方が、探しやすいということを申し上げておきます。

お菓子の説明によりますと、奈良時代の遣唐使が、経典と共に持ち帰って来たもので、天台宗、真言宗などの密教のお供えものとして使われたもので、当時は市民が口にするなどということは絶対に出来ない、貴重な菓子だったといいます。

七種の香を入れて包み、そのほのかな神秘的な香りは、仏教の言う「清め」の意味にもなるものですが、その八つの結びは八葉の蓮華を表わすといいますすし、形は金袋になぞらえて作られているということですが、渡来した当時は粟、柿、杏などの木の実をかんぞう、あまづらなどの薬草で味付けをしたらしいということですが、小豆餡を使うようになったのは、江戸時代中期からだということです。

京都というところは、こうしてはるか奈良時代から伝わるものを、大事に伝えてきているところで、所謂伝統を大事にしていくことにこだわるところです。やはり、歴史を詰め重ねてきている土地柄だからでしょう。

わたしも京都との縁ができたところなので、更にあちこちを覗いていきたいと思っているところです。

そしてしばらく筆を置いてきた小説に関して、かねてから温めている作品・・・古代を背景にした話を発表しようと、その時をじっくりと窺がっているところです。

清浄歓喜団(箱)の写真
清浄歓喜団(菓子 その1)の写真
清浄歓喜団(菓子 その2)の写真