知る世界 「桂川日記」(40)「銀閣寺の神社」

銀閣寺は大変人気のある寺で、観光客でいつも賑わっているところですが、その中心となっているのが観音堂という建物でしょう。所謂、東山文化の代表と言われているもので、国宝東求堂と共に、この寺の中心的なものなのですが、この観音堂の脇に立っているのが八幡神社なのです。お寺にどうして神社なのだろうかと思います。

私は、この不可思議に気がついたのがきっかけで「幻視行 月の都、京都」(平安京をめぐる旅)淡交社刊を書くことになりました。

この神社の脇には、「銀閣寺の守護神です」と書かれた高札が掲げられているのです。一体、これはどういうことなのでしょう。

そんなことから調べ始めたのですが、この八幡神社の原点が石清水八幡宮だったのです。この神社には、皇室からの御下賜があるのを高札に提示されています。平安京の時代では、伊勢神宮に次いで第二位という高い位を持っていましたが、どういう訳かこの神社は、日本古来からの神々の系列とは、違った形で捉えられています。そこでもう一寸調べていきますと、実はこの神社の祭神が菩薩なのです。古代では仏も異国の神という捉え方をしていますから、八幡神として存在していたのでしょう。ところが明治時代になると、神仏分離令という命令が出されしまったために、その祭神が菩薩であり、祈る時の「南無八幡大菩薩」という神号も唱えることが禁じられてしまったのです。仏教を排撃する動きも激しくなりました。そこで全国の寺は慌てて寺としての様相を神社に置き換えざるを得なくなってしまったのです。とにかく明治の暴挙であったと思います。銀閣寺もこの八幡大菩薩を神社ということにして残すしかなかったのです。

その高札にわざわざ「銀閣寺の守護神です」ということが書かれているのは、ある意味での寺の抵抗姿勢であると思っています。

是非、銀閣寺へ行かれましたら、観音堂の脇に立っている八幡神社に関心を寄せて下さい☆

石清水八幡宮の写真
銀閣寺の全景の写真
銀閣寺の全景の写真