知る世界 「旅雑記」(22)「竜馬発進直前」

来年のNHK大河ドラマでは、坂本竜馬が取り上げられるそうですが、主役に福山雅治が起用されるというので、若い視聴者の間では、今から話題になっているようですね。

一般的にご当地と思われているところが高知ですが、つい最近当地を訪れる機会があった私は、意外な反応に出くわして驚きました。

高知の桂浜には、竜馬の巨大な銅像が建てられているし、その脇には竜馬と同じ目線で太平洋を見てみて下さいという配慮から櫓が建てられていました。

私は高所恐怖症なのですが、折角の機会なので、同行のM氏と共に登って行ったのですが、実はM氏も私を遥かに凌駕する高所恐怖症だったのです。

櫓が揺れる度に、冷や汗をたらしながら、やっと頂点に立って、銅像の竜馬の目線で、太平洋を見つめることができました。

実に感動的なことではあったのですが、この近くに隣接する坂本竜馬記念館へ行く道すがら、タクシーの運転手との雑談をするうちに、これまでとは、あまりにも違った情報が入ってくるのでびっくりしてしまったのです。もちろん冷静に受け止めてみれば、別におかしなことではなく、当然のことだとしか言いようがありません。

それは、「そろそろ大河ドラマのロケ撮影でもあるんでしょうか」とか、「いやいや、もうロケ撮影はやっているんじゃないか」などと雑談する我々の話を聞いていた運転手が、「ロケといいますが、どこで竜馬に関係ある話を撮るんですか」と、納得できないといった質問をしてくるんです。

私たちは二人とも、「変だな」とは思ったのですが、直ぐに「どうしてですか」と訊き返していたのです。

すると運転手は・・・、「竜馬は脱藩した男ですよ」というのだ。

そのとおりです。ただの郷士にすぎなかった彼は、藩の生き方に見切りをつけて、土佐藩から脱藩をしてしまうのです。今の高知では、あまり竜馬のことを話題にすることもないというのです。それもそのとおりです。竜馬が活躍するのは、脱藩した後からなのです。薩長の連合を画策したり、勝海舟に弟子入りしたりして、やがて海援隊を率いたりといった目覚ましい活躍をするのは、確かに脱藩囲碁なのです。

薩摩や長州は大いに関係あるかも知れませんが、どうも高地にはそうした活躍の場はないのです。当然のことですが、ロケをするとしたら、少年時代をやるしかないのではないでしょう。

日本で最初の新婚旅行と言われている竜馬とお竜との新婚旅行も九州の霧島です。

これでは、いいところはすべて高知以外のところということになってしまいます。

坂本竜馬と高知という印象は、いささか行きすぎであったということを、嫌というほど知らされたのでした。

来年あたりから、きっと高知は竜馬ファンが観光でやって来るに違いないともいう人が多いことも確かなのですが、果たして本当にそうなるのかどうか、いささか興味本位で見ていようと思っているところです。

大河ドラマがどう描かれていくのか判りませんが、興味のあるところではあります。原作が地元の宮尾登美子氏だというので、興味深々ですが、竜馬の実像を知った時、観光でやってきた人たちは、愕然とするのではないだろうか。

まぁ、美しい桂浜を散策するだけでも、満足することができるかも知れまあせんが、このあたりは時々高波が襲うので、あまり波打ち際へは近付かないようにと、盛んにアナウンスしています。

あれもこれも、いささか憧れの坂本竜馬とは違った話ばかりでした。

今回はそんな意外な旅雑記を書くことになりました。

夢は夢で、憧れは憧れでいいと思います。彼は間違いなく土佐藩の人であったことには違いないので、是非、機会がありましたら、彼の育った高知を知って、やがて脱藩してまでやろうとしていたことは、どんなことだったのかということなどを,考えてみるのもいいかも知れませんね☆

同じ目線の写真
竜馬と並ぶの写真
悲劇の部屋の写真