知る世界 「旅雑記」(27)「かちかち山」
あなたは「かちかち山」と言ったら、どんなことを思い出しますか。
多分、反射的に、お伽噺ということに思い当たるでしょう。 実は、その「かちかち山」へ行ってみませんかと言われたら、「馬鹿馬鹿しいことを言うなと、いささか不愉快になってしまうかもしれません。
ところがそんな誘いかけをしてきた人は、大変大真面目だったのです。
わたしは時々旅慣れた人から誘われて、思いがけないところへ出かけることになることがあるのです。
この日は「かちかち山」へ行ってみませんかという誘いでした。
はじめは行先を聞いて、半信半疑でしたが、そんな私に彼は、大真面目になって説明そして来たのです。
「太宰治が書いた、かちかち山ですよ。それに因んだところがあるんです」
それで私の疑問は、一気に疑問は解消しました。
たちまち興味が出てきたので、とにかく野次馬精神で、直ちにOKという返事をしたのでした。
Tが運転する乗用車で出かけましたが、先ず彼が案内してくれたのは、御坂峠の間道を抜けたところに立つ天下一茶屋という店でした。
河口湖に近い峠に立っている茶店でしたが、ここは昔から富士山を眺める絶景の地として知られているところで、太宰治の「冨嶽百景」の中でも、風呂屋の看板に出てくるような富士を見る絶景の場であると紹介されているところです。
ここには文人たちも、徳富蘇峰、井伏鱒二なども止宿して、原稿を書いたということで知られていますが、中でも太宰治がここへ泊って「かちかち山」を書いたと言われていることで知られているところでした。そこへは、友人であった井伏鱒二が遊びに着たりもしていたようでした。
Tは私に、気分転換をさせようと、こんなところを選んで誘いに来てくれたのでしよう。
ここで休息をしたところで、早速、「かちかち山」を目指したのでした。
河口湖を眼下に見るところに、「かちかち山」はありました。 残念ながら、そこにあったのは、まったく大人の雰囲気の展望台というよりも、どちらかというと所謂お伽噺の雰囲気にしてあったのでした。
もちろん太宰治の「かちかち山」は、お伽噺からヒントを得た寓話といったものでしたから、止むを得ないことなのかもしれません。
それにしても著作物から、こんなところが誕生するのは、羨ましいものですね。
私はこのTのお陰で、結構、手近なところにある珍しいところへ案内して貰っているのです。
またそのうち、ホームページで紹介できるのではないかと思います☆