知る世界 「旅雑記」(29)「荒涼とした世界」

「宇宙皇子」という大河小説の大詰めの作品を書くために、東北を取材しようということにしたわたしは、編集担当を伴って出かけたのですが、その時にせっかくだから下北半島にある恐山へ行ってみようということになりました。

しかしそこへ一歩足を踏み入れた時、気分は一変してしまいました。

これまで取材に行ったどの土地とも違う、あまりにも荒涼とした世界が広がっていて、とても普通の精神状態ではいられない光景が広がっていたのです。

しかもそこには、地獄の世界にあるといわれている、子供が石を積んで作る塔があちこちにあって、その家族が備えたと思われる風車や、人形などが置かれていて、見るからに哀しみが伝わってくるのです。それが、歩くうちにいくつ見かけることになったか・・・。

あたりに心安らぐところといったところは、まったく見当たりません。

ただ荒涼とした世界が広がっているのです。 やがて進んでいった先には、海が広がっていましたが、現代っ子の編集子も、さすがにそこにいることが出来なくなってしまったようでした。

何か、心の底から寂しくなっていくのです。

わたしも同じ思いでした。

寺の境内では「いたこ」が霊を呼び出して、熱心な参拝者の要求に応えていたのが、印象的でした。

どこへ取材に行っても、もう一度行ってみようというところが、何か所もあるのですが、流石にここだけは、よほどのことがない限り、もう二度とやってはこないのではないかと思いました。まさに寂しい、寂しい、霊の世界だったのでした☆

恐山の写真 その1
恐山の写真 その2
恐山の写真 その3
恐山の写真 その4