楽しむ世界 Faile(40)「ひとくち古代史考」(風隠し)

古代の歴史を読んでいると、いろいろと現代では聞きなれない言葉が出てきます。昔々は使われていた言葉が、やがてまったく使われなくなったという場合は、それを死語といいます。今回の話はその死語に匹敵する言葉についてです。しかしその中には、表現が実に詩的でいい言葉と言えるようなものが多いのです。

例えば「隠び流し」というものがあります。現代的に表現すると、左遷と言うことですが、事情はどうあれ、現在の持ち場から外されて、まったく関係のないところ、権力の及ばないところへ送られてしまう場合に使われる言葉なのですが、表現としては古代の言い方のほうが、外される人に対しての気遣いが感じられて好きなんです 。

京都から九州の太宰府へ左遷された菅原道真にしても、配流されたといいますが、こういう場合を隠(しの)び流しと表現していたのです。そうした生臭いこととは関係がないのですが、今回取り上げたいのは、「風隠し」という表現なのです。これは穏やかに落ち着いている、いい環境の港というところの表現なのです。強風に絶えず晒されているようなところとは違って、穏やかな港は、人の暮らしも穏やかに、落ち着いているのではないかと思わせる言葉ではないでしょうか。

あまりにもぴりぴりとしている現代です。若い人は勿論のこと、年配者にとっても、こんな穏やかで落ち着いていられるところがあったらいいですね。正に時代の荒れ狂う風を避けることのできる、別天地なのですから・・・。

兎に角古代に使われていた言葉の中には、殺伐とした現代の言葉にはない優しさがあふれた表現があるような気がいたします☆