楽しむ世界 Faile(47)「ひとくち古代史」(白鳥)

白鳥といえば、幼いころから、童話の世界で、美しい存在として捉えられて、物語になっていますが、やはりそれだけ目立つ存在であったのでしょうね。芸術の世界でも、白鳥と言えば、すぐにバレーの「白鳥の湖」を思い出してしまうほどよく知られ、親しまれてきています。それだけ古代からそれは、人びとに大変大きな存在感を持っていたのだということもいえます。

皇居の堀にもいますし、清浄な場に相応しい存在ですね。

多分、その美しい姿から考えられたのでしょうが、それは冥界と現世をつなぐ存在だという認識だったようです。誰もが知っていると思うのですが、古代の英雄であるヤマトタケル命が、山へ分け入った時に、魔除けのヒレを身につけていなかったのが原因で妖魔に襲われて命を失ってしまうという話が伝えられていますが、その時亡くなったヤマトタケル命は、白鳥になって飛び去ったといわれています。

つまり彼の魂は白鳥となって冥界へ飛び去ったということなのですが、つい最近の新聞報道によりますと、そうした古代の認識を実証するようなことが伝えられています。

奈良時代に編集された常陸国風土記の中にも、鹿島郡白鳥郷のところに、白鳥が舞い降りて、昼間は少女となって堤を築き、夜は白鳥となって天に帰るという伝説が出ているのだそうですが、千葉県の佐倉市にある高岡新山遺跡から出て来た八世紀の後半の骨壷から、人骨と一緒にハクチョウの翼の骨が入っていたという新聞の報道がありました。これは冥界と現世をつなぐ存在として、白鳥を捉えている話だと思うのです。通常ハクチョウの骨と人骨が一緒に入っているということは、とても珍しい記録ですが、当時、ハクチョウが冥界と現世をつなぐ存在であると捉えられていた証しのようなものです。そのころの人びとにとっては、やはり清浄な姿として捉えられていたのですね。しかし魂が美しい白鳥となって天獄へ向かうなどということは、何とも幻想的でロマンチィックで、いいではありませんか☆