読む世界 Faile 14 「新たな著作権問題」

昨年末のことでした。わたくしの周辺には、思いがけない問題が持ち上がってきました。さまざまな世界で、「著作権」というものが問題になっていますから、あまりかかわりのない方も、関心のない方も、ちょっとは見たり、聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。

大雑把に言いますと、著作権というと、代表的なものは、小説などの文芸作品、DVD、ビデオ映像作品、CDなどの音楽作品などですが、今回お話したいのは、それらのものとは関係のないジャンルのもので、わたしに関係があることなので、お知らせしておくことにしたわけです。もちろん、映像に関するものではありませんし、小説に関するものでもないのです。どちらかというと、若年層と関係がありそうなことなので、すでに若い親になられた方々もちろんのこと、大いに関係のある教育機器の著作権問題なのです。

わたくしに関して申し上げると、著作物があちこちの進学塾、予備校で、教材として使われていることが判明したのです。

これまでわたしは「日本ペンクラブ」「日本文芸作家協会」「日本放送作家協会」「日本脚本家連盟」という組織の会員として活動してきたのですが、当然のこととして、著作物に関しては、それらの機関に著作物の使用の監視と印税の徴収の権利を許諾しているのですが、今回、新たに教育機器に関する著作権の監視組織が誕生したのです。JVCA・・・日本ビジュアル著作権協会という組織です。

ここが真っ先に問題にし始めたのは、昨今マスコミを騒がせ始めた、予備校、進学塾において、作家の著作物がかなり無断で使用されているということなのですが、調査によると、それはかなり前からのようで、著作物を無駄に使用して、教科書をつくり、教育に利用しているのに、著作者にはまったく印税を支払わないというケースがあまり多くて、作家たちからも問題が提起され始めたのです。ついにそのへんの問題をはっきりとして、支払うべきものはきちんと徴収しようということになったようでした。すでに五百人もの著作関係者が、その組織に権利を託することになったということです。

みなさまのお子様に関係があるかも知れませんが、目下、「日能研」「四谷大塚」「SAPIX」という大手がやり玉に挙がっていますが、わたしのエッセイである「君が輝いて見えるとき」「落葉帰根」などは、教科書の副読本になったり、いくつもの進学塾、予備校で教材となって、使われていることが判明したのです。しかもそれはかなり前からのようなのですが、わたしが把握していたのは、その中のごく一部だったということがはっきりとしてきました。

ごく最近のことですが、慌てて印税を「日本文芸作家協会」へ振り込んできた大手の進学塾がありますが、なぜだと思っていたら、こんなことが問題視されてきていた結果であったわけです 。

いささかびっくりしてしまいました。

JVCAからの通告で、無視できなくなったわたくしは、活字に関して「日本文芸作家協会」だけでなく、新たにこの協会に、権利の監視を許諾することにしたところなのですが、これも結局 、少子化が進み、進学校が偏ることから起こる、進学塾、予備校の熾烈な児童確保競争という問題となって、降りかかってきたことからおこってきたことなのでしょう。

これまで特に興味を持って監視して来たわけではなかったのですが、俄かにないがしろには出来ない問題として浮上してきました。

まだまだ大変地味な問題で、一般的には知られていないことですが、これからはとても無視できないことになるのではないでしょうか。

今回、あなたにも間接的に関係が生まれるであろう問題なので、急遽、お話をすることにしたわけです。お時間のある時にでも、ちょっと身近な人で塾などへ通っていらっしゃる方がおられるようでしたら、教材を覗いてみるのもよいのではないでしょうか。そこには、かなり多くの著作者がかかわっているはずなのでで・・・☆

「小学六年国語」の表紙写真
「秀英予備校六年国語」の表紙写真