読む世界 Faile(26)「暗殺考」

暗殺などということは、すでに現代では死語といってもいいのではないかと思っていたのですが、わりに最近の事件としては、チェチェン戦争の真相を追っていた女性記者アンナ・ボリトコフスカヤが暗殺されたり、プーチン政権とチェチェン問題を批判したFSBの元大佐であったアレクサンドル・リトビネンコが、ロシヤ政府の者によって暗殺されたという話が、必死で否定する政権の声を押しのけるようにして広がっています。トロッキーの暗殺事件以来、暗殺事件については枚挙のいとまがないロシヤですが、改めて政権にまつわる陰部が、クローズアップされたような気がします。

それでは、わが国ではどうだったのであろうかと調べてみると、これがまた、暗殺に次ぐ暗殺で、血なまぐさい事件がつづいてきているのです。

たまたま調べものがあって歴史書を読んでいるうちに、ふと気が ついたのですが、何と暗殺と言われる陰湿な事件が多いことか・・・。そしてそれだけ有能な人が、考えの違いから、抹殺されてしまった人の、何と多いことか・・・ということに突き当たってしまいました。 とにかく愕然としてしまいます。

それだけ権力闘争というものが、激しいものなのだということを、知らされるのです。

冒頭で書いたように、現代でも、権力者にとって都合の悪い者は、如何なる正論も封殺してしまうために暗殺が行われているようです 。大変曖昧な書き方をしたのは、決定的に暗殺であると言い切れる証拠がないからです。

暗殺はいつの時代においても、闇から闇へと葬られて行ってしまう者のようですね。

取り敢えず古代からそれらしい事件を探ってみますと、天皇という地位を巡って、かなり激しく、血なまぐさい事件がいくつも記録されています。暗殺によって皇位を得たと言われる天皇。本来は初代天皇だとも言われている天皇は、の予知能力のお陰で、暗殺から逃れたと言われています。そしていささかショッキングではありますが、古代の英雄であるは、暗殺者ではなかったかというショッキングな話も囁かれてもいたりするのです。

時代をへるに従って、暗殺の危機から逃れられなかった者、運よく逃れた者などが次々と現るではありませんか。いずれにしても、政権を維持するために、政権を覆すために、政権を新たにするために、その目的は違ったとしても、権力をめぐるうず潮に入り込んでしまうと、いつ暗殺という事件に見舞われるかも知れないという、不気味な影と戦わなくてはならなくなってしまうのでした。

崇峻天皇、蘇我入鹿、有馬皇子、井上皇后、藤原種継、親王、菅原道真、源頼家、源実朝、吉良上野介、井伊直弼、吉田東洋、清河八郎、芹沢鴨、野口健司、考明天皇、坂本竜馬、中岡慎太郎、伊東甲子太郎と枚挙にいとまがありません。

権力にかかわると、否応なく暗殺の危機に晒されてしまうのでした。しかしそうした政権が不安定な時代が去ったとしても、権力に近いところにいる者は、時代の古い、新しいに関係なく、暗殺の危機を覚悟しなくてはならないのかもしれません。

近代・・・江戸末期の開国か鎖国かでもめていた頃などは、狙われる者ではなく、暗殺者・・・所謂刺客と言われる者が、何人もクローズアップされたこともあるのです。もちろん、きっとそうだという推測にすぎないのですが、彼らが素知らぬ風をして大手を振って動き回っていたので、多くの者が恐れおののいていました。

人斬り以蔵、田中新兵衛、河上彦斎などがいますし、こうした刺客たちを擁護していた、暗殺の黒幕として三浦休太郎などというものまで入れたら大変な数になってしまいます。

現代はもっと巧妙に抹殺することが考えられているかもしれませんし、すでに行われているかもしれません。それだけに、政治は命をかけなくては出来ないもののようですね。

果たしてそんな覚悟をして国政に立ち向かっている方が、どれだけいらっしゃるのでしょうか☆