読む世界 Faile(33)「我が子の行方」

これまで出版した本はかなりあります。

それらの本は、まるで自分が生み出した子供のような気がしてくるものです。それを世の中へ送り出した時から、運よく世間の人に認められて、可愛がって貰えるのだろうかというような、まるで人の親になったような心配が付きまといます。

通常は売れたか、売れなかったかは、出版社からの通知で判るのですが、出版されてから暫く時を経ている作品などは、その後どのような運命を辿っているかほとんど判りません。

ところがその後の我が子の状態が、思いがけないことで判ることがあります。

つい最近のことですが、国立国語研究所から連絡があって、拙作の短編集「霧の伝説」(講談社)の中の、「スカーフ」という小説の一部が、現代の書き言葉のとして、データーが収録されることになりました。もう大分前に書いた作品ですから、どのようにして探されたのか判りませんが、かなり沢山の学者が参加して国語に関してのデーターを集めているようですので、幸運にもその目に留まったのでしょう。

実はこのデーター収拾の対象になったものは、今回の作品だけではなく、すでに他にも数冊あるのです。

こうしてこれからの人のための、参考になるようなものに採用されるのは嬉しいことです。

この数年来、私の書いた小説から、辞書の中に引用されたりすることもいくつもあり、「道徳」の教科書の副読本として、「落葉帰根」というエッセイが採用されたりしていますが、こういう形で、我が子の行く末が確認できるということは、大変嬉しいことです。

これからも、一生懸命書いていこうと思います。

新たな命を送り出すために☆