読む世界 Faile(42)「月の都、京都」

救いのないような昨年のニュースの中で、ただ一つ感動的であったものの一つであったものと言えば、月の探査衛星である「かぐや」が送ってきた、地球の映像の素晴らしさだったのではないだろうか・・・。これまでは、ほとんどの場合、地球から月を眺めるということばかりでしたから、逆に月〜地球を眺めることが出来たことは、から見た地球の姿には驚きと共に、その美しさに驚嘆してしまいました。

月の姿がリアルに捉えられたり、地球が美しく捉えられたりしたことは、大変素晴らしいことだとは思えたのですが、こういうことが判らなかった時代に夢見た夢の世界は消えていってしまったように思えて残念でなりません。

現代は何もかもその真相をはっきりとさせてしまうという風潮なのですが、敢えてその真の姿を露わにしない方が、想像力を育てるためにもいいのではないかと思うのですが、月を眺める、そんな夢見る時代のことを書いたのが、「幻視行 月の都、京都」(平安京をめぐる旅)ですが、お陰さまで大変好評で、よく買って頂いているようです。

しかし昨今の出版界が、如何に疲弊しているかを象徴するようなことに出くわしました。つまり「書評」と言うものです。昔はその執筆者が目に付いたいい本を紹介するということが趣旨でしたが、昨今はその新聞社に、広告を出していない出版社の著書に関しては、書評は出さないという状況なのだそうで、仮にどういい本であっても、その新聞社に広告料という利益がない限りそれを取り上げるという事はないようです。こうなると、後は何とかして、どんな内容でも話題づくりをして売り上げを上げないと、絶対に書評で取り上げることはあり得ないということになってしまいます。いい悪いは別問題と言うことのようですね。

いい本なのに、埋もれていく本もかなりあるのだろうなと思ったところですが、こういったことが更に出版界を危うくしてしまっているということを、もう一度考え直して頂きたいものです。

いささか引っかかるものがありましたので、書くことにしたわけです。何かが狂っていますね☆

満月の写真