読む世界 Faile(43)「日展にて」

あっという間に秋も深まり、冬の到来となりました。地球の温暖化ということもあって、季節にもメリハリがない状態にあって、いつの間にか秋がやってきて、いつの間にか冬がやって来るといった状態ですが、今回は微風に枯れ葉舞う六本木へ、足を運びました。

秋の藝術文化のシ−ズンにあたって、毎年のことなのですが、親しい日展の審査員である書家からご招待を頂いて、新国立博物館へ行くことにいているのですが、広い会場をすべて観ることは不可能なので、どうしてもポイントを決めて歩くことになります。その中でもご招待を頂いた「書」の世界をじっくりと力作を見ることになります。

これはご招待者にもお知らせしたのですが、その年その年で流行りがあって、あまり感心しない傾向があったことがあるのですが、去年今年はようやくある流行りで書くというよりは、本来の書の世界に戻ったような落ち着きを感じるようになりました。

やはり書の世界には、凛とした風格という者があって、あまり絵画的・・・悪く言えばデザイン文字の傾向に走ることは感心しません。

私のような旧世代の者は、活字の世界で生きてきましたから、どうしても「書」の世界とは縁が切れません。どの展示場を見ても、その中にいること自体に落ち着きを感じるのです。これは本に囲まれた書斎や書庫にいると落ち着くのとおなじで、正に活字の世界で生きて来た人間の特徴なのかなと、つくづく感じたところでした。

さまざまな書体で描かれた書が、参観者を取り囲んで、まるで包み込むように感じられるのでした。

激しく動いていく都会の中にあって、この世界の落ち着きは、不思議な空間といっていいでしょう。

勿論、日本画、洋画、彫刻、美術工芸品などの展示も観て廻るのですが、そこでの感想も、時代の変化につれて変わって行く様子が感じられて、大変参考になうものですが、また、それについてはお話する機会もあるでしょう。

兎に角今回は、幾多の「書」に囲まれていることの安堵感を感じたので、このような原稿を書くことにいたしました。

時間のある時には、是非、こうした日常とは違った空間に身を置いて楽しんで観られることもいいのではないでしょうか。

また、新しい発見があるかも知れませんよ☆