読む世界 Faile(44)「伝説を楽しむ」

これまで、大変多くの土地へ取材に出向きました。そこで関係者に話を聞いたりもしました。そこの代表者にも会いましたし 、まったくそういった責任のある人だけではなく、その土地に長く生活する住民にも話を聞きました。しかし伝説と言われる話について取材する時は、どうもその場の権力者とか、責任者と言われる人々に取材すると、どうもきまりきった話しか聞くことが出来ません。むしろそこに長く住みついている、名もなき人々に取材することのほうが、如何に必要であるかを実感したことがありました。つまり伝説が今も語り継がれてきているということは、それだけ庶民の夢、憧れ、称賛という気持ちがなければ、あり得ないことです。

権力者によって作られ、残されてきた記録も大事ではあるのですが、こうした伝説という庶民の支持によって支えられ、残されてきた伝説も、絶対にないがしろには出来ないのではないかと思うのです。その一つが、法隆寺の釈迦三尊を作ったとも言われているにまつわる伝説です。

どうもこの人はシルクロードを辿ってやって来たのではないかと思われるのですが、トルコ人ではなかったかとも言われている人物です。飛騨の白川郷から飛騨高山へ向かうの村に流れる月ヶ瀬川という小川の橋の上での、とという女性との出会いの伝説です。

美しさに欠ける信夫は、祭りの夜だというのに、誘ってくれる人もなくて、小川に架かった橋の上から、川に映った月を眺めて泣いていたのですが、そこへ現れたのが、あたりでは見かけない異様な姿の若者でした。それが鞍作鳥でした。

二人はそこで恋を実らせたというのですが、この小さな村にある寺には、その信夫の墓も作られていました。

取材に訪ねた時は夏でしたが、応接に現れた裸の住職は、総刺青でびっくりしてしまった思い出があります。きっとあの方も今頃はかなりの高齢になっていらっしゃるか、亡くなっていらっしゃるかも知れません。

こうした伝説的なところへ、ふたたび巡る旅をしてみたいと思う昨日今日です☆