■ Deep Ellum Live, Dallas, TX - 11/ 6/97
with The Cramps + Demolition Doll Rods
「ロックン・ローーーーー!!!!!」......こう叫びっぱなしのギター兼ボーカルのSeiji。汗を飛び散らし、よだれたらしまくりで暴れまわる。そんな姿を私はあんぐり口をあけて見ているしかなかった。
さて、この日のライヴのトリはThe Crampsであった。しかし私、このバンドのことはほとんど知らない。よって私にとっての今夜のメインは何といってもアメリカに来て始めて見る日本人のバンド、Guitar Wolf、そして今年のLollapaloozaで私に圧倒的な印象を残して去っていった、Demolition Doll Rodsである。
会場に9時過ぎに到着すると、もうすでにお目当てのDemolition Doll Rodsのステージは始まっていた。しかしながら、こんなに閑散としているDeep Ellum Liveでのライヴは初めて見たよ。フロアは約4分の1の入りである。それに乗じてするするっと最前付近にまで忍び寄る私。
Demolition Doll Rodsのメンバー3人はいつものようにハダカ。しかし私は彼らのちょっとした変化を見逃さなかった。まず乳首に付いていた段ボールが、小さな人形に変わっていたこと。そしてパンツの切れ込みが前よりも緩やかになっていたこと。ちょっと露出が少なくなってしまったようで若干寂しい(笑)。そして一番の違い、それはギターのクリスティーンがきれいになったこと。前見た時にはなんか表情が厳しくて、やさぐれ姉ちゃんみたいなイメージを持ったのだけれど、今日の彼女は違う。目が澄んでいて、化粧ののりもいい。
そんな彼女をうっとり眺めていることしばし、ギター・ボーカルのダニーが、ギターソロで目の前数十センチに迫ってきた。圧倒されてしまってちょっと引いてしまった私。この人無茶苦茶ソロを弾きまくるが、あんまり上手じゃない。でも愛すべきキャラクターの持ち主だ。ギターで自分のお尻をぺんぺん叩いたり、頭の上でギターを弾いてみたり、客を引かせる天賦の才能の持ち主だ。
演奏の方はドラムのマーガレットのドンドンという単調なビートに乗せて、シンプルなコードを弾きまくって、ギャーギャー叫びまくる相変わらずのステージ。でも好きなんだこれが。体の中で、だんだん高揚して来るのが分かるのだ。客の方も最初の方は呆気に取られていたようだが、だんだん歓声が大きくなってきた。やっとみんな彼らの素晴らしさに気が付いてくれたか。よしよし。
最後はクリスティーンがマーガレットとドラムをボカボカ叩きまくりながら、ギターをフィードバックさせて圧倒的なステージは約30分で終了(ちなみに前のPAのところにDemolition Doll Rodsの演奏は30分と書いてあったのだ)。決して日本で彼らのコンサートに5000円とかは払う気にはなれないけれど(なんだそりゃ)、もう素晴らしいの一言に尽きる。ここまで恥ずかしいカッコをして、ポップという言葉とは縁遠いステージをしておきながら、あの彼らの堂々とした佇まい。これって本当に尊敬に値する。間違いなく彼らは今、世界で一番ロックしている。しかしそんなにロックしている彼らだが、ステージセットの後片づけは自分達でやっていた。
Demolition Doll Rodsのステージに釘付けになっていて、全く客の様子に気が付かなかった私だが、辺りが明るくなって改めて辺りを見回して見ると、黒ずくめの衣装の人の多いこと、多いこと。モヒカン頭の少年少女の姿も多い。Crampsってパンクバンドなのかなあ、なんて思いながら次のGuitar Wolfの出番を待った。
このセットチェンジが驚いた。Guitar WolfのドラマーのToru自らが簡単にドラムセットを組み立てておしまい。すると続いてベースのBillyがベースを持って出てきた。ネックのところにはこの日のセットリストが書かれた紙がはっつけてある。彼らがこれから演奏するGuitar Wolfのメンバーだとは誰も気が付かない。おもむろにベースのシールドをアンプに差し込むBilly。日本語で書かれてあるセットリストをシンバルの下に貼り付けるToru。するとまだ会場は明るいのにベンベンとベース音が聞こえ始めたのだ。それに合わせてドラムがビートを刻み始める。そして間髪入れずギター・ボーカルのSeijiの登場。やっと客電が落ちる。まるで会場のスタッフとろくな打ち合わせもしていない感じであった。
「はろー、えぶばでえ」とまず叫んだSeiji。演奏がここで始まるのかと思いきや、おもむろに妙なSEが流れ始める。Seijiはここでバドワイザーを一気飲みした。日本人の一気飲みはアメリカ人の間でも有名である。でもSeijiは結構かかったな、全部飲み終えるのに。
「かもん、ろっくん・ろーーーる!」という叫び声を合図に演奏に突入したGuitar Wolf。
いきなりモッシュである。何を言っているのかさっぱり分からないが、とにかく叫びまくるボーカルのSeiji。よくみると黒の皮パンツにもギターのストラップにも「Rock 'n' Roll」の文字が書いてある。1曲めから飛ばしまくり、弾けまくりのSeijiとBillyであった。
途中Satisfactionのカバーもやってくれた。ボーカルはベースのBillyだ。つい5日前にストーンズのライヴを見たばっかりなので、この曲は妙に感慨深い。しかし速い速い。高速Satisfactionだ。
ライヴも半ばになると、客の方も妙に落ち着いてしまって、ボーっとステージを眺めている感じ。それもそのはず、Seijiのステージングはすさまじすぎる。ことあるごとに「ろっくん・ろーーーーーーる!」と叫ぶのだ。ギターの弦が切れようが何しようが、まったくお構いなし。多分予備のギターなんて持ってきてないんじゃあないだろうか。
途中で最前列にいた女性を無理矢理ステージ上に引っ張りあげて、自分のギターを彼女に持たせた。無茶苦茶なカッティングをその女性にさせて、Seijiは汗を飛び散らし、歌いまくり、叫びまくる。その女性に耳元でなにか言っているようだが、果たして通じているのかどうかも分からない。「Jump!」といってジャンプを強要するSeiji。
とにかく彼らの45分のステージは終わった。なにが起こったのか、どんな曲をやったのかまったく分からないような、すさまじい演奏。Seijiは楽屋に戻る途中でぶっ倒れてしまった。まったくもってこいつらとんでもない奴等だ。終わった後も客から「あのJapaneseすごすぎるぜおい!」って声があちこちから聞こえた。すさまじい記憶をダラスのパンクファン達に残して、Guitar Wolfは去っていった。
さて、私はここでもう帰ってしまおうかと思っていた。しかしながら近くにいたアメリカ人達と会話が弾んでしまい、彼らがCrampsファンだということから、非常にこの場を去りがたく、結局メインのCrampsも観ることになってしまった。
しかし驚いた。このCramps、Guitar Wolfに輪をかけたようにとんでもない奴等である。その中でもボーカルがとてつもない存在感だ。ヒョウのような衣装を着て、爬虫類のような動きを見せる。マイクをボコボコ頭にぶつけ、ステージ脇のスピーカーによじ登って、叫ぶ叫ぶ。俺この人最初に見て誰かに似てるなあ、ってずっと思っていたのだけれど、コンサートの最後の方になってやっと分かった。それは「ダイ・ハード」にドイツ人組織のかしら役で出ていた俳優である。
てっきり曲調はパンクっぽいものだと思っていたのだけれど、どっちかというとブルース寄りで、ギターの女性がなかなかいい味を出していた。アンコールでやっとパンクっぽい曲が出てきて、オーディエンスの方もモッシュ、ダイヴで大盛り上がりになる。積極的にレコードを買ってみようとは思わないけれども、なかなかパワフルな連中であった。
それにしてもGuitar Wolfのセットリストが書いてあった紙をもらえなかったのは悔しかった。「Give it to me!!!!」って叫んだのにくれなかったぞ、あのスタッフのおっさんは。でもその紙を運良く受け取ったアメリカ人、全部日本語で書いてあったのに、一体それをどうするつもりなんだろう。今ごろアジア風の壁掛けと称して、部屋のデコレーションの一部にでもなっているのだろうか。
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Send comments to: Katsuhiro Ishizaki Last updated: 11/ 7/ 97
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