[ 第4話 ] |
耳障りな警告音が鳴り響く。 「状況報告!」 振動する船内で機長が結構冷静な声で言う。
「3番、パージ」 機長の指示に続く機関士の声と共にシャトル最後尾のノズルがひとつ切り離され、 それと同時に船体の振動がおさまる。 「他は?」
「ん、ひとまずだな。」 そう言って警報を切る。
今となっては燃料の確保が難しく、ターポンに到達する有人シャトルは7年ぶりになる。 このミッションでは、地上から6人の人員とターポンの補修素材を届け、 現在の乗員の中から24人を地上に降ろすことになっている。
ニックは顔中で”渋々”の意思表示をしながらも、自分の席に戻る。 「ふぅ。」 聞こえないように小さな溜息をついてアルファーもシートベルトを着ける。 そして、教授に『シャトルの中ではリラックスしているように。』と言われていたことを思い出して、 「データに影響が出てなきゃいいけど。」 と、つぶやく。 アルファーは今、A7の地上以外での活動サンプルとしてここにいる。
機長からの、ターポンにアプローチを開始するという放送を聞いていた。 そして数分後。 シャトル・コクピット。 「軸線合わせ良し。」
ターポン側の管制官がシーケンスの最終段階に入ることを促す。 「了解。フェーズ3へ移行します。」 ドッキングの操船は実際は自動操縦で行うので、フェーズを進めるキーが押される。
そして、あと数mという時。 ゴッ 何かが激突するような衝撃があり、船体が揺れる。 異常事態に操縦装置が自動的にターポンと離れる機動をとる。 少し遅れて警告音が鳴り始める。 「状況報告!」
コクピットの中では、さらに詳細な状況の確認が行われている。
ただの旅行ではないこのミッションの乗客に不平を言う者はなく、 みな乗船前のレクチャーで教わったように気密服を着る。 そして、機長からの状況説明を静かに待つのだが、
小1時間もしてブリーフィングが始まる。
観測システムが稼動していないこの時代では、運が悪いと接触することがある。 「これにより動力装置の一部が使用不能になり、船体の一部に亀裂が発見されています。」 ここで初めて乗客がざわつくが、機長はかまわず続ける。
「ターポンに行って、燃料をわけてもらうというのは?」 乗客の一人が問う。 「残念ながらターポンは本船とは異なる駆動システムのため、利用可能な推進剤の備蓄がありません。」 「さっき、亀裂があるって言ったが、大気圏突入の際には問題はないのかい?」 今度は別の乗客。
これはアルファー。後半は食糧問題のことを言っている。
専門外のことに言葉に詰まる機長に代って、乗客の学者が答える。
ニックが皮肉っぽく言う。
機長がこんな事を言うなんて珍しい。 このシャトルの乗客は、ターポンの搭乗要員3名,ターポンで研究を行う予定の学者2名と、 活動サンプルを採っているアルファーである。 しかしアルファーには、もうひとつ理由があった。
学者たちは研究の有用性とターポンでしか実施できないことを、いい年なのに熱く語った。 そして、アルファーの番がまわってくる。
彼女の使命を言う。でもそれだけではない。
ニックが先頭を切って拍手をする。 思いもよらなかった拍手にアルファーが急に頬を赤く染めて両手をあてる。 少し笑いながら機長がまとめに入る。
スチュワーデスのような言葉で締めて、みんなの緊張をほぐしながらコクピットに戻って行く。 アルファーも笑いながら席に戻る。 そして、ふと、ウェストポーチを見て、微笑んで言うのだ。 「このデータって参考になるのかしら?」 |
−あとがき− 生まれてそんなにたっていないのでアルファーさんの口調や仕草が若いですね。(笑) それと、脳波計測用のプローブがカチューシャに見えて、かわいいです。(笑2) ちなみにニックってのは将来の”次長さん”です。 また、このミッションでは家族持ちは参加できなかったので、簡単に再ランデブーが決まったようです。 最後に、これを書いていたら、もう一度シャトルを飛ばしてやりたくなりました。どうしましょ。 |
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